ヒーローデクの恋人・2

ヒーローデクの恋人・2

前スレ72 とりあえず落ちをつけました

***


『エンデヴァー?』

『っ…デク!?…』

『待って!切らないで…声聴かせてください』

『…デク…俺のことはもう忘れてくれ…頼む』

『僕のこと嫌いに?』

『好きだ………すまん…すまない…っ』

『落ち着いて』

『…俺は…』

『会いたいです‥』

『俺…も…俺だって会いたい…ずっと…考えないようにしていたのに…声を聞いてしまったらもう…心がもう…体だって苦しくてどうにかなりそうだ』

『大丈夫ですよ…大丈夫…』

『ダメだ…ダメなんだ俺は…耐えない…と』

『まさか僕のために別れるとか考えてるんですか』

『………』

『言ったはずですよ。僕の幸せが何か』

『しかし…』

『僕怒りましたからね』

『な…なに…っ!?』

『今どこですか』

『執務室だ』

『椅子の上ですね』

『ああ』

『じゃあ…そのまま立って‥机に両手をついて…両脚を開いてください』

『なんだと?』

『いいから…両手と脚は肩幅より広く…背をそらして腰は…落として背骨と骨盤は直角より深く…いけるでしょう?』

『何を…』

『僕が後ろに立ってると思ってください』

『…なっ』

『あなたの腰に…手をかけるのを想像して』

『馬鹿…っ俺は今…仕事中だ!ヒーロースーツだぞ』

『合わせからねじ込みます』

『っ…そういう問題では…!』

『あなたはどこも触っちゃダメです…動かないで』

『なん…』

『あなたの背中…うなじから尾てい骨まで今綺麗に伸びてるでしょう』

『??』

『背中…弱いですよね…とくに腰のあたりからわき腹、股関節にかけてが急所だ』

『…は…?!!』

『動いちゃだめです…力を抜いて…そう』

『…う……』

『僕すごく怒ってるから無理やり入れちゃいます‥‥力を抜かないと危ないですよ…。あなたがやめろって泣いてもやめない…あなただって今…めちゃくちゃにしてほしいですよね…』

『く…』

『炎司さん…』

『はあっ…っつ…?!!…』

『炎司さん好き…』

『やめろ…腰が…腹が…何かおかしい!』

『いいですよ…おかしくなっても…好きですよね…奥のほう』

『…馬鹿な…脚に…力がはいらん‥だと?』

『気持ちよくなっちゃいました?』

『っ…こんな‥‥こんなのどこで覚えてくるんだ!』

『今さっき思いつきましたよ。別に誰かに教えられたわけじゃないです』

『デ……出久…っ』

『炎司さん…僕はね!許されるなら全世界に!大声で公表したいですよ。あなたが僕の可愛い恋人だって!!!!』

『こらっ…声が大きいぞ……しかしそれは…』

『何でダメなんですか??僕がまだまだ若造で…あなたに相応しくないから???』

『違う…知ってるだろう?俺が汚れ切った大人で弱い男だということを…!妻子にも手をあげ家庭も壊して…我が子を地獄に堕とした。唾棄され罵倒されて当然な…大罪を犯したんだぞ』

『だから今その過去を償っているんでしょう?』

『そうだ。俺の残りの生涯をかけて償う。…こんなことに未来ある君を…巻き込みたくないんだ』

『どうして』

『君にはこんな辛い思いはさせたくない。俺が…俺一人が耐えればすむ…』

『好きになっちゃったんですから遅いですよ。あなたが僕を心配してくれるように‥僕もあなたが苦しいのがもう…辛いんです…』

『……』

『重荷なら一緒に背負いたい…その道が地獄であってもあなたの手を離したくはないんです』

『出久…』

『どうして…電話にも出てくれなかったんですか』

『すまん…俺も…俺もできるなら毎日電話したかった!』

『僕だって会えないならせめて声が聴きたかったです。僕だって…僕だってさみしい!』

『…出久…!』

『…A国、結構状況厳しいです。今の回線も外で買ってますがもうすぐ切れてしまう。僕は顔を知られてしまっているし常に盗聴も尾行もされてる。もしかしたら相性悪い個性の敵を複数当てられて最悪命を落とすかもしれない』

