黒歴史SS 2部-③

黒歴史SS 2部-③

VS王直


「うっぐぁああああ!!!!」

王直に踏みつけられ能力を発動させられてしまい、ローはその身を直接ドシドシの実によってとてつもない振動を与えられていた

ドシドシの実はたった一度の能力発動だけで地形を変えてしまう異次元の強さを持つ悪魔の実

そんな威力の技を食らってしまったらいくらローとてタダでは済まない

「ローさん!!!!」

「うっ……ぐ……」

「……しまった。やりすぎてしまったか」

もはや声も出せない程にダメージを負ったローに対し王直はやりすぎてしまったことに気がつく

殺してしまったら意味が無いのでローから足を退け、ローの首を掴んで持ち上げる

そしてギリギリと気道を締めて酸素不足にし気絶させる手を選んだ

「くっ……そ…!」

「これで終いだ。今度こそお前を連れ帰る」

ローは息苦しさから自分の首を掴み上げる王直の腕を剥がそうと試みる

だが数多のダメージ、酸素不足のせいで足りない力

締め上げる手の強さは弱まるどころかどんどんと強まっていく

少しずつローの力が抜けていき瞼が降りる

(ヤバい……落ちる……!)

気を失う、そう思った瞬間ローの耳にチリンと不思議な音が聞こえた

降りかける瞼を震わせながら少し目を開くロー

音が聞こえた先は地面に落ちている鬼哭から聞こえてくる

鬼哭はまだチリンチリンと哭き続ける

まるで、誰かを呼ぶように

そして"彼"は答えてくれた

『ロー』

懐かしく、大好きだったあの人の声が聞こえてくる

幻聴なのだろうか、それとも走馬灯?

どちらでもいい

どうせもう助からないのだから

『諦めるなロー。お前ならきっと何とかできる。こここで捕まったらお前が叶えたい夢を誰が叶えるんだ』

『戦え、ロー!!!!』

その一言にローは目を見開いた

そうだ。こんなところでやられる訳には行かない

おれは!!!こんな道半ばでやられる訳には行かねぇんだ!!!!

その瞬間ローから吹き荒れる黒い稲妻

王直は目を見開いて驚きから手を離してしまう

「なんだ……。この力は。まさか……!"素質"があるというのか!!!」

「今の力……。もしかして!!!」

王直はローの中に宿る一つの可能性に困惑を隠すことが出来なかった

今まで覚醒する予感も、いいや。そもそも素質を感じなかったのだ

なのに何故今更……!!!

「鬼哭……!」

ローはいつの間にか傍に来ていた鬼哭を掴み上げる

上手く出来るのかは分からない

けれど、頭が、心臓が、第六感が、使えと訴えかけてくる

これに答えるなら、いつ答える

それは……今だ!!!!


「K…ROOM!!!!」

ポワンとローの右手に小さい水色の玉が浮かび上がってきた

これはローの使うROOMだが、これは前のROOMなのではない

「アナス…スィージャ……!」

KROOMを鬼哭に纏わせ、鬼哭が水色と黄色の光に輝く

それだけではない。本来なら伸びるはずのない鬼哭がどんどんと伸びていく鬼哭

息を切らしながらもローは王直を睨み続ける

そうしてローは長く長く伸びた鬼哭を王直に突き刺した

「な、んだ……これは……!"痛みがない"!?」

普通ならば痛みを感じるはずなのに、一切痛みが来ない……?

こんな能力聞いたことも見たこともない

まさかこれは……!

「随分と痛みつけてくれたなァ!!!!その礼、たっぷり返してやる!!!!」



「衝撃波動(ショックヴィレ)!!!!!」



血を吐き出し仰向けに倒れる王直を息を切らしながら見下ろすロー

鬼哭は既にいつもの姿に戻っており、先程のことは幻なのかと錯覚しそうになるほど全く変わらぬ姿

コビーは唖然とただ見つめることしか出来なかった

あんな力、見たことも聞いたこともない

そしてふと、己の師匠であるガープの言葉が頭によぎる

『能力者には稀に"覚醒"と呼ばれる次のステージに上がることがある。このまま海兵を続けるならいずれ覚醒者に出会うことになろうて。覚えといて損は無いじゃろ』

(まさか、あの力は……!)

