邂逅Ⅵ〜F 彼らのターニングポイント(ChapterⅡ)
名無しなの気ぶり🦊

「景和大丈夫?会社の近くに変な怪物が現れて、景和にもしものことがあったらって思って…!」
「あとね」
「はい、こんな状況なので勝手ではありますが私が義姉様をお迎えに上がらせてもらってたんです」

その後、沙羅の会社の近くでラスボスが現れたのか彼女から電話が掛かってきた。
「2人とも早くその場から離れて!、見つからなければ安全だから!」
「なんで景和がそんなことを知ってるの?」
「義姉様、怪物が迫ってますよ!」
(ダイヤちゃん、話題逸らしナイス!)
「あっあれ…」
「ジャ? ジャジャァッ!」
それを聞いた景和は迷わず避難を促すも、そんな中沙羅はある車に乗った男性が、ラスボスを撮影していることに気づいた。
…ラスボスことナイトが男性に気づき、男性を攻撃したことにも。
「うわああああ…!」
無論、その男性は消滅
「「あっ…」」
(どうしようどうしようどうしよう)「義姉様っ!!」あ、ダイヤちゃん…」
「義姉様早くこちらに!」
「…分かった、だから景和はこっちに来ないで!」
「姉ちゃん、ダイヤちゃん⁉︎」
さらに背後から雑魚ジャマト2体が現れ、2人は考えるより先に慌てて逃げだしたのだった。
一方こちらはデザイア神殿休憩室。
「目指せ~・・・場外ホームラン!」
「違うよ祢音ちゃん、それは野球じゃなくてサッカー。ちなみにフォークボールの投げ方や角度はこ「いって⁉︎」って…」
ミッション再開に備え闘志を彼女なりに燃やす祢音は缶蹴りの練習をしていた。なぜか野球の練習だと勘違いしながら。
英寿さんとギロリは避けるが、跳弾が道長に当たる。屋内でやる遊びじゃないのは言わぬが花。
ちなみにウマ娘たちがサロンにいるのは最終決戦だからということでツムリに避難?を勧められたからである。
(シュヴァル、好きな人に好きなことを力説しちゃう癖は非常時でも変わらずなのは見てて安心するわね…)
(ミッチーは…まあ大丈夫でしょう)
「シュヴァル、ナイスハイライト」
「どこがだ!」
「こ〜ら浮世トレーナー、ミッチーを煽らないで!」
「すまんすまん」
案の定英寿が道長を煽りにかかり、今回はクラウンに軽いお小言をいただいていた。
「恐れ入りますが祢音様、これ以上は他の参加者のご迷惑となりますので」
「もうされてるしなってんだよ!」
ギロリの的外れなツッコミに思わず道長も突っ込んでしまう。
「たくっ! クラウンやダイヤモンドもそうだが、どうしてお嬢様ってやつは、こう行動力が良くも悪くもあるっつうか空気を変なところで敢えて外してくるやつばっかなんだよ…」
「あらミッチー、私はむしろ気配り達者なほうだと思うけど?」
「事実だけど言われると腹立つなぁ!」
今日の道長はいつにも増してツッコミが冴える。というかキレッキレである。
「まあまあお二人さん仲良く喧嘩しないで」
「「ってなんで(だ)よ⁉︎」」
「ごめんごめん♪」
「けど私だって、お行儀の悪いことしてるなぁ…って分かってるよ。でもゲームを攻略するにはジャマーエリアの場外まで缶を蹴らなくちゃいけないんだもん!」
「だからこうやって野球?の練習を…」
「それは野球じゃなくてサッカーだからね祢音ちゃん、何度も言うけど…」
行儀が悪いのは百も承知だが、実際のラストミッションでは缶をジャマーエリアの外まで飛ばさなければいけない。なればこそ慣れない作業とはいえ祢音も頑張っているようだよ
「皆様さえ訓練をご希望なら適切なトレーニングエリアをご用意してございます」
当然ながら、ギロリに練習用の缶を取り上げられトレーニンググエリアを勧められるのだった。
「練習なんて無駄だ。どうせ俺が蹴る」
「気持ちは分かるけどミッチー言い方…」
「負けないし!」
「その意気だよ、祢音ちゃん…」
「気持ちは分かるけど皆仲良くしてよぅ〜!」
