9.Monster and a Enlist
1841年4月上旬
▼都
事件当日のSAN値チェックdice1d100=1
▼幼女
???dice1d100=22
???dice1d100=93
窓辺から朝日が差し込む。
都は瞼を震わせ、重たい体を持ち上げる。優しい陽気が肌を温める中で、その心中だけが霧がかったように醒めないでいた。
「…………」
もう、六年も前の事になるのか。記憶も大分あやふやになってきた。それなのに何故か、あの子の顔だけが忘れられない。
————返り血のついた頬を朱に染めて微笑む幼子。人が死んだ直後であった筈なのに私はそれにただ、"嬉しい"と、それだけを思っていたのだ。
……いいや。実際はそんな出来事など起こっていない。その場に居た他二人の証言によると、私は南郛外区の村長が殺される前に間者の手によって昏倒させられ、救助が来るまでの間、意識を取り戻さなかったのだから。
なのに何故だろう。
あの子が霊術院に通って居た一年間、事務的な会話しかした事がない筈なのに。どうしてか。今直ぐあの子に、"会わなければならない"と、そう考えてしまうのだ——————

穏やかな日差しと鳥のさえずり。まだまだ冷たい春風が柔らかな少女の髪をそよがせて、草花をそっと撫でていく。
今、都が立っているのは護廷十三隊隊舎の門前。年季の入った木造の門に掲げられた『十三番隊』の標札を見上げた後、背を伸ばして再び歩き出す。
門番の隊士に促され本道を進むと、隊舎から十二歳程の少年が顔を出し都を出迎えた。
「よ、都! 一番乗りだな」
「海燕さん! お久しぶりです。以前にも増してお元気そうですね」
「おうよ。もう三年目だからな、慣れたもんさ。今年から新入隊士の案内も任されてんだ」
「それはとても心強いですね。お世話になります、志波十三席」
本当に信頼を寄せているのだと分かる真摯で温かな都の声に、海燕は照れ隠しなのか顔を逸らすと「おう任せとけ!」と務めて明るく言い放つ。
都はそれに「はい」と淑やかに頷くと海燕のあとに続いて長い廊下を歩き、座敷のひとつに通された。
その後すぐに他の新入隊士も到着し海燕からの激励を受けると、都達は護廷十三隊隊士として最後まで殉ずる宣誓を行った。
尸魂界と仲間達の為に戦うと誓うその宣誓文は、十三隊の成立直後は『霊王とそれを支える五大貴族』へ忠誠を誓う文言だったと云う。新入隊士の一人にそれを問われた海燕はどっと笑った後、「仲間の背中を護れ、それが護廷だ」と優しく微笑んだ。
そうして都達は隊舎の案内と明日一日の業務を説明された後、即応できる様に練習しておけと言われ宿舎へと放り込まれたのであった。