だがオペオペの実の最大の弱点である使えば使うほど体力を消耗する

これは覚醒することで更に顕著になる

そのため既に消耗しきっているローならばたった一発覚醒技を放つだけで限界が来てしまう

「うっ……!」

グラりと世界が歪み地面に倒れてしまうロー

コビーはハッ!としてローに駆け寄った

「大丈夫ですか!?ローさん!!!」

「クッソ……!なんだこれ、立ち上がれねぇ……。それに、さっきのは……」

(……!もしかして、ローさん。覚醒のこと知らないのか?)

ローの口ぶり的に恐らく覚醒のことを知らないことを察し、説明しようと口を開く

けれどゾクリと背筋を凍らせる殺意に塗れた気配がした

ローもコビーも顔を青ざめ、その場に固まる

「よ、くもやってくれたな……!まさか、このタイミングで覚醒するとは!!!」

二人は顔を動かさない。否、動かせない

ビリビリと頭を抑えたくなるような強烈な憤りを感じる覇王色

奴の憤りと連動するかのように揺れが止まることがないバトルフィールド

動くことが出来ない二人に一歩一歩静かに近づく王直

それでもまだ、戦うことを選択する

ローは震える体に鞭を打ち、鬼哭を杖にしてまた立ち上がった

「ローさん!そんな体じゃもう……!」

「それが……!どうした!こんなところでもう終わるつもりはねェ!!!おれはまだ……!やらなきゃ行けねぇ事がある……!」

その言葉にコビーは目を見開く

そうだ、自分もまだ生きてやらなきゃ行けないことが沢山ある

こんなところで死んでたまるか!!!

「ほぅ?まだ立ち上がるか……。いいだろう!その勇気を称え、全力で叩きのめしてやる!」

正直もう戦う気力も体力も力も残っていない

強がっているだけでもうアイツを止めることは出来ないことは二人がよく知っている

でも死ぬつもりは毛頭ない

だがそれは相手も同じこと

ローの覚醒技による内部破壊で王直も死にかけ

勝つ確率は先程よりも上だ……!

「来るぞ!」

「はい!」

王直が再び地面を踏み鳴らし揺れ動く大地

だが、ここにいるのは二人だけでは無いということを王直は失念していた

まだまだ荒削りだが素質のある原石はコビーだけでは無い

あの七光りは今、どこにいる?

人間は焦ると視野が狭くなるものだ

普段なら失敗しないことでも焦りから失態することもある

だからこそ、戦っている時こそ冷静でなければならない

そんなことを忘れてしまうぐらい、王直は追い詰められていた

パァン!と火薬が弾ける音が辺りに響き王直は脇腹に埋まる弾丸を確認し、目を見開く

銃声が聞こえた場所に目を向けると、そこにはガタガタと震えているものの気丈にこちらを睨みつける金髪の男

王直は邪魔者を排除しようとするが、出来なかった

ガタン!と全身から力が抜け膝を着いてしまう

目を見開きながら瞳孔を揺らす

この感覚は覚えがある。まさかこの弾丸は……!

