ホグワーツ特急in三船長
こんこん、と控えめなノック音が響く。
「入っていいぞ」
「失礼します」
ガチャ、と音がして扉が開く。
「今年の新入生の名簿をお持ちしました」
そこには、何十、何百といった数の文字が踊っている。
これらは全て、生まれた時から決まっている新入生たちの名前だ。
校長はそれらに軽く目を通す。
「なるほどなるほど…ハリーポッターにウィーズリー家の子供、これは…モンキー一族か!今年の新入生は面白い!!」
「そうですか?私は手のかかる子が来るような気がしてなりません」
「ほっほっほ、ならば育てがいがある、というものじゃないか」
「そうですか…」
「うおおおおおお!すっっっげえええええええ!!」動き出した汽車の中。
とあるコンパートメントから元気のいい声が聞こえてきた。
「おれ電車なんて初めて乗ったよ」
「そうなのかゾロ?おれは一度じいちゃんにつれられて乗ったことあるけど、やっぱいつ乗ってもワクワクするぞ!」
方や麦わら帽子の快活そうな少年。方や緑色の髪のちょっと落ち着いたような、腹巻きをした少年。
「そうか?でもやっぱり体動かせないのはきついな。ちょっと散歩行ってくる」
「おう!行ってらっしゃーい」
ガラガラガラ、と扉が閉まる。一人になった麦わら帽子の少年は、一人で、それでいてやることもないから寝ることにした。
背もたれにもたれ、いざ寝よう、と目を閉じる。だがルフィの睡眠欲とは裏腹に
「お、ここ空いてる!座ってもいいか?」
「?…誰だおめえ」
「おれはユースタス・キッドだ。で、座ってもいいか?つい寝坊しちまって、きたときにゃ、ほとんどの席が埋まっちまってな。」
「そうなのかー、じゃあゆ、ゆーすた…ギザ男!おれの向かい側の席が埋まってるからそこいいぞ!」
「おーう、分かった…って、ギザ男ってなんだギザ男って!」
「?ギザ男はギザ男だろ?」
「まるでこの世の理のように言うんじゃねェ!!キッドだキッド!!」
「わかったギザ男!おれはモンキー・D・ルフィ!よろしくな!」
「分かってねェ!」
ギャアギャアと言い争っている二人。というか主にキッドが騒ぎ立てているだけなのだが。おかげで
「…あの中にカエルはいなさそうね。いたらもう逃げてるもの」
とか栗色の髪の少女に小声で言われていた。
「なあ」
「?な、なに…?」
気づいたら、背後に見知らぬファー状のアザラシの柄をした帽子を被った少年がいた。顔も良く、嬉しさ半分警戒半分で少女は返答した。
「探してたカエルって、こいつか?」
「あ!多分そうかもしれないわ!ありがとう。」
「いいってことだ。昔の癖で思わずとっちまってな」
「そうなんだ…あ、あの…」
「なんだ?」
「あなたの名前は…?」
モジモジと名前を問う少女。側から見れば恋する少女のように見える。
「おれはトラファルガー・ローだ。あんたは?」
「私はハーマイオニーよ。よろしくね、ローさん」
「ああ、よろしく。」
ハーマイオニーの心はあの少年でいっぱいだった。
時は変わりなんか微妙な空気の流れているコンパート内。その空気を破るように、
「…ここ、席空いてるか?座らせてもらう」
と、さっきの少年が入ってきた。
「おう、いいぞ!誰だおめえ!」
「おれか?おれはトラファルガー・ローだ」
「と、とら、とらふぁ…トラ男か!おれはモンキー・D・ルフィだ!よろしくな!こっちはギザ男だ!」
「D…って、トラ男ってなんだトラ男って!!」
「お前もか…おれはユースタス・キッドだ」
「ギザのかけらもねェ名前じゃねェか!!まったく…」
「あ、お前はギザ男の隣な!」
「なんでお前が決めてんだよ!!」
はあ、とため息をつきながらも、仕方なしにそこに座るロー。
そして十二時半ごろ。通路でガチャガチャと大きな音がして、えくぼのおばさんがニコニコ顔で戸を開けた。
「車内販売よ。何かいりませんか」
「おれァいい。」
「はーい!カボチャパイに、百味ビーンズに、風船ガムに、蛙チョコに…だーっ、全種類買います!」
「はーい。じゃあ、一ガリオンちょうだいね。」
躊躇なく払う。
「お、おい麦わら屋!!流石にそれは…」
「え?」
「…遅かった」
もうすでに大鍋ケーキに手をつけていた。キッドは、暇だし何しようかなー、と思っていると、なんと名案が降ってきた。そのために百味ビーンズを購入した。
「この中で百味ビーンズ完食できなかったやつ格下ァ!」
「「あ゛???」」
「受けてたってやる!!」
「ハン、おれが受ける理由がないな」
「じゃあ格下」
「やーい格下ー!」
「おいおばちゃんおれにも一個くれ」
流石に格下は認められなかったようだ。
そしてこれが後世に残る『三馬鹿伝説』の始まりである。
なおこの戦いが白熱しすぎて誰もこのコンパートに入れなかった。
「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いて行ってください」
「…そろそろ着替えておかないとな」
「じゃあ一番着替えが遅かったやつ格下!」
「「あ゛あ゛???」」
みんな同じくらいの速度だった。