一味&くまvsトットムジカ

一味&くまvsトットムジカ




※こちらのSSを参考に書いています。

スリラーバーク編、トットムジカ顕現



『ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ』

 

「なに、これ…」

 

ナミは思わずつぶやきながらその巨体を見上げる。まるでピエロのような顔をした、鍵盤の腕を持ち下半身は無い巨大な化け物。突然ウタが初めて聞く歌を歌った瞬間にこいつが現れウタを飲み込んだ。先ほど自分をそのピエロが攻撃してきたが、それは敵対していたはずの七武海バーソロミュー・くまによって止められていた。

 

「待ったなしか…お前達、手を貸せ…コイツを抑える」

「言われなくても…!…だがお前…さっきからコイツについてなんか知ってるみてェな口ぶりじゃねェか…知ってんなら話せよ…!!」

「質問には答えない。それにそんな余裕はすぐになくなる…」

 

くまとゾロの会話が耳に入った時だった。

そのピエロの目が赤く光ったかと思うとそれは光線となり、崩れていた城に着弾し大爆発が起き、瓦礫を消し飛ばした。「な、なんだよあれぇ!?」とウソップが叫ぶ。

 

『枯れ果テず湧く願イト涙——』

 

その間にも不気味な歌がウタの声でピエロから響き続ける。

 

「ナミさん、ウタさんは普段あのような歌い方はしない。そう思いますが合っています?」

「え、ええ…そうだけど…」

 

ブルックの突然の問いに答える。それを聞きながらブルックは剣を抜きピエロへ近づいていく

 

「ならば…止めなければ!彼女が歌でこのようなことをすることを望むとは思えません!」

「…うん!」

 

ブルックの言葉に頷き、天候棒を構える。

オーズに続いて怪物相手、それでも仲間が囚われているのだ、逃げるわけにはいかない!

 

「おいクマ野郎!一つ教えろ!あのクソピエロを攻撃してウタちゃんは傷つかねえんだろうな!?」

「…あいつはウタウタの実の能力者と関わりはあるが別の存在だ。奴を攻撃したところであの女は傷つかん」

 

サンジ君の質問に答えるくま。信用できるかは怪しいが信じてあのピエロを全力で叩いて止めるしかない。皆にもその意図は伝わっていたのか、ゾロとサンジ、ブルックがすぐにピエロへと走っていく。

 

「とにかくアイツをぶちのめせばいいんだろう!?」

「クソ肉球野郎!嘘ついてやがったら三枚にオロすからな!?」

「私、まだウタさんの歌を聞けてませんからね!取り戻さなくては!」

 

ゾロが気迫で阿修羅へと姿を変える。

サンジがその場で足を軸に回転し、足が灼熱に染まると同時に飛ぶ。

ブルックがピエロの懐へ飛び込んでいく。

3人それぞれが最高火力をピエロへと向けていた。

 

「“鬼気 九刀流”…」

「“悪魔風脚(ディアブルジャンブ)”…」

「“鼻唄三丁”…」

 

今の一味の中でも高い火力が向けられているにも関わらず意に介さない様子のピエロ。

そこに3人の技が突き刺さった。

 

「“阿修羅 弌霧銀”!!」

「“画竜点睛(フランバージュ)ショット”!!」

「“矢筈斬り”!!」

 

巨大な爆発が起きたかと思うほどの轟音が響く。

並大抵の生き物ならこれで倒せている…はずだった。

 

「なに!?」

「うそ…無傷…!?」

 

ウソップが叫び、私も思わず言葉を漏らす。3人の攻撃全てが赤い壁に阻まれていた。「この模様は…フェルマータ!?」と呟くブルック、そしてゾロとサンジに向かってピエロの巨大な腕が振るわれるが3人はそれぞれその攻撃を避けた。

その瞬間、ピエロの背後にくまが現れた。何度も行っていた瞬間移動だ。

 

「“つっぱり圧力(パッド)砲”」

 

その呟きと同時にゾロにも放った技が放たれ、大量の肉球の衝撃波がピエロへと迫る。しかしその技も全て赤色の壁に阻まれ本体には直撃しない。「厄介な…」と呟いたくまは再び振るわれたピエロの剛腕を瞬間移動で避けた。

 

『無条件絶対激昂なラSinging the song!如何セん罵詈雑言デモSinging the song!!』

 

歌が流れる中、皆がピエロを止めるために攻撃を続ける。

「コーラさえあれば!」と言いながらフランキーが大岩を投げつける。

弾かれる。

ウソップが様々な弾を放つ。

弾かれる。

私が“サンダーボルト・テンポ”を食らわせる。

弾かれる。

重量強化したチョッパーがピエロを殴る。

弾かれる。

ロビンが“百花繚乱”により大量の手を咲かせようとする。

本体ではなく壁に生えたうえに弾かれ消える。

 

どんな攻撃も全てが通用しない。何もかもが弾かれる。

 

「なんなのよ…あの化け物…」

 

その光景に思わず呟いた。その最中でも、ウタの声で歌う、ウタとは思えない歌声が戦場に響き続けた。

 

『怒レッ!』

『集えッ!』

『謳えっ!!』

『破滅の譜ヲォォッ!!!』

 

 

 

―やめて―

—いやだ—

 