「ど、どうだ!その弾丸は"海楼石"の弾丸だ!いくらお前でも、悪魔の実の能力者なら一溜りもないだろ!!!」

「やはり海楼石か……!」

金髪の男……"ヘルメッポ"は王直が能力を発動させたあと、ひたすらに隙を伺っていた

自分が戦っても勝てないことが明白だったから

けれど、必死にみんなが戦っている中自分だけ逃げ出すなんてこと、出来なかった

だからひたすらに隙を伺い王直の警戒が緩んだその時を狙う

今回支給された海楼石の弾丸はたった一発だけ

海楼石はその頑丈さから加工が難しいとされている

だから今回海楼石の弾丸が支給されたのは運が良かった

この一発は必ず当てる

ヘルメッポはようやく生まれた隙に引き金を引いた

「ヘルメッポさん!?いままでどこに……!」

「へっ!お前だけにいい格好はさせないぜコビー!!!」

「く、そ……!」

ヘルメッポの勇気の一撃に今度こそ、王直は敗れた

一人では出来ないことも仲間とやれば勝つことが出来る

それは海兵も、海賊も同じこと

ロッキーポートによる乱戦の末、勝者ロー、コビー、ヘルメッポ

そして決着が着いたのはこの三人だけではない



「ウィーハッハッハッ!にしても運が悪かったな!自然系能力者が覇気使いにぶつかるなんてな!しかもお前はまだ覇気を覚えたてで使いこなせてねぇ。おれはまだ能力を使ってすらないぜ」

「はっ……!確かにテメェの言う通りだ……!だからって黙ってやられるほどおれは人間出来てねぇんだよ!!!!」

そう言ってスモーカーはバージェスの視界いっぱいに煙を展開させる

バージェスはヤケになったかと思い再び腕に武装色を纏う

「おいおい!覇気使いにそんな能力ひけらかしちゃあ、痛い目見るってお前も知ってるよな?こんな風に……なっ!?」

バージェスは武装色を纏った腕を煙に向け思い切り叩きつける

パン!と確かに感触はあった

けれど、先程までのものとは明らかに違う

バージェスは目の前の光景に密かに目を見開く

そこには

「ようやく引っかかったな……!」

敢えて的を増やし、相手を油断させることで力の分散をさせるスモーカーの作戦は見事に成功し、バージェスの拳を握り締め、ギリギリとお互いの力が均衡し冷や汗をかく

けれど、こうなってしまえばスモーカーの方に軍配が上がる

何故ならば

「おれは煙そのものだ。こうして拳を掴まれてるテメェじゃあ!!!もう動けねぇよな!?」

「しまっ!?」

いつの間にか背後に回っていた煙に気が付かなかったバージェスの隙をつき、スモーカーのもう一つの拳がバージェスの横腹に叩き込まれた

「ガハッ!?」

だか腐っても四皇幹部

すぐさまスモーカーを振り払い距離を取り、油断していたとバージェスは少し後悔をした

ならば今度は本気で叩き潰すのみ

互いに構えを取るがバージェスは撤退を余儀なくされる

「……!あれは!」

「おいおい……!冗談キチィぜ王直さんよォ……!!!」

バージェスは王直がやられたところで気にしなくてもいい

けれど己の目的はスモーカーを殺すことでは無いのだもう少し楽しみたかったが、ここは撤退するか

「ウィーハッハッ!もう少しお前と遊びたかったが話が変わった!このまま逃げさせてもらう!じゃあな!お前との戦いは楽しかった!また会おうぜ!」

「おい待て!!!」

バージェスVSスモーカー

勝者、スモーカー……?


