18話前後のラウスレ付き合い初め
ヒマナッシオ・ボンビーナ「一日三回メール?」
グっとラウダの眉間に皺が寄るのを見てスレッタは慌てて弁解した。
「いえっ!そのっ!例え話です!その、何か私にして欲しいこととかあったら言って欲しいな、って」
「別に特にないけど……」
「そう、ですか」
しょぼくれたスレッタにラウダの皺が深さを増した。落ち込ませたいわけではなかったのに。
「……その一日三回ってミオリネか?」
「あ、はい。そうですね」
苦い名前に、ラウダの声がつい硬くなる。
「言っておくけど、昼休みは大概返信する時間は取れないぞ。朝も忙しい日は無理だ」
「え、返事ですか?」
「?なんだその顔は。メールには普通返事するだろ」
きょとん、と丸まったスレッタの目が不自然に泳いだ。
「いえ……そういえば、ミオリネさん返事くれなかったなって」
「……まさか、一度も?」
ラウダの低い声にスレッタは弁明する。
「あのっ!約束したその日が、クエタのあのテロの日で、そのすぐ前で!ミオリネさん、お父さんのことで大変で!」
「それにしたってしばらく返信できないとか、何か一言あって然るべきだろ。……僕だって友人知人全員には連絡返すの無理だから、カミルにそう伝言頼んだんだし」
「あの、私、別に気にしてないですから」
取り繕った笑顔のスレッタにラウダの怒りは余計に煽られる。むしろ、気にするべきだ。ミオリネに怒って然るべきなのだ。スレッタは。
「――いいか、蔑ろにされるのに慣れるのは止せ。慣れきったらそれこそミオリネみたいに逆に他人を平気でないがしろにするようになるぞ」
「別に、蔑ろにされてたわけじゃ、ないですから」
俯きながらそう返してきたスレッタに、潮時かな、と話題を変える。性善説で生きてるスレッタとミオリネ性悪(しょうわる)説信者のラウダではかみ合わないことは嫌ほど知っている。
「……メール、回数は自由でいいだろ。お互い無理のない範囲でな」
「はい」
「――あと」
「?」
首を傾げたスレッタの手を取る。指を絡める。かわいい恋人。どこに触れても温かくてやわらかで。
「僕は百回メールするより、一回顔を合わせて話した方が安心する」
「!はい、私もです!私も、ラウダさんとおしゃべりしたいです。……ラウダさんのこと知らないこといっぱいだから」
えへへ、と表情を明るくして笑うスレッタに、ラウダは目を細めた。
(――ああ、愛しいな)
大事にしよう。宇宙で一番。今までミオリネに、或いは誰かに傷付けられた分だけ、ラウダがいっそう。
そう、ラウダは心に決めて、手始めに、今夜送るメールの文面を考えた。