セラフィム君の、

セラフィム君の、



セラフィムクロコダイルif

ホビダイルくん設定

時系列は謎です




「はいどうぞ」

目の前に差し出された大きな手袋に目をまあるくして、じっと見る姿にやっぱりどこか弟の面影を感じてキャメルが鉄仮面のままにそっと笑い声をもらすと反応して星は瞬き漆黒が羽ばたいて空気が大きく動くと花見をしようと立ち寄った春島の無人島で咲き乱れるハナモモの花びらが揺れて散り花吹雪となって降り注ぎ白い髪と褐色の肌をピンクに染めていく。


夏島の山中で山賊が絡んできたので解体していたら突然空から隕石の様な勢いで突っ込んできて喧嘩を吹っ掛けられたのでこれは珍しい生物だと喜んで買い、暫く殺りあっていたら何故か懐かれずっと後を追いかけてくる大きな子供にもすっかり馴れた。

ショコラは未だに警戒しているのか彼が手を近づけるとスルリと避けてキャメルの後ろに隠れてしまうが。

「君はいつも頭を押し付けてくるからね。それがあれば手で触れても平気なのかと思ったんだけど」

子供は手袋を手に取ると元々は大きな生き物を覆っていたであろう革を撫でて頬をすり寄せ感触を一通り楽しんでからはめていく。

簡素な服装に真新しい手袋が加わり手のひらを青空にかざしているのをキャメルは端からすると無表情に、分かる人がいれば微笑ましく眺めて後ずさるのと予備動作もなく巨体がキャメルがいた位置にドスンと飛び込んできたのは同時だった。そのままだったら確実に胸に押し潰されていただろうが特に驚きも焦りもせずにキャメルはそのまま此方に向けられた(気に入った)という翼の動きに

「それは良かった」

と応えるとそのまま頭突きをしてくる頭をよしよしと受け止める。

「今度は置いていくなよ」

「置いてくもなにも⋯⋯⋯⋯君喋れたの?」

にんまりと猫の様に浮かべた笑顔はクロコダイルとは似ても似つかない筈なのにやっぱりどこかが同じ気がしてキャメルは頭を捻るがどう考えても自分たちにこんな大きな家族はいなかったという結論しか出ない。

そもそももっと分かりやすい判断材料があるしキャメルはこの研究の一端を見かけた筈だがすっかり忘れているので一生たどり着ける訳がなかった。

「まあいいか。クロスギルドにそろそろ寄ろうと思ってたしそこで聞いてみようね」

もしかしたらクロの子供かなあ、などと絶対あり得ない発想しか出ないキャメルと斜め後ろに寄り添うショコラの後ろにぴったりとくっついて離れない子供はそれを見つめて静かに手袋を片方外しショコラに掌を近づけるけれど、直前でやっぱりかわされてしまう。

翼がまた花びらを舞わせて島全体が大きく揺れたが気にする人間はここには一人もいなかった。






https://telegra.ph/オマケのSホビ駱駝05-25

・オマケのinクロスギルド↓


「アニキ」

「懐かれちゃった」

「捨ててこい」

クロコダイルもこれまでの兄の行動には散々驚かされて慣れていたと思っていたが世の中まだまだ不思議な事があるらしい。

港が騒がしいので来てみればどこか自分の面影を持った巨大な子供がキャメルを抱きしめている。訳が分からない。

ショコラはクロコダイルに今回頼んでいた荷物を見せるとなにやら少し疲れているようでさっさとギルドの方へと持っていってしまう。

「捨てろって言われても着いてきちゃうし」

珍しくキャメルが困った様な声を出すと星の瞳孔がジロリとクロコダイルに向けられる。

「⋯⋯ちゃんとお世話するから」

何がちゃんとだ最後まで一緒にアニキがいれるわけないだろう。おれの事だって途中で──という言葉がでかかったがこんな人目がある場所で激昂する内容ではないと堪えた。

なによりその言葉を聞いてご満悦というように頬をすり寄せて笑う子供の態度が言葉を遮らせる。どうやら人間の言語を理解しているらしい。黒い羽根がバサバサ鬱陶しく動いてはその風で港の周囲が飛ばされそうになり危険だとますます人が離れていった。

怪しすぎる要素や自分に似ている点で嫌な予感しかしないのもあったが声も出さずニンマリと笑う姿は気にくわない。自慢気で身につけている手袋も服も全てがクロコダイルをイラつかせていた。

そこまでしておいてこの男は懐かない理由が分からないと宣うのだから弟は腹正しいし、兄はそれに何時までたっても気づけない。

「⋯⋯勝手にしろ」

「ありがとうクロ!」

「ギルドと港には近づけるな」

キャメルは嬉しそうに子供の腕から抜け出すとクロコダイルに問答無用でハグをする。毎回逃げようとしても兄では九割逃げられないので諦めているのもあるが今回はもうそれ以前に避けるのも面倒だった。

さっきまでご機嫌だった子供の態度はあっという間に急降下しているのが分かる。本当に見た目どおりの“子供”らしい。

自分に見た目が似ているならこんな男に懐くなとよっぽど言いたかったがもうこの謎の生物には関わらないと決めたのであえて無視した。

無視できない事態だとどこかで理解はしていたが、クロコダイルは問題の有りすぎる現在の状況に疲れきっていたので無視した。

この場でご機嫌なのはキャメルたった一人だったがやはり兄は相変わらず、気づくことはなかった。


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