4747車中記
H保守あれから。
つまり72号が入院して退院し、そしてヒナ委員長と私――4747号と一緒にゲヘナへ帰還して数日――。
相変わらずゲヘナは"静か"なままでした。
これは、過去のデータからすると、ちょっと異常です。毎日毎日誰かしら捕まって、牢屋に入れられていますからね。
まぁでも、平和で――"静か"でよかった、と思います。溜まった仕事は減りますし、それに"静か"でなければ外出できませんから。
なおゲヘナ風紀委員会において"静か"とは、ヒナ委員長が出撃していない日のことを指します。
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今日は快晴。それからときどき遠くで銃撃音。いつも通り、平和です。
4747号は、運転席から空を眺めていました。
今日は万魔殿で会議です。ヒナ委員長とアコが出席しました。
4747号は送迎担当です。もちろん車です。だから運転席にいるのでした。
実は風紀委員会のビルから万魔殿の建物は歩いてすぐ、という距離にあります。車で行く必要はありません。
ですが直前になって急に、万魔殿から車で来るように要請が来ました。みんな仕事で忙しかったので、4747号が運転手をしました。
これが万魔殿からの嫌がらせです。こういうことはよくあります。
例えば、今回のように車で行ってみたら風紀委員会だけ車だったとか、ガソリン代にケチを付けられたとか。
……まぁ今回は「そういうことは」ありませんでした。万魔殿の無駄に立派な建物の玄関、もとい車寄せには、万魔殿のエリート儀仗兵がずらっと並んでいて、私たちを出迎えてくれました。
アコがびっくりして固まりました。珍しく戸惑っていました。そして停車すると、儀仗兵の内の一人が車のドアを開けて、ヒナ委員長とアコをエスコートしていきました。
(後に聞いた話だと、本来はこうするのが正式らしいのです。が、あのバカマコトが無駄を嫌って省いたのだとか。いいところもあるんですね……?)
一方の4747号は、すぐ目の前にある駐車場に回されました。駐車場に入ってすぐの、万魔殿の建物に一番近い場所に停めるように指示されます。
……これも地味な嫌がらせでしょうか。端というのは地味に駐車しにくいのです。
まぁ4747号は、というか量産型アリスは、専用に調整されている車であれば、手足のように動かせるため、全く問題はないのですけどね。
そして量産型アリスが1人で車の番をしている――という状況になるわけです。
……普通こんなことをしたら、どこからか湧いてきた不良に誘拐されて、とんでもないことになります。
今回は万魔殿の警備員の皆さんがいるから大丈夫でしょうけど、それでも心細いです。
……会議。早く終わらないかなぁ。
その後は、警備員の人たちとおしゃべりしたり、頭をなでられたりしつつ、4747号は待機しているのでした。
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今回のオチ、というかその後のこと。
数時間後に、会議が終わったということで4747号は車を回しました。
再びエスコートされてきたヒナ委員長とアコを車に乗せ、車を発進させます。
ヒナ委員長が車が動き出したのを確認してから、ポツリと言いました。
「……万魔殿が今回の予算要求を全部飲んだ」
「そうですよねヒナ委員長。あいつら毎回変ないちゃもんを付けて私たちの要求を退けてるんですよね。今回も――え?」
ってええええええええええええええ!!!???
「ウソではありませんよ4747号。私たちの予算案は全て承認されました」
「ってことはアコ……行政官、もしかして私たちが申請した量産型アリス用の予算も……?」
「……あなたたちのお菓子代も通、り、ま、し、た、よ」
ウソでしょう?主張するために敢えて乗せて……どうせ通らないと思っていたのに!
「……とりあえずよかったですね。これでしばらく安心ですね」
「4747号。違うわ」
「ヒナ委員長?つまり?」
「マコトがやけに素直なときは、絶対に何か企んでる」
「……いやそのヒナ委員長。職務を果たしただけ、ということはないんですか?」
「もちろんそれがいいのだけれど。……4747号。いつ何が起きてもいいように、備えをしておくよう、アリスたちみんなに伝えておいてくれる?」
ヒナ委員長は優しい声音で言っていましたが、同時に怖くもありました。
何が起きてもいいように――って何が起きるんですか!?
改めて今回のオチ――平和というのは次の事件への準備対策期間でしかないのかもしれません!
うわーん!
登場人物
4747号、ヒナ、アコ、万魔殿エリートモブ