そして祢音も道長もデザ神の座を取りに行く気満々だからか他がやらずとも俺がやる、私は負けないといったように戦意に満ち溢れているため、皆にできれば仲良くしてほしいキタサンは1人やきもきしていた。
「最終戦は皆気合が違うなぁ」
「呑気なこと言ってる場合ですかトレーナーさん!」
(西暦元年前後にデザグラ初参加って案外ほんとだったりするのかな…)
ここに至ってむしろリラックスしている英寿にキタサンは先程英寿がデザグラ初参加は西暦ごろだと真剣な面持ちで言っていたことを思いだしていた。
本当に西暦元年から参加してれば、いつもこんな感じだったのかななどと思ったりもしつつ
実際今は生き残れば最悪ブービーでも良かったこれまでとは明らかに違う、明確に優劣で優勝と敗北が別たれてしまう緊迫した状況であるのだから。
「って「桜井トレーナー?」」
「景和、寝てなくて大丈夫なの?」
そしてそこへ景和も起きてくる。ただ先程の戦闘の傷は浅くないようで、足取りもおぼつかないが。
祢音は心配して声をかけ、何だかんだで心配なのか道長も体勢を変えてクラウン共々景和さんを目で追う。
ただ景和本人はというと、誰彼に目もくれずそのまま休憩室を出ていったので、英寿がそれを追うのだった。
「ラスボスジャマトが街に現れました」
そんな中、ギロリがツムリから電話を受けサボテンナイトジャマトが出現したと伝えてくる
つまりミッション再開の合図であった。
「今すぐ現場へ移送してくれ」
「その怪我で大丈夫ですか?もしジャマトにやられたらただではすみませんよ」
「そんなのどうだっていい!!姉ちゃんが襲われてるんだよ」
その頃景和は、いつもの待機ルームでツムリにエリアに転送するよう進言していた。
がツムリは、景和さんの身を心配して、今の貴方のケガでは危険だと言うも沙羅とダイヤのことがあるからか、その意思は固いようだ。
「…分かりました。もう一度忠告しておきますが、ラスボスとまともに戦ってはいけません。缶を蹴る以外、攻略方法はありません!」
かくて渋々ではあるがツムリさんは了承し、改めてサボテンナイトジャマトとはまともに戦わないようにと伝え、合流した英寿、祢音、道長も含め転送するのだった。
・ミッション開始。
着いて早々景和は、沙羅とダイヤを助けに戦列を離れていく。
「勝負だ、ギーツ」『SET』
「勝負になればな?」『SET』
「「「変身ッ!!」」」
『NINZYA』『ZOMBIE』『CLAW』
英寿さんは、変わらずサボテンナイトジャマトに有効打を与え得るニンジャで。道長や祢音はというと、それに次いで有効と思われるブーストすら無い有り様だった。
ただ強いて言えば道長はゾンビを最近ずっと使用しているので、その意味で戦法を熟知しておりさほど不安は無いようである。
・沙羅さん救出。
「変身!」
『ALLOW』
「ふっ!」
「ジャア〜…⁉︎」
景和はというと沙羅とダイヤをようやく見つけたので迷わず変身し、2人を襲うポーンジャマトを撃破してみせた。
「トレーナーさん、もうその姿ということは…」
「えっ?どういうこと?」
(ダイヤちゃん、景和のこれ知ってるの?)
弟の変身に戸惑う沙羅と戸惑わないダイヤ。
初めて認識する者、既に見慣れた者。その違いが如実に表れていた。
「いいから2人とも俺から離れないで!」
「はい!」
「全然わかんないよ。景和!」
デザグラのことを非参加者に知られたてしまえばペナルティだったはずだが景和は落ち着いていられる場合ではないためか、説明はせず周囲を警戒するのだった。
「待ってよ景和!」
しかしそんなことを読み取れるわけもない沙羅は、景和に追いすがる感じで手を伸ばす。
瞬間、彼女の手が、タイクーンのIDコアに触れ…
「えっ…?」
どこか既視感のある景色が再生されていくのであった。
(…なんかあったか?)