「ケホッ!もう終わりか……」

「ホホホ。ですが私たち相手によくやったものですよ」

そうやって二人が見下ろす先には傷だらけで倒れふすヒナとTボーンの姿

ピクリともしない二人に「もう無理だろう」の背を向け王直の元に向かおうとするドクQとラフィット

だがその瞬間、ピクっとヒナの指が動いた

「!?」

ガチャン!とラフィットの足首に重い音が響く

二人が目を向けた先には細長い檻を巻き付け、不敵に笑うヒナの姿

そのせいでこれ以上飛べなくなったことにラフィットは密かに眉を顰める

「に、がすわけないでしょう……!?」

「ホホホ!まさかまだ生きてるとは!」

面倒なことになったとドクQは能力を発動しようとしたが、ヒナの横にいたはずのTボーンが居ないことに気がつく

「アイツ、どこに……!?」

「直角飛鳥・ボーン大鳥!!!」

真後ろから聞こえた声と、とてつもない圧

油断していたからかモロで技を食らってしまったドクQ

だが四皇幹部に叶うはずもなく、少し血を吐かせた程度

それでも一矢報いることが出来た

「ホホホ、してやられましたね。ドクQ」

「ケホッ!……雑魚だからと油断したな」

まだまだ続くかと思われた戦いも、終わりの鐘が鳴る。突然の轟音が辺りに響きわたり、そこに目を向けて目を見開く

何故ならば王直がその場に倒れ伏していたから

二人は不味いと思い、即座にその場から離れる

「急用が出来たので私たちはここで……。思ったよりは楽しめました。また会えたら会いましょう」

「ケホッ!これもまた巡り合わせか……」

ラフィットは自身を拘束していたヒナの檻を叩き切り、ドクQと退散する

「あ、待ちなさい!!!」

「まだ戦いは終わってません!!!」

ラフィット&ドクQVSヒナ&Tボーン

勝者ヒナ&Tボーン……?


「トープトプトプ!おれら相手にようやるの〜」

「そうさねぇ。てっきりもうやれるかと思ってたんだがね」

「あまり海軍中将を舐めるなよ」

モモンガは多少傷は付いていてもスモーカーやヒナ、Tボーンよりかは大したことがなく本部海軍中将の強さがよく分かる

そしてモモンガが大した怪我をしていないのと同様にバスコショットもデボンも致命傷となる傷は一つも付いていない

この三人の戦いはただ平行線で進んでいた

バスコショットの能力は能力者に対しては有利になれるがモモンガは生憎能力者ではない

デボンの能力はお世辞にも戦闘向きでは無いことから二対一で相手にしていてもモモンガはまだ生きていられている

これがシリュウ相手なら簡単に行かないだろう

「もうしつこいんじゃ!とっとと沈んじまえ!」

痺れを切らしたバスコショットは能力を展開し巨大な酒の塊を作り出す

デボンは念の為バスコショットから離れ、けれど何時でも追撃できるように待機する

だがモモンガはそれにも動揺せず、ただひたすらに気を伺っていた

「だから言っただろう。海軍中将を舐めるなと」

ブォンと武装色を纏ったモモンガの剣は巨大な酒の塊ごとバスコショットを斬る

まさか突破されるとは思わなかった二人は目を見開いて硬直した

けれど腐っても四皇幹部

切られる前に武装色を薄く全体に纏ったおかげで多少血が出たもののほぼ無傷

結局は振り出しに戻るだけ……のはずだった

「「「!!!」」」

上の方から鳴り響く凄まじい轟音

デボンはそれは王直の敗北の合図だと見聞色から感じ取った

故にバスコショットの首根っこを掴み飛び上がる

「!待て!!!まだ終わってない!」

「そっちは終わってなくてもこっちはもう終わったんだよ!ほら、いつまでも酔っぱってないで行くよ!」

「トプ……。もっと酒飲みたいのぉ……」

バスコショット&デボンVSモモンガ

勝者、モモンガ……?


