1人と1羽
制服のまま眠ったアサは目覚めると、昨夜の記憶を思い返す。担任と委員長を殺したのだ。夢かとも思ったが、自分そっくりの女が現れて、それを否定した。この女は脳が見ている幻で、手で触れる事はできなかった。
食事をして学校に行く事を命じた女は戦争の悪魔。死んだアサの身体を貰い、彼女に命を与えた悪魔は、未だに体の自由がある事に疑問を抱いたアサに対し、「お前の脳ミソを半分残しておいてやった」とふてぶてしい態度で言った。人間社会を知らないので、アサに表に出ていてもらった方が潜伏しやすいらしい。
「なんでそうまでして学校に行きたいの…?」
「学校に通いたい訳ではない。チェンソーマン…お前らがいうところの電ノコ男の最新の目撃談がこの近辺なんだ」
「え…?」
「電ノコ男がココに居れば話が早いんだがな…この学校を中心にして、ヤツの捜索を始める」
説明を聞いていたアサだったが、校舎を見ていると気分が悪くなってきた。従わないなら脳を全て奪うと悪魔が脅すが、アサは学校に行く気にならない。
公開処刑される罪人を見る野次馬のようなクラスメイトの目。罪人なら死ぬが、アサは違う。恐ろしい朝が来る度、あの目の中に入っていかなくてはならないのだ。
「おい!聞いてるのか!?死ぬんだぞ!」
「しっ、死んでも…入りたくない…!」
「メンドくさっ!」
アサが校門の前で立ち止まっていると、男子生徒が声をかけてきた。

自分を心配しているのか、保健室まで連れていくべきか男子はアサに尋ねてきた。男子から電ノコ男についての情報を得ようとする戦争の悪魔をアサが注意すると、男子が反応した。口に出ていたようだ。痺れを切らした戦争の悪魔が体の主導権を奪う。
アサの体を奪った戦争の悪魔は、男子に電ノコ男を見たことがあるか聞いた。動いている自分の身体を第三者の視点から見る。この体験に驚愕するアサの前で、男子は悪魔の質問に答えた。転校生らしく、詳しくは知らないらしい。
「デビルハンター部が、電ノコ男を探してるとかいないとか…」
「ふ〜ん…ふんふん…」
戦争の悪魔は、目の前の男子をしげしげと見る。品定めを済ませた悪魔は、男子に「私の彼氏にしてやろうか?」と質問した。男子は特に反応を示さず、淡々と断った。
驚愕したアサは戦争の悪魔に詰め寄る。悪魔は男子に一目惚れした訳ではない。戦争の悪魔には自分のものを武器に変える力があるため、あの男子が自分(身体はアサなのだが)に惚れれば、あの男子を武器に変える事ができる。
「私はできるだけたくさんの人間を武器にしたいんだ。チェンソーマンと戦争するためにな」
戦争の悪魔の発言に危機感を覚えたアサは、デビルハンターに相談しようと考える。しかし、脳を共有している為にアサの考えは、戦争の悪魔に筒抜けだ。戦争の悪魔はアサに釘を刺すと、デビルハンター部に入るようにアサへ命じた。
「チェンソーマンに勝てたら体を返してやる。だから協力してくれるよな?」
「協力する…から!体っ…絶対返してよ!」
アサはデビルハンター部の入部試験に向かった。先輩の演説が始まり、3人1組で街をパトロールして1週間以内に悪魔の死体を持ってきた者達の入部を認めると集まった入部希望者達に説明された。
3人組が先輩部員によって振り分けられ、アサは眼鏡の少女と校門で話した男子と同じ組になった。