頂上戦争inアド6
胸から血を流し、膝をつく白ひげを確認したセンゴクは、包囲壁を起動するように淡々と指示を出す。
(白ひげ海賊団と傘下の海賊団に亀裂を生むことが出来れば尚良かったが…。)
マリンフォードの図面を我々から盗み出すだけでは飽きたらず、赤犬の行動に勘づき分断工作も防ぐとは…赤髪も厄介な娘を育ててくれたなとセンゴクは関心していた。
(…まあいい。白ひげの隙を作り致命傷を与え、湾に海賊どもを追い込むという目的は達成した。あとは包囲壁で囲めば、我々の勝利だ。)
隣にいるガープは不服そうな表情だ。
気に食わんかと尋ねたが、返事は返ってこなかった。
「数時間後、世界に伝わる情報は、我々の勝利、その二文字でいい。」
正義のためならばどんな業でも背負う、その覚悟はある。
智将、仏のセンゴクの采配は続く。
■
「オヤジ!クソ、一体どこから!?」
白ひげに駆け寄るマルコだが、二発目の銃弾が再び迫る。
「これ以上はやらせない…!」
しかし、アドがライフルから放った銃弾によって相手の銃弾は真っ二つに裂け、白ひげを狙ったと思われる狙撃主は遠くでドサリと倒れた。
「おじさん、大丈夫!?」
「グララララ…センゴクの奴、衰えてねぇなぁ…。俺が最も隙を作るのはどういう時か、よく考えてやがる…。」
「オヤジ、無理しないでくれよい!あんたはもう昔のあんたじゃねえ!体調も悪化する一方じゃねえか!」
(やっぱり…おじさんの体はもう…。)
アドは薄々気付いていた。エースに会いに白ひげ海賊団に遊びに行く度に、体から伸びる医療器具が増えていたことに。
マルコとスクアード、アドは、戦場に向かおうとする白ひげを引き止めようとするが、
「俺は白ひげだ!」
その言葉に全員が黙った。
この海で最も強く、そして優しい男から強い覚悟を感じ取ったアドは、もう白ひげを止めることは出来なかった。
「アド、お前とオーズが仕掛けたことは、上手くいったのか?」
「…はい!」
「グララララ!やるじゃねぇか。おいマルコ、こいつと麦わらは、絶対に死なすんじゃねえぞ…!」
「…わかったよい!」
胸に致命傷を受けながらも、白ひげは雄叫びを上げ、戦場へ飛び出した。
それを追ってアドも戦場へ飛び出す。だが、不死鳥の姿になったマルコが目の前に降り立った。
「アド、俺の背中に乗れ!」
「え、でも…。」
「いいから早くしろよい!」
「わ、分かりました!」
不死鳥はアドを背中に乗せると羽ばたいた。青い風になり戦場を駆け抜けながらアドは二丁拳銃で海兵を撃ち抜く。
しかし突然、マルコは上空に舞い上がった
「マルコさん、これじゃ私の銃弾は敵に届かないですよ!?どうして――」
「…アド、下を見てみろ。」
「え…?」
グラグラと、島が、いや島ごと海が傾いていた。
大気にヒビを入れて歪ませ、巨人族の海兵を一捻りする白ひげの姿が見える。
白ひげの戦いに巻き込まれないよう、マルコが退避させてくれたのだ。
「あ、ありがとうマルコさん…。」
「いいよい。」
と、アドは戦場を空の上から見渡してある事に気付いた。
(海兵が広場に上がってる…?)
「マルコさん、恐らく包囲壁が…。」
「お前が盗んだ図面に書いてあったあれか…わかった。切り札を準備するよう、ジョズに伝えておく。要はオーズと…アドお前だ、頼むぞ。」
(私が図面を盗んだから、向こうは
"私達が包囲壁の存在を知っていること"
をわかっているはず。その上で特別何かやってこないってことは…何かしら仕掛けがあるな、きっと只の壁じゃない。)
そして倒れているオーズを見る。
力尽き沈黙するオーズのことなど、もはや海軍の誰一人として気にしていない様子。
(私が仕掛けたあれはバレてないな。)
エースの隣にいる、仏頂面のあの癪に障るジジイ…センゴクに一杯食わせてやる。
そう決心したアドは、戦いが重要な局面に入りつつあることを感じていた。