『世界政府と天竜人を無くす?』

酒を煽りながらロックスにそう聞き返す白ひげ

他のメンバーも大方似たような反応でキョトンとしている

『ああ。全ての不幸の元凶は世界政府と天竜人だ。おれは世界政府によって不幸になる人を減らしたい』

『世界政府と天竜人がいなくなったらきっと不幸の連鎖は止まるはずだ』

そう言ったロックスの目は据わっていて彼が本気でそう思ってることが分かった

クルーたちは全員目を見合わせ、ドっと大笑いする

『グラララララ!!!ロックスらしい考えじゃねぇか!』

『世界政府と天竜人を無くす!?相変わらずイカれた野郎じゃないかい!』

『ジハハハハハ!!!最高にハチャメチャでいいな!流石はロックス船長だ!!!!』

そうやって笑う彼ら彼女らは心底楽しそうで、己の船長の人柄に、どうしようもなく惹かれていた

そう。この心優しいロックスだからこそ自分たちはついて行くと決めたのだ

だから彼のために命をかけてもいいと決めたのならば、このイカれた幻想も叶えてみせよう

『その天竜人って奴を皆殺しにしてやればいいのか?』

唯一この話の事の重大さを理解していないカイドウは一番単純な方法かつ、一番恐ろしいことを口走る

ロックスはそんなことをするつもりは無いのでカイドウの言葉に焦り慌てて弁明した

『違ェよカイドウ!おれは確かに世界政府を無くしたいけどそんな物騒なことはしたくねぇんだ!』

『世界政府と天竜人無くしたいって言ってたくせに甘ェな……』

呆れたように言う白ひげはグビっとまた酒を煽った

シキは相変わらず楽しそうに笑うだけ

カイドウはロックスのためを思って言ったのに何故こんなに慌ててるのか分からなくて頭を傾げる

『マーハッハッハッ!!!確かにその方がいいかもねぇ!!!』

『物騒!!!ずっと思ってたけどお前ら全員物騒だな!!!』

『ジハハハハハ!何言ってやがる船長。おれらは海賊だぜ?物騒でなんぼ!寧ろ喜ぶべき言葉だ』

『もうヤダお前ら!おれはお前たちをそんな物騒な子に育てた覚えはありません!!!』

『?別におれはロックス船長に育てられてないが』

カイドウのその言葉に一瞬静まり返り、この場にいる全員ドっと吹き出す

ビックマムがカイドウの頭を撫で回し、ロックスが涙を流すぐらい笑っている

カイドウは頭を撫でてくるビックマムの手を振り払おうとしているが頬が紅潮しており満更では無いのだろう

白ひげは心底楽しそうに戯れる三人を見て微笑ましげに笑いまた酒を煽る

シキは胡座をかいてカイドウをからかい、怒らせていたがそれでも楽しそうに笑っていた

そこには、幸せが満ちていた

『……平和だな』

王直がそう呟いていたのをロックスはちゃんと聞いていた

ロックスは王直を輪の中に引きずり込み、王直ももみくちゃにされる

普段は仏教面で滅多に表情筋が動かない王直の口角が少しだけ上がった

幸せだった。そう幸せ"だった"

膝をつく王直の脳裏によぎる、己が敬い慕っていたロックスの死に様

血に塗れ息も絶え絶えなのに笑顔を絶やすことなく逝った船長の姿

ロックスが死んでからかつてのロックス海賊団の姿はどこにもなくなり、元クルーは顔を合わすだけで殺し合いをするようになった

中にはロックスの望みを歪んだ形で叶えようのする者も

王直はただ、ロックスの願いを叶えたかっただけなのだ

だからこそ黒ひげと組んだ。組んでしまった

生前のロックスの望みを叶えるために

だから……

「おれは……!今更止まるわけには行かない!!!!」

海楼石のせいで体を動かすのも辛いだろうに王直は立ち上がる

ローたちはまさか立ち上がるとは思っておらず目を見開いた

「クソっ!どれだけタフなんだアイツは……!」

「ヘルメッポさん!やれますか!?」

「あ、当たり前だろ!」

血を吐きフラフラになりながらも抗う姿はいっそ哀れに思える

けれど諦めたくなどない

どんなに惨めだろうと、どんなに苦しくても、止まることは許されない

「そこを、どけ!!!」

だが唐突に王直の足元に果てしない"闇"が現れた

その闇は王直を飲み込まんと渦巻き、王直は為す術なく闇に引きずり込まれる

王直は"黒ひげが自身を裏切った"と嫌でも察してしまった

「裏切ったなァァァァァァ!!!黒ひげェェェェェ!!!!!!」

そう咆哮しながら、ついに闇に全身を飲み込まれた王直

そこに黒ひげが現れ、ニィッと不気味に笑う

「……ゼハハハハ。何言ってやがる王直」

────"海賊同盟には裏切りが付き物"だろう?