『様子を見に行『ダアッ!』…プレイヤーへの攻撃はペナルティだぞ、バッファ?』
『お前にクリアされるよりマシだ!』
「吾妻トレーナー、なんでこんな時に…!」
「ミッチー…お願いだから早まらないで!」
倒したポーンジャマトを道長は素早く英寿に投げつける。
最終戦だからか英寿への攻撃もいつにも増して厭わないのか。
・甦る記憶。
あれから数分、沙羅とダイヤの近くに潜んでいたポーンジャマトを景和は虱潰しに片付けていた。そしてひと段落がつき変身解除し、沙羅とダイヤに駆け寄ったのだが…
「…何なの? 今の怪物達?」
「…もしや義姉様…」
(IDコアに触れて思いだした、つまり義姉様は過去に…)
想定外というか、沙羅に怪物達は何なのかと問われるのだった。
「もう大丈夫だから!」
「大丈夫なわけない!! だって、あいつらのせいで、お父さんとお母さんは…!」
「ええ…⁉︎ どうゆうこと?」
「トレーナーさん、これはつまり義姉様はデザイアグランプリを見たことがあるということかと」
「ですよね、義姉様?」
「うん、ダイヤちゃん…」
「思い出したの。忘れてた記憶を」
「記憶…?」
「! まさか姉ちゃん、これに触れたから…?」
「そうだよ」
一連の話を聞くに
どうやらIDコアに触れたため、沙羅は消されていた記憶が戻ったらしい。
「お父さんと お母さんは、事故で亡くなったんじゃない…あいつらに、あの怪物に!」
その時の事を涙ながらに沙羅は景和とダイヤに語り始めるのだった。
『お父さん! お母さん!』
『逃げろーっ! 沙羅ーっ!』
『誰かーっ!娘を…』
『危ないです。逃げましょう』
『嫌ーっ! やめて』
まだ私が高校生の時、ジャマトにお父さんとお母さんが襲われた。
…私はジャマーエリア外にいたので襲われなかった。
ジャマーエリアで隔てられ、エリア内に囚われた ご両親をジャマトに殺されたらしい…
「お二人の過去にそんなことが…」
「なんで俺、こんな大事な、忘れちゃいけないこと…」
「あの時、景和は親戚の家にいて現場にいなかったから…」
「ほんと、なんでこんな大切なこと忘れてたんだろう!?」
「ジャマトが…父さんと母さんを…?」
”その場に”居なかった”
ただそれだけのことなのだが家族や担当ウマ娘といった身近な関係性を大切にしている景和からしてみれば、姉の話には酷くショックを受けたのだった。
「ゔっ⁉︎」
「景和ぁ⁉︎」「トレーナーさん、トレーナーさん⁉︎放してください!」
そして現実は無常。
そんな中、再びポーンジャマトが集まってきて
景和は不意打ちを食らって倒れてしまい…
「景和、景和ぁっ!」
「トレーナーさぁんっ!!」
「ね、えちゃん…ダイ、ヤちゃん…!」
成す術なく沙羅とダイヤが連れ去られてしまうのを息も絶え絶えに見つめるしかなかったのだった。
・ギーツ VS バッファ。
先程から変わらず道長はニンジャバックルを奪うために英寿に斬りかかるのを繰り返していた。
『ニンジャバックルをよこせ!』
『参加者への攻撃は違反行為です』
『…担当も見てるだろうこの状況でそれをやるなら、それ相応に覚悟しろ!』
『TACTICAL SLASH』
「ぎあ゛あ゛ッ゛⁉︎」
「せっかくのハイライト、邪魔すんな!」
見かねた英寿は、変わり身の術で頭上へ脱出…一撃の元道長を止めるのだった。
「うっ、容赦ないなあトレーナーさん…でも良かったのクラさん?」
「ええ、今回はこれで良かったはず…でもごめんなさいミッチー」
(貴方の気持ちは分かるけれど、今この場では仲間割れしてほしくはなかったの…)
「クラウンさん、あまり気を落とさずに」
「ありがとうシュヴァル…」
クラウンも関与こそしていないものの、英寿と似た考えを自身のトレーナーに対して抱いてしまったことそのものを恥じ、それをシュヴァルに慰められるのだった。
道長に対してはどこまでも思い入れが深いようである。
「ああーっ!ちょっと何やってんの!ラスボス、逃げちゃったじゃん」
「…バッファのせいだろ!」
「うるせえ!」
「このままだと…過去最大の被害が出ますね」
しかし、そうこうしてるうちにサボテンナイトジャマトは移動、ミッションはまたまた中断の運びとなってしまった。
まあ仮に道長が斬りかかってこなかったとしても、ポーンジャマトが十分邪魔だったのは間違いなかろうが。
ともかく、ツムリはこの先の被害の拡大を心配するのだった。
同じ頃景和が休憩室のベッドで起き上がると、介抱しているギロリと、付き添いの英寿とキタサン、祢音とシュヴァル、クラウンがいた。
「どうか御安静に…」
「づッ⁉︎ そ…うはいかないっ、姉ちゃんがラスボスに!」
「ダメ(です)よ桜井トレーナー…!」
「ああ、その体で無理しないほうがいい」
「嫌だ…これ以上ジャマトに俺の大切な誰かを、姉ちゃんとダイヤちゃんまで奪われるなんて嫌だ!!」
「タイクーン…」
「ずっと事故だと思ってたけど、姉ちゃんが思い出したんだ。父さんと母さんは…ジャマトの犠牲になったって…」