『そんなバカなことが…』

『分かりませんよ。何が起こるかなんて。だから何度でも言っておきたかった』

『出久…』

『炎司さん…好きです…大好き』

『出…!』





「一足遅かったですか」

「…ホークス」

「オールマイトとイレイザーに呼び出されて…ほんの10分ほどでしたがあなたから完全に目を離してしまった」

「ホークス…?」

「たったそれだけで取り返されるなんて…」

「………」

「あなたのその顔…すっかり戻って…いやもっと酷い…まるで…」

「すまないホークス…一人に‥‥してくれ…」

「セオリー的にはここは絶対に下がっちゃいけないんですが、…あなたのその顔は…ダメだ‥‥俺も少し頭を冷やします」




「入りま~す。さっきホークスがすんごい顔して帰っていきましたが…」

「所長…所長!?」

「大丈夫ですか??のぼせたみたいに顔が赤いです…熱は…?…少しソファで横になりましょう…」

「大丈夫だ…一人で歩ける…ああ…悪いな…」



「業務は終わってるだろうに…おまえたち残っていたのか」

「はい。バーニンは遅いから帰らせましたが」

「…情けない姿を見せてしまった…」

「何を今さら…千葉から大量に送られてきたスイカを食べすぎたときだって横になってたじゃないですか」

「あったなそんなことも」

「あれはキドウがスイカで内側から体を冷やすとかテキトーなこと言うからよ」

「スイカが体を冷やすのは嘘じゃないぜ…ああでもいくら個性が凄くでも内臓の作りは所長も人間なんだなあって痛感したなあ…あれ」

「人間なんですから腹を壊すことだってありますよ」

「そうそう」

「あともう若くないんですから飲みすぎもダメです…二日酔いもあるでしょきっと」

「…オニマー」

「いくら酒で紛らしてもねえ…忘れらんないものです」

「キドウ…」

「もう一回言いますよ。人間なんですから…いいじゃないですか…みっともないくらい好きになったって」

「俺たちは応援してますよ所長」

「あなたが恋に悩めるくらいには平和になったんだって…しみじみしましたよ」

「このさいありえない大恋愛を成就させて二人でこんな殺伐とした世の中照らしてくださいよ」

「サプライズでしょうがだからといってスキャンダルじゃない…少なくとも俺たちにとってはすっごい明るいニュースでした」

「…おまえたち…」




***




『緑谷くん?』

『ホークス?この番号…』

『大丈夫。秘匿回線だ。俺しか聞いてないよ』

『…さっきはやってくれたね…見事な師弟連携プレイだったよ』

『弱いところを攻めろって相澤先生に叩き込まれてたのでつい…あなたの立場をつぶすようなことをしてしまったらごめんなさい』


『…そもそも君をA国に配置したのは俺だよ。今でも正しい判断だと思ってる。エンデヴァーさんがあそこまで君に傾倒するとは思ってなかったけど』

『ああ…それは推薦者のところにあなたの名前があったからそうかなって…卒業してから僕たち世界で経験を積む流れになってますよね。だからある程度覚悟はしていました。すごく貴重な経験をさせてもらってますよ。日本以外の国でのヒーローがどういったものか…』

『君たちは世界と日本とで活躍できる世代だと思ってるからね。だから…二人ともスキャンダルは絶対避けたかったんだよ‥‥』

『分かっています。あなたのことを恨んでなどいないですよ。問題があるとするならきっと…あなたにそうやって圧力をかける組織や社会のほうです。とくに組織は上層部とつながった利点を傘に日本のヒーローを合法的に支配しようとしている。どんな取引があったか知らないですが…あなたのことだ、すべてエンデヴァーを守るためでしょう』

『まあ…だいたいそんな感じ。…知ってたの?俺がエンデヴァーさんの監視役だってこと』

『いやそれは…初耳です…』

『そっかあ…じゃあ…忘れて~ははは』


『ホークス。いずれその組織、上層部とやらを変えるんですよね。そのために僕たちを育ててるんですよね』

『そうだよ。早く君らに仕事してもらって俺は楽~に余生を送るの。俺の夢』

『僕…ほんの数か国ですが滞在してみて…日本が平和だなって思う一方で可能性ある国だとも思いました。宗教のしがらみがほとんどない。意識さえ変われば寛容な世界が実現するんじゃないかって』

