この少しはましな地獄で(前編)

この少しはましな地獄で(前編)

労役に勤しむアシタカ

トントン、トントンと包丁の音が響く。同室の住人は出払っているので今は一人だ。


「よいしょ…野菜はこんな感じね。お肉はあとで切るとして、ミルクはと…あら?」


冷蔵庫を開けると、瓶に入れたミルクはほとんどなくなっていた。


「あーそっか…ジュリに用意してもらう前に出かけちゃったのよね」


今日のご飯はミルクシチューと自家製パン。パンの方は作り置きをしているので、ジュリが帰ってくるまでどうしようもない。


仕方がないのでリビングのソファーに寝っ転がる。思えばこうしてのんびりするのは結構久しぶりだ。


「んん…♡」


ソファーに触れる肌の感覚、これだけで確かな快感が全身に走る。

目の前には数少ない家具であるドレッサーがあり、その扉についている鏡に自分の姿が映る。


(うわぁ…すごい顔してる)


ついさっきまで料理をしていたとは思えない、蕩けた表情だ。そして、人の身でありながら人ではない自分の姿も映る。

まず服装だが、料理のためにエプロンを着けている。逆に言えばそれしか着けていない。エプロン以外は肌着も下着も身に着けていない。


そのエプロンにしても極めて薄い生地でできており、その下にある肌色がしっかりと見える。

さっき、エプロン以外は何も着けていないといったが、その表現は正確ではない。胸…いや、乳首は金色のピアスに貫かれている。ピアスには継ぎ目がなく、通常の手段では一生取り外すことはできない。

また、首には金属製の首輪がこの身を戒めている。本来の首回りよりわずかに径が小さく、首に食い込んでいる…もう長い間着けているので、わずかな息苦しさも心地よく感じるようになってしまったが。もちろん、継ぎ目はなく、切断は不可能なため首を落とす以外に外す手段はない。


そして、体の各所に刻まれた文字が目につく。右胸には今の自分の本当の名前…管理番号とバーコード、左腕にも同様のバーコード、そして左目の下に『SLAVE』の文字が、自分が人ではなくただの道具であることを証明する文字が彫られている。


私とジュリが組織に囚えていただいてからだいぶ経つ。開発され切った私の体は、どこを触れても強烈な快楽を感じてしまう。なので普段は裸に布地がほとんどないマイクロビキニで過ごしている。時折、部屋で料理をするときは今みたいに裸エプロンを身に着けている。


こんな状態の私だが、実は奴隷の中ではかなり待遇が良い。というのもお客様に提供する料理を作る調理係だからだ。人であったときに給食部に所属していたのがいい方向に転がった。こんな貧相な体では、お客様に楽しんでいただけたか怪しいし、私の料理の腕でお客様に楽しんでいただけるなら料理人冥利に尽きる。


もっとも、最近では娼婦としてのご指名が増えてきて、結構うれしい。私の角をつかんで喉マンコまで突っ込むイラマチオが好評だ。下の方のおマンコと同じくらい感じるようになってきて、意識を失うことが増えるのはちょっとアレだが。


「ザーメン飲みたくなってきたわね…」


お仕事のことを思い出していると、ちょっとムラムラ来る。味覚を改造して頂いて、ザーメン以外何も感じない舌になった子も多いが、味見の関係上私とジュリは普通の味覚を維持している。もちろん、精液が大好物だが。

ストックしてある人口精液(ミレニアムの技術で開発された)でも口にしようか悩んでいると、


「フウカ先輩~。今帰りました」


ちょうど同居人の一人であるジュリが帰ってきた。いつもよりちょっとだけ遅いが、そのくらいよくあることだ。


「お疲れ~ジュリ。帰ってきてそうそう悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれるかしら?」


「は~い。先に着替えてからでいいですか?」


「大丈夫よ。まだ野菜切っただけだからね」


帰ってきたジュリの姿はというと、それはもうひどいものだった。体の各所には精液が塗りたくられ、パーティードレスの上からでも卑猥な落書きが書き込まれているのがわかる。


