💣ロゴ監禁SS
他の人のも見たいから皆書いて(強欲)最近めっきりSS書いてないから拙いところ多々あると思うけど許してください…
俺は個人的にヴィルンボの監禁SSが見たいよ(掛かり)
⚠無断転載・持ち出し・自作発言禁止⚠
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「ジャスタ先輩が、悪いんですよ」
ギシッとスプリングが軋む音。連なって鳴る金属音。
ベッドの柵に手錠で繋がれたジャスタウェイの上に、枷を付けた張本人が覆い被さる。
手錠の嵌まっていない左手も手首ごとシーツに縫い止められて、身動ぎ一つ満足にいかない躯を濁った瞳が焦点を震わせながら見下ろしている。
「俺から逃げるから」
最初はただの憧れであった。
一つ年上の、同路線の先輩。
休養中に中継で見た秋の天皇賞での覚醒に、心に彼の名前が刻まれて。
年が明けて初めて共に走ったターフの上で、本物の強さを目の当たりにして。
ドバイの地で、何もかも置き去りにして飛んでいく姿が脳に焼き付いて。
元来、壁は高ければ高いほど燃える質だった。
今は敵わなくても、いつかきっと。
世界で一番強いこのひとを超えてみせると。
かつての栄光が過去になりつつある中で、それがロゴタイプの心を支える標になっていた。
「一方的に俺の心を踏み荒らしていったくせに」
ぽた、ぽたと雨が降る。
昂ぶりを努めて抑えようとすればするほど、汗は吹き出し瞳孔は収縮を繰り返す。
異様な後輩を目下から見上げる彼は抵抗も反論もしない。
それが余計にロゴタイプの心を苛立たせる。
「凱旋門?ジャパンカップ?有馬記念? 何ですか、それ。何で? ねぇ、何がアンタの心を奪ったんですか? 勝つことよりもロマンを追う方が楽しかったんですか?
アンタに踏みつけられた俺達の思いを放って、好き勝手走って気持ちいい顔で終わるのはどんな感覚なんですか?」
掴んだ手首がギチギチと鈍い音を立てて、力を込められた場所から赤く変色を始めていた。
それでもなお、ジャスタウェイは眉根一つ動かさない。ただじっと、不気味なほどに自身を覆うロゴタイプを射抜く。
「認めない」
聞けば万人が是と答える、怨嗟の声だった。
恨み、悔い、怒り、悲哀、……どうしようもない愛。
渡すこともなければ当たって砕けることを願う機会すら喪われた感情の末路。
憎しみというには足りず、愛と呼ぶには歪みの目立つ欠陥的な情動。
走ることで愛を伝えてきたその人生に、もう二度とその機会が訪れないことを理解してしまった時。
少しずつ心を侵してきた黒い澱みが一気に自分の感情を理性ごと呑み込んだのを、ロゴタイプは他人事のように覚えている。
「なるほど、ね」
言葉にならない感情の雑踏を抱えてそれ以上の沈黙を選んだロゴタイプの耳に、久しく聞いていなかった声が届く。
閉じ込めてからそう長く経ったわけではないが、数日単位の短い期間でもない。
目を覚ましてすぐに状況を説明してやった時の、「そうですか」の一言以外、彼がここに来てまともに声を発した記憶は無い。
早々に心が折れたかと一瞬焦りはしたもののそんな様子もなく、話し掛ければむしろ微笑んで相槌の代わりに頷く彼の姿は、今思えば恐ろしく異様なはずだった。
絡んでもつれて不覚になっていた脳がたった一声に切り裂かれて、霧散して、熱が引いてクリアになっていく。
揺れる瞳孔がやっと焦点を合わせて、眼下から自分を射抜く一対の黒曜と交わって、
「…っ、ひ…!?」
あまりにも深く底の見えないその色に、本能がけたたましく警鐘を鳴らした。
思わず背を反らして飛び退こうとした隙を逃さず、拘束の緩んだ左手がするりと抜け出して反対にロゴタイプの手首を掴む。
勢いのままに引き寄せられて間近に深淵を湛える瞳を見せつけられて、ひゅ、と喉が鳴った。
先程までの体勢から少し身体を起こしたぐらいの違いでしかないのに、
閉じ込めたのは自分の方なのに。
どうして、『囚われた』なんて錯覚が起きる。
「こんな大それたことするぐらいだから、君の気持ちが尋常じゃないことぐらい。僕だって気付いていましたよ」
するりと細い指先が頬を撫ぜていく。
ドバイで初めて掲示板を外して、まだ幼い心が抜けきらずに無力さと後悔とで溢れた涙を拭ってくれたあの時の温もりが。ほんの一瞬過ぎって。
けれどその時よりも明らかな熱を孕んでいることを嫌でも理解してしまって、すぐに現実に引き戻された。
「ただね、その重さがどの方向に向いているのかずっと図りかねていて。君が僕を殺したいほどに憎んでいるなら、それも喜んで受け入れようと思っていたんですよ」
ジャラ、と鎖を伴って伸びてきた右手に首を撫ぜられて、指先だけをゆっくり折るその仕草に締められてもいない喉が独りでに閉じて、息が苦しい。
焦らすようにゆっくりと開く口の動きがどこか遠く見えるのに、少し目を逸らせば視界に入る黒々しいドロついた瞳は見つめれば見つめるほどに近づいてくるような気さえした。
「でもね」
少し力を乗せられただけで、呆気なく後ろに倒れる身体。
先程自分がそうしたように軽々と覆い被さってくるジャスタウェイの、彼を拘束していたはずの鎖が途中で切れて所在なくぶら下がっているのを視界の端で捉えて、ロゴタイプは絶望とも、観念とも取れるように呻いた。
「さっきの君の言葉は、僕に向けた瞳は、感情は。
殺意なんかじゃ足りない、重くて暴力的で、でもどこまでも一途な僕への愛のプロポーズと。
そう捉えてもいいんだよね?」
ねぇ、ロゴくん。
柔らかく丁寧な言動を心がける彼の、敬語の取れた問いかけに滲む確かな熱い息遣い。
深淵の黒をきゅうと圧縮して、存在ごと吸い込んで取り込んでしまいたいと切に訴えてくるように見下ろす双眸。
逃げ出そうと藻掻くたびに、折ることも厭わないほどの強さで抑えつけてくる両の手。
数分前に自分が彼にしていたことをそのまま、何倍にも何十倍にも肥大化して返されて、ロゴタイプは自分の軽はずみな衝動を後悔──
────したのは本当だったが、今この状況にどうしようもなく興奮して、高揚に震える息を吐いたのも揺るぎない事実だった。
見つめる先の双眸がじわじわと自分と同じ色を帯びていくのを見て、ジャスタウェイは目を細める。
未だ浅い吐息を繰り返す唇に辛抱ならないとでも言いたげに噛み付くようにキスを落として、少し乾いた縁をマーキングするように舌でなぞった。
「ずっと一緒にいましょうね」
陳腐な言葉と常と変わらない笑顔、けれどそこに込められた狂気的な溺愛を真正面から思い知らされてしまったから。
同意を示す代わりに、最後のなけなしの意地でロゴタイプは自分からジャスタウェイの唇を奪った。