おれのこども②

おれのこども②

短めです

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黒名はふっと目を覚ました。

そのまま、起き上が、ろうと思って、身体を動かすが、上手く動かなかった。胴体が重たい。

不思議に思って視線を落とすと、酷く膨れた腹が視界に映った。

「……」黒名は一旦目を閉じてから、一回深呼吸して、もう一度目を開けた。

足元すら覆い隠す肌色は、少しも変化がない。


………………あぁ、夢じゃない。


理解して、絶望感にくらりと視界が歪んだ。昨晩と違ってもうほとんど動けやしない。

黒名は一つ息を吐く。

一晩(かは時計も窓もないので分からないが、とりあえず一通り)寝て目覚めたおかげで、思考は随分すっきりとしていて、その分余計に色々な疑問が浮かんできた。

このままこれを産むしかないのか?

いや、そもそも、これを産んだら、開放されるのか?

昨日の記憶もぶり返してくる。もうそこまで動揺はしないが、それにしても不快だ。つい眉間に皺が寄…….ったところで、もう一つ疑問が浮かんだ。


__そういえば、この子供を殺したらあいつらに反撃されないか?

いくら有り余る性欲の産物とはいえ自分の血の繋がった子供を殺されるのは、黒名だったら寂しい。……かも。そんな経験ないからよく分かんないけど。

昨夜は混乱して行動に移してしまったが、アイツら、というかアイツにとっては腹のコイツは大切かもしれなくて。大切な子供に下手なことをしたら、今度は黒名自身が殺されるかもしれない。

……殺されなくても、昨日の比じゃない責め苦を味わうことになるだろう。

「……まだ生きてる、よな」期待半分、半分不安になって腹のてっぺんに手を伸ばし、撫でる。

……すると、皮膚を挟んで反対側から、トンとまるで返事をするかのような柔らかい振動が返ってきた。

「……」

黒名は思わずもう一度撫でる。とすん。やっぱり柔らかい蹴りが返ってくる。

「ぁ……」並びの良くないギザ歯の隙間から、意図せずして小さく声が漏れた。


生きている。

俺の動きに反応して。自分の生存を訴えている。

意志を持って……?

俺の腹の中の、子供が。


心臓がどくんと跳ねる。でも、昨夜のとは違って、痛みは伴わなかった。代わりに、ほんのり熱を載せていた。

「……生きてる。」噛み締めるようにそっと口に出したとき、最前考えていたことが頭に蘇ってきた。


__自分の、血の繋がった、子供。

__大切な、子供。


「……はは」

普段はきゅっと引き締められている、硬い口元の表情筋が緩む。ひょっとすると睨みつけているような印象を与える鮮やかな猫目も、柔らかく伏せられて。

目の前の"子ども"に投げかけられた、まるで慈しむようなその微笑みに、絶望の色はもはや浮かんでいなかった。


「おれの、こども。」

たっぷりの愛の籠った、酷く空虚なその言葉は、湿っぽい空気にじんわり溶けていった。

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