「もう…家族を失いたくない…」
((((家族、か…))))
(あたしの父さん、母さん、お弟子の皆さん…)
(爸爸、妈妈、姐姐…)
(父さん、母さん、シーナ姉さん、ヴィブロス…)
『私のことは忘れて…』
(母さん…そりゃ家族の安全を脅かされれば、タイクーンも焦るか)
家族という言葉に各々の家族、そしてそれが傷つけられた妄想が浮かべば、景和に異を唱えられる者は誰もいなかった。
英寿はというと、手にしたコインを見つめ、そして、それを強く握りしめる。英寿自身も、母と生き別れになったという過去があればこそだろう。
「皆、俺に考えがあるんだ!」
「共同作戦?」
「ああ。プレイヤー4人で一気に仕掛けよう。誰かが注意を引きつければ、他の誰かが缶をけれるはずだ」
4人で一気に仕掛けようと景和は言う。人の善性にチップを全賭けしたような作戦だった。
(こいつ、周りが見えてねえのか…)
「そんな分の悪い賭けには乗れねえな!」
「…素人質問なのだけれど、それは誰かが死ぬこと前提ってこと? だとしたら…私も反対よ」
当然、道長は、またこの策の欠陥に気づいたクラウンも反対の意を示す。
「そんなこと言っている場合じゃない!! これは世界を救う戦いなんだ」
「馬鹿かお前、命懸けで理想を叶えるゲームだ!」
「ゲームじゃないっ!」
『こ…こんなはずじゃなかったんだ…』
『…ご、めん。みち、な、ガ…』
(透…)
「…見返りを叶えるために、叶うかどうかも生きるか死ぬかも不確定な醜いゲームで俺たちは戦ってるんだ。だったらなおのこと誰かに勝ちを譲るなんてありえない!!」
(…桜井トレーナーの気持ちも、ミッチーの気持ちも幾つか見てきた今となってはよく分かる…私はどうすれば…)
それでもなお『世界を救うための戦い』ならばと自らの正当性を主張する景和だが、道長の『理想を叶えるゲーム』だという考えを覆す事は できなかった。
そしてクラウンはああ言っておいてなんだが、景和の心情も理解できるだけに早くも悩んでしまっていた。
「分からずや!」
「ッ⁉︎」
(…ごめんなさい)
「…2人は作戦乗ってくれる?」
「私も勝ちは譲れない」
「えっ…?」
「自分の手で叶えたいから。私が望んでる世界を」
「祢音ちゃん…」
(気持ちは分かるけど、桜井トレーナーの気持ちも分かる…。うぅ、どうしたらいいんだろ…)
また祢音も、自分の手で理想を叶えたいからと協力を拒否する。
思い浮かべた場面を見るに、景和と沙羅、ダイヤの家族愛を目の当たりにしたからこそ、『本当の愛』をより強く求める結果になってしまったのだろうか。
「なんで皆、そんなn「あたしからもいいですか?」キタちゃん…」
「あたしは…ううん、あたしとシュヴァルちゃんとクラさんは桜井トレーナーの気持ち、うん、分かります」
(勝手に代弁してごめん、2人とも…)
(ううん、気にしないで。私もシュヴァルもきっと同じ気持ちだから)
(うん…僕たちの代わりにありがとう)
そしてキタサンからも発言の手が上がる。クラウンとシュヴァルも目で同意だと伝えていた。
「家族が危険な目に遭ったならきっとあたしもなりふりなんて構ってられない」
「でも…これは皆が願いを叶えるための命懸けの戦い。なら誰かを助けたいって願って叶えたなら、それ以外の人の願いは叶わない…」
「だから、こんな非常時でも吾妻トレーナーも祢音さんも冷静なんだと思います」
家族を思う気持ちはきっと景和にもこの場にいる家族を持つ者、その誰もが負けていない。
されどこれはデザイアグランプリ。願いを叶えられるのはプレイヤーの中でただ1人。
おまけにトゥインクル・シリーズのように生命の保障が成されているわけではない。
ならば生き残ること、願いを叶えることに道長や祢音がこの状況であっても拘ることは仕方ない。
そういうことを伝えたかったようだ。
「だからって世界がこんな時でm「────誰も間違ってはいない!」…英寿⁉︎」
「…世界のために自ら犠牲になろうとするやつなんて、そうはいない」
「…自分さえよければ、他の人が犠牲になってもいいっていうのか⁉︎」
「その言葉、そっくりお返しする」
「自分のお姉さんと担当ウマ娘さえ守れれば、自分たちさえ幸せなら、他の誰かは幸せになれなくても、不幸を掴まされても構わないというのか?」
「っ、それ、は…」
そして英寿はというと、今回はいつもと違って景和に厳しかった。
景和もそれに反論はできず。
「お前はトゥインクル・シリーズで、デザイアグランプリの縮図とも言うべきあの競技で選手たちの何を見てきた?」
「勝者が生まれれば敗者もまた必然的に生まれている」
「皆一様に血反吐を吐くような努力をし、けれど戦いに勝って願いを叶えた者もいれば、叶えられなかった者だっている」
「…彼女たちが、プレイヤーがそうなりたくて、そういう景色を自ら望んでそうなっているとでも?」
(トレーナーさん…!)
