髪切り、指切り
髪を切る、髪をとかす。
身体に巻いている古くなったシーツについている切った髪が落ちないようにそっと取る。
「終わりましたよ!キャプテン!」
「あぁ、助かった。シャチ。」
「えぇ!まっかせてください!髪を切るのはおれの仕事でしょ!」
「そうだな。」
キャプテンの顔は微笑んでいた。
「しかし、キャプテン。珍しいですね。自ら髪を切ってほしいなんて。」
「………気ま……そうだな。なんとなくだ。」
「そうですか。」
口籠るキャプテンにおれは何も言えない。
パンクハザード、ひいてはシーザーの居場所を見つけてからキャプテンはシャンパールとよく船員たちの会話をしているのを見かけていた。
ペンギンに料理を頼んでいたのを見た。
ベポとガルチューをいつも以上にしているのを見た。
他の奴らとも何かをしているのを見た。
…わかっている。
この人の望みも、生き方も、全部。
生きて帰るつもりもないことも。
おれたちがローさんの足手纏いになることも。
シャンパールは「キャプテンはキャプテンしかいない。」と言った。
ペンギンは「また、食べてくださいね。」と言った。
ベポは「帰ってきてね。みんなを紹介したいんだ。」と言った。
他の奴らだって色々と言っていた。
本当はガキの指切りみたいに約束できたらよかった。
でも、これ以上この人を縛りたくはない。
だけど、この人が少しだけでもおれたちのことを思い出して生きようとしてくれるなら。
だから、おれも一言だけ。
「次も、髪を切らせてくださいね。」