「な……」

「何が起こったんだ……?」

「あの二人は味方のはずでは……!?」

目を見開いてその場に固まることしか出来ない三人

見方を変えれば王直から三人を守ったとも思えるが相手はあの黒ひげ。それはないだろう

しかも二人は何やら味方のようだった

なのにどうして……

「ゼハハハハ!ようロー。まさかお前が王直をやるとはな。今頃やられてると思ってたがどうやって倒した?」

「……」

「……まぁ教えるわけねぇか」

ローは固く口を閉ざし話を聞かない姿勢をとる

そもそもロー自体どうやって倒したのか分からないのだ

例え教えようにも自分が分からなければ話しようがない

だが黒ひげはローが手の内を明かすわけもないかとパリパリと頭を搔く

「まぁいい。目的は果たしたんだ。ここに用はない。出来たらお前も連れて行きたかったんだが……。この様子だと無理そうだ。じゃあなロー!また会おうぜ!!!」

「ウィーハッハッハッ!!!結構楽しめたな!」

「……おれはここに来なくても良かったかもな」

「ホホホ。まぁまぁ。見てるだけでも楽しめたでしょう?」

「ケホッ……いい暇つぶしにはなった……」

「トプ、もっと遊びたかったんじゃ〜」

「女の方をコレクションしたかったんだが仕方ないね」

「おい待て!!!!」

黒ひげは幹部たちを引き連れ退散していく

それを慌てて追いかけようとするも数多の怪我に体力の限界が来たことでローはその場に崩れ落ちた

「ローさん!!!」

「おい大丈夫か!?」

コビーとヘルメッポはローの方に気を取られてしまいそのまま黒ひげたちを取り逃してしまう

だがそもそも戦闘をしていても二人だけだと為す術なく殺されだけだ

二人はローを出来る限り応急処置したあと離れ離れになってしまった四人と再開し、その後海軍本部に戻った

ローは一週間立ったあとも目覚めず、コビーとヘルメッポは己の未熟さを再確認し訓練に明け暮れる日々

一方海軍元帥であるサカズキは提出された書類を読む


───────

ロッキーポート事件

我々は元ロックス海賊団メンバーである王直が潜むとされているロッキーポートへと向かった

しかし我々が着く頃にはターゲットと"王下七武海"で死の外科医トラファルガー・ローがターゲットである王直と交戦中であった

島民たちは死の外科医により港へ避難しており、島民から頼まれ我々は死の外科医の手助けへ向かう

だがそこには王直だけではなく何故か黒ひげ海賊団がいた

そこで黒ひげ海賊団と王直と乱戦となり、王直の能力により切り離され多くの海兵が犠牲となる

だが死の外科医と新兵コビー少佐の頑張りにより王を撃破

しかし同盟を組んでいたであろう黒ひげが王直を裏切ったようで未だに王直は生死不明

今回の事件で活躍した死の外科医は未だに目を覚まさない

医者によれば命に別状は無いためもうしばらくしたら起きるであろうとのこと

───────

ロッキーポート事件

死亡者:28名

行方不明者:219名

負傷者:37名

軽傷者:15名


サカズキは報告書を読み、得体の知れない悪寒が背筋に走った


「……ここ、は」

「!ペンギン!シャチ!キャプテン目ェ覚ましたよ!!!」

「マジで!?うわ!マジじゃん!!!」

「ようやく目ェ覚ましたァ……良かったぁ……」

ローが目覚めるとそこには見覚えのない天井が広がっていた

するとすぐ側から聞き馴染みのある声が聞こえてきて騒がしくし始める

そして二つほど声が増え寝起きのローは耳に響く声に眉をひそめた

「あ、すみませんキャプテン……。キャプテンが目を覚ましたからつい……。お前らそろそろ落ち着け」

「あ、悪ぃペンギン」

「あいあい」

ペンギンに宥められ大人しくなるシャチとベポ

コイツら変わらねぇなと思いながら重い体をのっそりと起き上がらせる

「……ここどこだ」

「ああ。ここは海軍の救護部屋ですよ。キャプテン、一週間も目覚めないし怪我も酷いしで特別に海軍の許可が降りてここで治療してたんです」

