黒川あかねは助けになりたい

黒川あかねは助けになりたい


宮崎の旅行からルビーちゃんは何処か危うげな雰囲気を纏うようになり、アクアくんは最近明るさを見せていたのに時折沈みがちになってきた。

彼らの義弟の硝太くんは2人の様子を見て周りの人間関係が円滑に進むように細やかな気配りを見せていて痛々しい。

同時に彼は何やらルビーちゃんと共に発見した白骨遺体について何やら宮崎で会った探偵と連絡を密に取り合っていることが分かった。

私には硝太君もアクア君もルビーちゃんも何か秘密を知りながら私に黙っている。

彼らが苦しみながら平静を保とうとする姿を見て知らないフリできるほど関係は浅くない。

私は硝太君と共に出会った探偵から貰った名刺に直接電話した。


『もしもし、風祭です』

「風祭さん、黒川あかねです。宮崎ではお世話になりました」

『見慣れない番号だから警戒しましたが、黒川さんでしたか。確かに名刺渡していましたね。

こんばんわ。どうかされましたか?』

「あの、硝太君…現場にいた少年と連絡取り合ってますよね?」

敢えてストレートに聞いてみる。息継ぎ、沈黙の時間、声音の具合でどんな感情を抱いているのか電話でも指針にはなる。


『ええ、まあ。彼が優秀なのと私の追う対象が同じなので。それが何か?』

多少の躊躇い、切り替えて話したあたりは情報開示しても問題無い範囲か。

私は本心を交えつつ必要な情報を引き出せるように話を持って行こう。相手はプロだけど、やるしかない。

「…私自身今回の白骨遺体の件気になる点がいくつもあるんです。

硝太君が気づいた異常な点も含めて…おしえてくれませんか?

私の大事な人達にとって大事な人達なんです!貴方達が追っている人物もおそらく私達にとって無視出来ない人物だと思うので」

電話口の向こうは沈黙。考えている様子。 依頼として受理すべきか断るべきか。硝太君と共有させるか否か迷っているのだろう。

おそらく彼も同じ内容を持ちかけている。

そして互いに彼らから見て関係性から信頼は出来る第三者の私が協力者として名乗りを上げても、隠されなかった。

逆にある程度の開示が行われた。

つまり彼らが情報を秘匿したい存在に

私の存在は盛り込まれていない。

『彼は私に自分の能力を売り込みました。貴方は何が出来ますか?失礼ですが能力、特技を持って判断させt』

私を見極める感じかな。なら切り札を切ろう。風祭探偵の弱点を。

「紀かなんさん、お綺麗な人ですよね。大手出版社の社長令嬢で次期社長と目されてますね。令嬢という立場ながら鋭い表現、屈しない強さを併せ持つ、素晴らしい記者さんだと思います」

『…何故かれんを知っている?』

「貴方方の卒業写真、見たことがあるんです。それもかれんさんから。私の炎上騒ぎの時に私を擁護して匿名性とSNSのあり方を論じてくれた優しい人でした。お名刺を公開させてくれた時にご一緒されてる写真でした。大事にされてましたよ」

紀かれん記者。物腰が柔らかく、容姿も整っているが優しい人だった。

私に取材依頼した際も丁寧にこちらを気遣いながら原稿も開示した上で記事をしたためていた。

風祭さんが名刺ケースに入れられていた写真と全く同じものを彼女はパスケースに入れていた。忘れていたが風祭さんと名刺交換した際に思い出していた。

『大事な…大事な友達なんだ。同級生でね…凄いなぁ…

分かりました。俺と彼女の関係性まで見抜く洞察力、記憶力、交渉能力。 

貴方の力を使わせていただくことがあるかもしれません。

ただし、協力者ではなく依頼者、とさせてください。貴方に開示すべきかどうかはまだ迷っていますので。貴方に求められた情報はきちんと調べてお渡ししましょう。如何です?』

悪くはないだろう。流石に硝太くんと同等のポジションにはなれなかったけど。

私は私でアクア君達の助けになれるはずだ。

「いえ、ありがとうございます。あのかれんさんとは友達止まり、なんですか?」

『ははは…あいつが持っている写真と俺の写真が答えですよ。では』

かれんさんの写真は風祭さん、かれんさんを除く2人の男女も一緒に写っていた。

確か風祭さんは…

「かれんさんと自分だけ…」

片想い、ずっとしてるんだ…あの人は。

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