「今日は一段とすごいわね、何人くらいに輪姦されたの?」


「えっと、入れ替わりも多かったので…10人超えてからは分からないです」


彼女は基本的に輪姦用途として調整されている。だからこうした様子で帰ってくるのはいつものことだ。

その彼女だが荷物を置いて服を脱ごうとしている。ソファーで寝っ転がってても仕方ないので、着替えを手伝おう。


「はい、タオル。顔だけでも拭いておいたら?」


「あ、ありがとうございます。先輩」


さて、顔を拭いて裸になった彼女だが、私と同じようなタトゥーが刻まれている。管理番号が違うくらいだ。

首輪に関しても一緒だが、一つ私と違う装飾品が付けられている。乳首の先に嵌められたリングだ。その周りは精液とは違う白い液体がこぼれている。


下半身に目をやると、太もも、そしてお尻に”正”の字が何個も書かれている。おマンコとアナルにはバイブが突っ込まれ、子宮のあるあたりは大きく膨らんでいる。最もそれは彼女が妊娠しているというわけではない。注ぎ込まれた大量の精液によってこのような状態になってしまっている。


「やっぱりジュリの子宮すごいわね、3リットル入るんだっけ?」


「ですです。あとでいっぱいいただきましょ♪」


「ええ、そうね♡」


ジュリにお揃いの透け透けエプロンを着せて、料理の準備を再開する。お肉以外は大体切り終えてるし、ジュリの準備が終わったらすぐできるだろう。


私がジュリと再会したのは奴隷にさせていただいてから、数カ月経った頃…輪姦され続け、心が折られ、そして料理人として働き始めたころだった。

その時にはすでに体を改造され、私が護ろうとしたのは味を見るための舌と、料理を作るための両腕、それだけだった。


そして、ジュリはおっぱいを大きくされ、1人で立つのは困難なほどになっていた。

そんな彼女を前にして動揺していた私に対し、そこまで連れてきていただいた方は、口枷(喉を開発するために呼吸が難しくなるほど長いペニスギャグだった)をはめると、


「こいつの胸は牛みたいに母乳が出るようになってる」

「その母乳をお客様のために絞れ、たっぷりな」


と指示してきた。


大切な後輩を傷つけるようなその内容に、一瞬ためらってしまったものの、それ以上に何をされてしまうのかわからない恐怖から従うしかなかった。

ジュリも私のことを気づいて、はじめは喜んでいたものの、準備を進めているうちに何をされるか理解し、


「せ、先輩…な、何をしようと、し、してるんですか」

「や、やめて!いや、いやあああぁぁぁ!」


と泣き始めた。それを見た私は、心を無にして淡々と作業を進めた。


「やだぁ!もう絞られたくない!」

「あっ!ああああああああ!」


改造された彼女の胸は、相当な量の母乳を噴き出した。あとで聞いた話によると、墳乳時には恐ろしいまでの快感が走るらしく、自分の体ではないような感覚に陥るらしい。

ノルマを達成するころには息も絶え絶えで、意識はあったもののその焦点は合っていなかった。


その日の夜はこっそりと泣いてしまった。もう涙も枯れたと思ったのに。


それからは、毎日のように同じことを強要された。ジュリから絞った母乳で料理を作り、お客様に提供する。ときおり、彼女のおっぱいに薬剤を注射して、近くにいるだけで発情するような媚毒を作ることもあった。もちろん影響がないわけなく、その時のジュリは狂ったように暴れまわっていた。