ローはまさか海軍(世界政府)からそんな許可が出ていたなんて思いもせず目を見開くが、「まぁいいか」と寝続けたことにより乾燥していた喉を潤す

そうしたら廊下からバッタンバッタンと言う激しい音が聞こえてきた

「ローさんが目覚めたんですか!?」

「おいやめとけコビー!!!」

ガタン!と荒々しく扉を開けたのはロッキーポート事件で共闘したコビーとヘルメッポ

コビーは目を覚まして水を飲んでいるローを目にしたら分かりやすく目を輝かせた

一方ヘルメっポは未だにローを信用しきれてないため気を損ねたらどうなるのかと冷や汗たらたらである

「良かったぁ……。目、覚ましたんですね!」

「……コビー屋。もう少し静かに入れ」

呆れたようにローが咎めるとコビーは素直に謝る

そしてあっ!と何かを思い出したようでローの近くにあった椅子に腰を下ろした

「ローさんが眠っている間、ロッキーポート事件の詳細をまとめてたんです。なんだかローさんにも知らせた方がいいと思ったので情報共有として知らせておきます」

そう聞かされたのはロッキーポート事件の発生からローが眠っていた期間に判明した事柄

思っていたよりも甚大な被害に図らずとも少し眉をひそめてしまう

「と、いうことです」

「……そうか。わざわざありがとうなコビー屋」

「い、いえ!ロッキーポート事件のときにお世話になったんですからこれぐらいは!」

ローに素直に礼を言われたコビーは嬉しそうでありペンギンたちは珍しいなぁと思った

やはりヘルメッポは怯えており、コビーとは違って一歩後ろにいる

だが一連の流れでそこまで悪い印象を持たなかったのか警戒の色は薄くなっていた

「コビー。そろそろ訓練いかねぇとガープ中将にドヤされちまう」

「あっ!そうですね!じゃあローさん、怪我が治るまで安静にしておいて下さい!」

そう言って訓練に戻る2人を見送り、ローはなんとも言えない気持ちに襲われていた

ペンギンたちは顔を見合せ眠ってばかりで胃が良くなっていると見越し果物をショリショリと皮をむく

だがペンギンはローに近づきコビーの座っていた椅子に腰掛ける

「随分あの新兵に懐かれてましたね?なにかしたんですか?」

「……別に何も。アイツが勝手に懐いてきてるだけだ」

「満更でもないくせしてぇ。全く素直じゃないんだから……。?どうしたんですか?」

いつもなら噛み付いてくるのにローは反応せず遠いところを見続けるだけだった

ペンギンはどこか様子がおかしいと思い声をかけるがローは曖昧に返事をするのみ

(王直、強かったな。下手したら死ぬところだった)

(……こんなんじゃダメだ。おれはもっと強くならねぇと)

(そうじゃなきゃ、到底あの人の"本懐"を叶えることが出来ねェ……!)

ロッキーポート事件で思い知った王直の強さ

だがこの世の中には王直よりも強い者たちが散漫といる

だから王直程度で手こずるなんてこと、あってはならない

ローは、ある決意をした

「ペンギン。電伝虫持ってこい」

「……?はい」



「……もしもし」

「ロー!どうしたお前から連絡してくれるなんて!」

「赤髪屋、会って話しがしたい。どこかで落ち合おう」

「……わかった」

シャンクスは滅多に連絡をしてこないローから連絡が来たことで大分浮かれていた

だがローから並々ならぬものを感じ、真剣な声音に変えた



それからローの怪我が完治し、数週間

四皇赤髪のシャンクス率いる赤髪海賊団と、王下七武海死の外科医トラファルガー・ロー率いるハートの海賊団は海軍と世界政府にバレないようとある無人島で密会をしていた

クルーたちは少し離れた場所で談笑しており、船長たちは何やら真剣な顔で向き合っている

「ローから話を持ちかけるなんてな……。それで何があった」

「……おれは、もっと強くなりたい。……いいや、強くならなきゃいけねぇ」

シャンクスはその後続くローの言葉に驚愕することになる

「頼み事があるんだ」


───────おれを、鍛えてくれ

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