ギンVS璃鷹

ギンVS璃鷹

スレ主

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 恋次は折れて半分になった蛇尾丸に手を添えると構えの姿勢を取った。


「この技を使えるのは一回だけだ だがこいつを喰らえば敵は必ず隙ができる 藍染隊長は強えェ できる隙はほんのわずかかもしれねぇが… …その隙を衝いてくれ」


一護達の勝率は限りなく低い。だが自分たちが戦闘不能になればルキアはすぐにでも藍染に殺される。何としても負けられない戦いに一護は真っ直ぐと藍染を見た。

呼吸を整えると、眉間の皺を更に深くさせる。一護と璃鷹はただ、その〝隙〟ができる時を待つ。


「──わかった」

「…ここが正念場だね」


恋次は折れた等身を振り上げると、地面が砕けた。恋次は蛇尾丸に語りかける。


「──いくぜ蛇尾丸……『狒牙絶咬』」


 折れた斬魄刀の欠片が、恋次の声に呼応するように散らばった蛇尾丸が浮かび上がる。

 その破片は主人の声に応じて、藍染に目掛けて飛んで行く。砂埃が飛び交い、藍染の視界が奪われた今が好機だと、一護と璃鷹は走り出した。

 一護は天鎖斬月を振りかぶる。

──しかし、その刃は藍染の肌に傷負わせる事なく指一本で止まられてしまった。

一瞬だった──璃鷹の顔に、暖かい血飛沫が飛び散る。

 自分のものではないその血液の出所は明白だった。一護の腹部が、藍染により斬られた。

次に藍染は璃鷹に向かっていた。


「っ!一護」

「君ならばそうすると思っていたよ──予想通りだ」


 だが、静血装により防御をしていた璃鷹にその刃は届かなかった。

 藍染はまるで〝防がれることがわかっていた〟ように次の対象を狙うために姿を消した。


「…バカな…」


 消えたかに思われたが、次に璃鷹の琥珀色の瞳に藍染が映った瞬間。阿散井は血潮を出しながら倒れた。

 死守していた存在が消え、もはや障害がなくなったルキアの元に藍染はゆっくりとした足取りで歩いていく。


「黙って行かせるとでも…ッ!?」


 それを止めようと鞭を構えた璃鷹の進路を塞ぐようにして勢いよく伸びた刀身が、少女の体を目掛けて飛んでくる。

 本来であれば腹を突き破っていただろうその刃を、璃鷹は静血装で防ぐ。 

 避けずにそのまま受けたのは、その能力を璃鷹は瀞霊廷に来た初めの頃に味わっているからだ。


──この斬魄刀は…。


 拍手をする音が聞こる。璃鷹は後ろを振り返った───そこには予想通り見覚えのある短い脇差のような斬魄刀を持った糸目の男が立っていた。



「いやぁ門の時も思うたけど……君硬すぎん?」

「…あのときの……」


 男の口角は初めて会った時から三日月のように歪んでいるが、常にその閉ざされた瞳からは愉悦の色は感じない。

 璃鷹は藍染に向けていた鞭を目の前の男に照準を合わせた。



「今から藍染隊長が大事なことするさかいそこで大人しく見とった方がえぇんやない?」


 男が忠告をするように言った。

しかし当たり前だが、璃鷹はそれに否定的な言葉で返す。


「…それを聞く義理が私にありますか?」


 辛辣な物言いをする璃鷹に、ギンは「…あの2人と違ってボクはキミに興味ないんやけどなぁ」と愚痴るように言った。


「……興味?」


わざと璃鷹に聞こえるように呟いたその声に、疑問符を浮かべた。


「キミのこと〝色々〟…知ってるで?」


 含みのある言い方に頭の中のピースが嵌りそうな感覚になるが、戦闘中であることを思い出し思考を並立にする。

 璃鷹は鞭から南米の雰囲気を纏った武器へと変える。


「へぇ滅却師やのに剣とか使うんや…?」

「剣……?…あぁ…これのことですか」


 そもそも、これは剣ですらない。贔屓目に見れば剣にも見えるだろう。

 だが、その出立は見るものが見れば異国の武器であることはすぐに分かる。

 本来はゼーレシュナイダーという武器だが、知識がある者が見ても一目では見た目も使い方すら逸脱しているためそれが何であるかは知るよしもないだろう。


「これは剣としての運用はしていませんが…そうですね」


 璃鷹の雰囲気が変化する。それは捕食者の獲物に対する殺気に他ならない。璃鷹はギンの体を目掛けて、その武器を振り回す。


「えらい物騒やなぁ…」

「喰らってみれば違いもわかるでしょう?」


 その攻撃を避けた後に言ったギンの言葉に璃鷹は好戦的に笑う───2人が立っている地面には、青い紋様がただ静かに輝いていた。


***


一護と恋次はその光景に唖然としていた。


「信じられねぇ…市丸隊長を圧倒してやがる…」


 現世にて、限定霊印を施されていた恋次に敗北した璃鷹が、隊長である市丸ギンを押し切る勢いで圧倒している。

 その事実が異常であることは戦闘の知識があまりない一護も理解できた。


「…璃鷹」



──そろそろまずい…。


 璃鷹はルキアの方向に目を向ける。

何の術かはわからないがその儀式めいた物が、もうすぐ終わろうとしていることがわかる。


「ッ」

「『外殻静血装』」


 気が付けば周りに張り巡らされた青い血装が、ギンを囲んでいた。そしてその青い紋様が地面につけている足から広がりギンの腕に張り付く。

 今回は一護達の目がある為、璃鷹は外傷を負わせるのみに止めた。

───ギンの腕からはおびただしい血液が飛び散った。


「……」

「なんと……あの市丸を相手に……!」


 双極の丘にいる者がその勝敗に困惑している中で、藍染の腹心である東仙だけが璃鷹の成長に対して純粋に反応した。


(妙に粘ったから少し手こずった…これじゃ間に合わない…)


 璃鷹は戦闘不能にしたギンを置き去り藍染の元へ急ぐ、しかし並の滅却師レベルの飛廉脚の運用が可能な璃鷹だが──逆を言えば、それ以上のスピードも出せない。


「驚いたな…まさかギンを相手に押し切るとは、だが──もう遅い」


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