((浮世トレーナー…))
「…⁉︎」
(その通りだ…)
おまけに彼らの担当ウマ娘とて常日頃デザイアグランプリと似たような経験を否が応でも味わっているというような事実を突きつけられてしまえば、なおのこと先程の自身の行いの短絡さを見せつけられているように感じてしまうのも無理はなかった。
「誰よりも傲慢なのは、お前のほうじゃないのか?」
(…そうだ。俺が願いを叶えるってことは他の皆はそりゃ願いを叶えられないってことじゃないか…)
誰が缶を蹴るにせよ、誰も彼もが幸せになる結果にはならないということだ。
「叶えたい事があるなら戦え。それしかない」
(…どれだけ世界に打ちのめされようともな)
「…分かった」
(そうだ、なら俺は…!)
…さっきは無理しないほうがいいと言っていたにも関わらずこう言い直すということは、英寿場景和の覚悟もそれなりに認めているということなのだろう。
・ミッション再開。
そしてそれからあまり間を置かずして、逃亡時よりさらに巨大化したサボテンナイトジャマトが関東近郊に出現した。
纏わりつく巨大植物には沙羅とダイヤ、その他諸々の人間やウマ娘が捕らえられていた
「「「トレーナーさん(祢音ちゃん)(ミッチー)…」」」
(((どうか、死なないで…!)))
「世界の行く末は、あなたたちにかかっています。仮面ライダー」
ツムリやウマ娘たちが英寿たち4人の安否を祈り、そして──
「さあ、勝負だ。誰が缶を蹴るか?」
「この俺だ!」
「絶対負けないんだから!」
「…」
(姉ちゃん、ダイヤちゃん…見つけた!」
「「「「変身!!」」」」
『MAGNUM』『ALLOW』『CLAWの
4人はそれぞれ離れた位置で同時変身、景和は早くもブーストを使っている。
全員、雑魚ジャマトと戦闘を開始したのだった。
『ラスボス!ここにいるぞーっ!』
『自ら囮になりにいったの⁉︎』
『ええっ!?』
『景和…』
が、景和は早々にナイトジャマトによく見える位置に飛び出し、自らを囮としたのだった。
「「桜井トレーナー…」」
「思いきったわね…でも頑張って!」
意識はしっかりあるようだ。
ブーストのスピードを駆使し、ナイトの攻撃から逃げるようにあちこちを駆ける。
「どうした!?当ててみろよ!」
「何してんの!?」
「自分が囮になる気か」
「あいつもどこまでもお人好しな奴だ。…なら望み通り、俺が終わらせる!」
「ん? おわぁっ⁉︎」
ギーツはニンジャバックルを取り出す…が、何かがあったようだそう
「ぐうっ⁉︎ うぅ…ああっ…」
「うわああああああッ⁉︎」
「「景和(トレーナーさん)…⁉︎」」
そして満身創痍の状態にも関わらず逃げていた景和/タイクーンだが、疲労と体の痛みから動きが止まり、もろにナイトジャマトの攻撃を受けてしまう
ブーストのスピードがあっても、景和の体が もう限界、だいぶ悲鳴を上げているようだ。
時同じくして、巨大植物に捕らわれた沙羅とダイヤが目を覚まし、景和さんの身を案ずるのだった。
「俺の事は…気にしないで…皆を助けるまでは…倒れないからっ」
「だから、俺のことは…気に、しないで…」
「景和…ちょっとあんた達どいて!」
「皆を助けるまでは…倒れない、から…!」
「…」
「ジャジャァアアアアアアッ!!!!」
満身創痍がすぎる景和を見かねた祢音が助けようと焦るも、ジャマト軍団がそれを許してはくれず。
その間にナイトジャマトは、とどめの大技を景和に放ち、そして────
「景和ーっ!」
「トレーナーさんっ!!!」