必死に言葉を紡ごうとするがそれも出来ない。ウタは今、真っ黒な空間で一人浮かんでいた。体はろくに言うことを聞かない、意識も朦朧として自分がどうなってるかも、外がどうなっているかもよく分からない。それでも口が勝手に動いて何かを歌っていることは分かる。

そして—

 

《辛い》《なんで俺は認めらない》《あいつが憎い》《お前のせいだ》《寂シイ》《お前がやった》《ふざけるな》《許せない》《置いて行かないで》《私を認めて》《誰か聞いて》

 

ずっと頭の中で色んな人の声が響き続けている。その言葉も決して聞いていたいものじゃない、言うならば負の感情の塊のような…

その時、見えない何かが巨大なもの…手のようなものが私を掴む感触があった。

 

『歌エ!』

 

こうなる直前にも聞こえた声が先ほどよりも大きく頭に響いた。

 

『歌エ!』

 

その手がまるで闇の中へ引きずり込むように私を引っぱっていく。

 

『歌エ!!』

 

違う、これは引きずり込んでるんじゃない…

 

『歌ッテクレ…!!!』

 

縋りついている…?

 

それでも私にとっては深い闇に引きずり込まれるのと変わらない。

 

—助けて…皆…—

 

思うように動かない体を必死に動かし、左手を伸ばす。

視界に、左手の甲にある“新時代”のマークが見えた。

 

—助けて…ルフィ…!!—

 

その瞬間、私を掴む腕がピクリと反応した気がした。

 

 

 




私達の攻撃を受けていたピエロの動きが突然止まった。そしてまるでキョロキョロと何かを探すような動きをしているかと思うと再び動きが止まった。何かいるのかとその視線を追った先…そこにいたのは遠く瓦礫の上で気を失ったままのルフィだった。その瞬間、再びピエロの左目に赤い光が溜まり始める。

 

「まさか…やめて!」

 

私はピエロの意図を察して叫んだ。他の一味もすぐに意図に気付き、動き出した。

 

「こいつ…ルフィを狙ってやがんのか!?」

「ふざけんな!ウタちゃんに何させるつもりだ!」

 

ゾロとサンジが叫びながらピエロへと向かう。

 

「オイ!こっちを見やがれ!“三刀流 百八煩悩鳳(ポンドほう)”!!」

 

ゾロの攻撃はまたもや壁に阻まれる。サンジはピエロの腕に蹴りを入れると、そのまま赤い壁を踏み台に高く飛び上がった。

 

「クソピエロが…やめろおお!!“粗砕(コンカッセ)”!!」

 

その強烈な踵落としですら壁に阻まれ、ピエロの閃光が強くなっていくのを止められない。

 

「“ストロング右”!!」

「“夜明歌(オーバード)・クー・ドロア”!!」

「“サンダー・ボルト・テンポ“!」

「“アトラス流星”!“火の鳥星”!…クソっ!止まれえ!!」

 

一味が次々と攻撃を繰り出していく。ロビンも関節技が使えずとも腕を咲かせ瓦礫を投げつけていく。

ローラたちも石を投げたり、銃を放ちながらなんとか気を引こうとしてくれる。

しかしその全てが赤い壁に阻まれ、ピエロは意にも介さない。

 

「ルフィ!!起きて!」

 

思わず私が叫んだ時、攻撃に参加せずルフィの元へと向かっていた獣形態のチョッパーがルフィをくわえ走り、ピエロの射程から逃げようとしていた。しかしピエロは視線でルフィを追い続け、閃光がどんどんと大きくなっていく。

 

「クソピエロがっ!」

 

ピエロの頭上から攻撃を続けていたサンジがピエロの眼前にまるで盾になるように飛び出した。

 

「何やってんだアホコック!」

「サンジ君!!」

 

ゾロと私がそう叫んだ瞬間、ピエロから赤い閃光が放たれた。

その閃光はまるでサンジなどいなかったように伸び、チョッパーとルフィがいた場所へ着弾し、大爆発を起こした。

 

「そんな…」

「サンジ君!チョッパー!…ルフィー!!」

 

ロビンが呟き、私が悲鳴を上げた瞬間、私の隣にくまが現れた。その両脇にはサンジとチョッパー、ルフィが抱えられていた。あの瞬間移動で3人を助けてくれたのだ。くまが「世話が焼ける」と呟き3人を放り投げた。

ピエロがギロリとくまを睨みつけ、その剛腕を振りあげた。その時、ピエロの動きがピタリと止まったかと思うと、雄たけびを上げながらもがき…徐々に体が薄れていった。

まだ足りない、そう叫んでいるような印象の咆哮を上げ、ピエロは姿を消した。

 

そしてピエロの頭があった辺りから人影が落ちてくる。

ウタだ。

 

「ウタちゃん!」「ウタ!」

 

皆が叫びウタの方へ走る。

ゾロだけは私達を守る様に、くまの前に立ちはだかったままで。

 

落ちてくるウタをサンジが受け止めると、すぐに獣人型になったチョッパーが診始めた。

すぐにチョッパーはポロポロと涙を流し始める。

 

「生きでる…ウタ…生きてるよ゛!ちゃんと呼吸も脈もある!」

「よかった…」

 

あの暗い歌声を発していたとは思えない様子で、ウタはスヤスヤと寝ていた。

その場にいた全員がホッと息を吐いた。

 

しかし、まだここには脅威が残っている、

王下七武海、バーソロミュー・くまはじっとウタを見つめていた。

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