『寛容ねえ。…難しいよ、すごく』

『…僕の母はわかってくれました。エンデヴァーのこと』

『………』

『これは凄いことなんだと思います…受け入れてくれたんです…僕のために。あと轟くんのお母さんも認めてくれました。僕なんか一番許せない人間だろうと思うのに』

『お母さん…ね。…あいにく俺そういった情愛はよくわかんないんだよね』

『親といっても一例で…愛情には変わりありませんよ…つまり…何が言いたいかっていうと…これ悪くないエピソードでしょう、寛容の。今すぐにとは言いません。どうにかスキャンダルにならない方向…むしろ美談で僕たちの情報、流せませんか』

『…早くてもA国研修後だね。それまで遠距離国際恋愛で君たちが破局しなければあり得る線かもね』

『ほんとう?やったあ!』


『緑谷くん…』

『はい』

『じゃあそれまで、くれぐれも、バレないでね。それから執務室でああいうことは…さすがにやめたげてね』

『はっ…バレてましたか…すみません』

『まったく…君も君だけどさあ…』




***





『デク…どうして俺の電話に出ない』

『盗聴されてるんですよ。だから外に出て別回線でかけてます』

『そうか…すまん。電話を何度も無視されるのは不快なものだな…』

『それ轟くんにも言ってあげてください、いつか』


『ともあれ…話せるようになって…うれしいです…あと…この前は執務室だったのにすみませんでした。大丈夫でした?』

『…腰が抜けてしばらく立てなくなった…』

『えっ…ほんとですか…』

『ホークスには匙を投げられるわSK達には慰められるわ…さんざんだったぞ』

『わあ…』

『なんだ…うれしそうだな』

『やっぱり炎司さんエッチだなあって』

『っ‥馬鹿なこと言ってるなら切るぞ』


『真面目な話。僕たちの関係はオープンにはできないですけど…僕はやっぱりちゃんとお付き合いしたいと思ってます』

『無論だ。俺は…会いたい気持ちが抑えられなくなったあまり混乱した。それは今も同じだ』

『熱烈ですね…』

『いつ帰ってくるんだ…』

『二年後です』

『に…!』

『帰ってくるのは、ですよ。とんぼ返りになりますが休みの日にどこかで会うことはできるかもしれません』

『分かった。休日をリストアップして送ってくれ。こちらで現実的な範囲での場所を提案する』

『炎司さん…』

『な…なんだ急に』

『会えない時間も楽しみましょうよ』

『楽しむ…?』

『僕どこかで通信確保しますからカメラ付きで通話しませんか』

『携帯のか』

『そちらの夜とか』

『それは‥‥考えておく』

『やった!』

『…この前のようなことには』

『なりますね!…嫌ですか?』

『どう言ったらいいのか…俺を…思い通りにして楽しいか?』

『楽しくないといったら嘘になる…寂しい気持ちはまぎれます……あなただって僕にしてほしいことがあれば何でも言ってください』

『…声が聞きたい』

『いま話してるじゃないですか』

『…いつも言うように…言って…ほしい』

『炎司さん…好きです』

『…うん‥‥‥…早く次の休みを教えろ』

『情緒!』

『後で…とかじゃなく』

『今だ』



『休みを最大組んでこれか…待ちわびるな…この不確定扱いのMHは何だ』

『危険地帯勤務対価の休暇です。精神の健康を保つために長めに取れます』

『…それは内戦地域勤務が対象だろう。臨時でも有効なのか』

『そうですね。出張でも発生するからお得です』

『ダメだ。さすがに危ない』

『大丈夫ですよ…』

『…俺が代わりに』

『替え玉ですか?そんなのダメに決まってるでしょう…!』

『冗談だ』

『まさか!』

『…無理…はさせたくないのが本音だ…』

『うれしいです…ようやく…色々…話してくれて』

『…そうか』

『出久』

『はい』

『好きだ』

『僕も…です』

『何笑ってる…』

『いえ…間違ってなかったなあって』

『何がだ』

『炎司さん…僕の…僕の可愛い…恋人』

『だから可愛いというのはやめろ…』









ひとまずここまで。強引にまとめました。


ちょろっと続き

https://telegra.ph/ALL-OF-ME-09-16


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