命中する寸前…緑色の光が明滅する。
攻撃による爆炎が晴れると、そこには変わり身の術によって攻撃を回避した景和がいたのだった。
『TACTICAL SLASH』
『ぜああッ!!』
『ジャジャジャッ⁉︎』
「「「生き残ってるう(わ)っ⁉︎」」」
そして間髪入れずサボテンナイトジャマトを頭上から攻撃。スピーディーに立ち回る。
「どうなってやがる?」
「どうやらニンジャバックルが共鳴したみたいだな
「目的を果たすためなら自己犠牲も いとわない、タイクーンの忍びの心に」
先程英寿がニンジャレイズバックルを取り出した時、ニンジャバックル自身が彼のドライバーに装填される事を拒み、景和のもとへ飛んでいっていたようだ。
「言ったでしょ? 俺は倒れないって」
やってくれたものである。
当然ナイトジャマトも怒って追撃してくるが景和は攻撃を避け、場所が廃校なのを理由に校舎に飛び込む。
屋内にまで攻撃を放ってくるところを壁抜けで教室を矢継ぎ早に移動しながら回避していく。
「ッ、今だ!」
『SET』
『DUAL ON』
『NINJA & BOOST』
『READY FIGHT』
さらにタイクーンニンジャブーストフォームに。
ナイトジャマトの体の表面をそれまで以上の勢いで駆け抜け、体表上の棘を悉く斬り落としていく。
「皆、待ってろよ!」
『TACTICAL SLASH』
そして分離状態『ツインブレード』で使っていたニンジャデュアラーを連結させ『シングルブレード』に戻し、すかさず必殺技を発動。
手裏剣のように回転させたニンジャデュアラーに乗り、ナイトジャマトを切り裂き本体と思われる巨大サボテンへ瞬く間に跳躍する。
『NINZYA BOOST GRAND VICTORY』
「届けええええええぇェッ!!!!!」
「ジャジャアアッ⁉︎」
────刹那、へし折れる巨大植物。
必殺キックであるニンジャブーストグランドビクトリーが炸裂し沙羅やダイヤ、その他大勢の囚われた人々が解放された瞬間だった。
「誰か…今のうちに…」
しかしこの偉業を満身創痍のその身一つで成し遂げた代償か、もはや景和の体は限界で自分では缶を蹴りに行くことも満足にできそうになかった。
ゆえに3人に託したのだった
「タイクーン、任せろ!」
「勝つのは俺だ!」
それを受け英寿と道長は他に目もくれず缶に走りだす。
『盛大に…打ち上げだ!』
『ちょ待てギーツううう⁉︎』
「「「ぶっ!!」」」
(こ、こんな非常時なのにぃ…笑っちゃった)
そして間に合った英寿は道長ごと勢いよくライダーの脚力で蹴り飛ばすのだった。
しかしナイトジャマトは飛んだ缶をなおもキャッチしようとする。
「しぶといやつめ…だが甘い」
すると、祢音がサボテンナイトジャマトの体を足場にして駆けあがり…
「もっと飛んでけー!」
と、別方向に缶を蹴り飛ばし、無事ジャマーエリア外に缶は離脱。
「ジャジャ…⁉︎」
それを示すようにか、ナイトジャマトにノイズが走りすぐさま消え失せたのだった。
「倒した? え? 私の勝ち?」
「最初に蹴った俺の勝ちだ!」
「いや、蹴ってないだろ」
「それに、ゲーム終了のアナウンスがまだだ」
どうやらナイトジャマトは倒されたわけではないらしい。消えたにも関わらずだ
ジャマーエリアが消えてないことが関係しているのだろうか
そうこうしている間に息も絶え絶えに景和が合流。
変身解除すると、すぐさま頽れるように倒れてしまうも、沙羅とダイヤが駆けつけ、助け起こすのだった。