そんな最悪な日常が続いてしばらくしたころ、大きな転機が訪れた。

いつもどおりジュリが囚われている部屋に連れてこられたところ、口枷と部屋のカギを忘れたまま男性の方がどこかへ行ってしまった。


その時の彼女は、奴隷として囚われた哀れな雌ではなく、ゲヘナ給食部の牛牧ジュリの顔をしていた。


「…フウカ先輩、逃げてください」

「彼らの立ち話を聞いていると、この牢からはうまくいけば監視を潜り抜けて逃げられるかもしれないんです」

「タイミングを見て、私が叫んで囮になります。先輩一人だけなら何とかなるはずです」

「…お願いします。先輩だけでも、せめて」


ああ、私が彼女をこんなにも傷つけているのに、ジュリは私を案じてくれたのか。おそらく、私が逃げ出した後、彼女はひどい目に遭うことを分かっているのに。

だから、私は…


「ごめんなさい、ジュリ。私は逃げない。ここに留まるわ」


「…え?」


「私も…彼らと一緒なのよ。あなたを傷つけたのもそうだけど、大勢の人間を地獄に堕とすのに手を貸してしまっているの」


「そ、それは、先輩も脅されて…」


ジュリの言葉を、心からの叫びを、遮って続ける。


「この前、あなたに薬を使ったのを覚えてる?…あの母乳はね、他の子の調教に使われたの。コップ一杯飲むだけで逝き狂うようなものでね、その様子を見させられて…私は、私は」


「喜んじゃったのよ、その結果を見せられて」


「…っ!」


彼女の息を吞む声が聞こえる。


「私の作った媚毒入りの料理が、食べた人を狂わせ、傷つけるのを見てうれしくなっちゃったのよ。ああ、うまくいったって…料理人失格よ」

「もう私には、表の世界で料理を作る資格はないわ。この闇の世界で人を傷つけながら、ここの住人に料理を作るしかないの」


「先輩…」


「それにね、仮に私が逃げ出したらあなたはここよりひどい地獄に堕とされるわ…こんな、こんな私のせいで!あなたがそこに堕とされるのは耐えられないのよ!」


正直、ジュリの今の状態はかなりマシだ。他の奴隷に比べてちょっとだけましな立場にいるからそれはよくわかる。


「だから、これはあなたのためでもあるのよ、ジュリ。私の立場なら、あなただけなら何とか助けられる。ここであなたを見捨てて逃げ出すわけにはいかない」


「…そう、ですか」


…ここから先は、言うかどうか悩む。

でも、真の地獄よりかは少しでもマシなところにいるためなら、私はなんにでもなろう。


「よく聞いて、ジュリ。これから、先輩として…いいえ、人として最低なことを言うわ」


「…はい」


「私と同じところまで堕ちて。自分の特技で人を傷つけて、それを喜んでしまうような畜生にも劣る最低で下劣な人間まで」

「それが、この地獄を生き抜く、力を持たない私たちの唯一のすべだから」


もう私に守りたいと思えるものはない。ジュリと自分の舌と腕以外は。


「やっぱり、先輩は優しいですね」


「え?」


「フウカ先輩がそんな人間なら、こんな辛そうな表情なんてしませんよ」


「…そう」


…堕ちるところまで堕ちたと思った私でも、非情になり切れないのだろうか。


「分かりました、先輩。私も一緒に堕ちます、そこへ。だから、一つだけお願いがあります」


「何?ジュリ」


「キス、してください。舌まで挿れるディープキスを」


「…いいわよ」


ちゅっ♡…じゅる♡


静かな独房に淫らな水音が響く。改造された私たちの口は、甘い媚薬を唾液として吐き出している。おかげですごい勢いで昂っていく。


(ああ、悪くないわね。こういうキスも)


じゅる♡…ぶじゅじゅ♡


「ん♡…ん♡…んんん♡」


あっという間にジュリがイッてしまう。もしかしたら私かもしれない…あるいは同時にイッたのか。


久々に、幸せな絶頂だった。


それから何度かキスでイッたあとは、いつも通りジュリのおっぱいをもんで母乳を絞り出した。普段と比べて彼女は楽しそうだった。


数日後、ジュリは拘束を解かれ、私と同じ個室(つまり今住んでいる部屋だ)を割り当てられた。あとで聞いた話だと、あの時無防備だったのは私をテストしたようで、あそこで逃げ出したら地獄のような調教が待っていたそうだ。

今は時々輪姦されたりしながら、この少しはましな地獄で過ごしている。


中編―1

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