静かなる聖域

静かなる聖域


ラミちゃんが無知である事に救いを見出してるifロー概念。






「なぁ、最後に聞かせてくれ。世界は美しかったか?」

「えぇ、この世界は綺麗だったわ、貴方みたいなバケモノさえ居なければ!」

「そうか。ならーーきれいなまま死んでくれ」


銃声が響く。実の妹を殺したというのに、涙一つ出なかった。彼女の言葉通り、本当にバケモノになったのだろうか。

近づいて、積もっていた雪を払う。慎重に抱え上げ、背後のヴェルゴに声をかける。

「用件は済んだ。帰るぞ。あぁ、必要な物が出来た。手配を大至急頼む」




能力を使って妹を綺麗にしてやりながら、最後の言葉を思い返す。

「俺さえ居なければ世界は綺麗だった、か」

人をモノのように扱う天竜人共でもなく、金の為に人々を見殺しにしただけでなく焼き払いもした愚かな政府でもない。奴等の言いなりになる軍人でもなく、讃えた次の日に石を投げるような身勝手に手のひらを返す民衆でもない、俺が。

笑いが込み上げてくる。そう、妹の世界の中で、一番の大悪党は俺だ。俺以上に悪どいものをラミは知らずに死んでいった。

準備を終わらせた後に持ってこさせた海楼石製の棺に入れる。何があっても良いように頑丈で能力者殺しの海楼石を選んだ。ラミが好きだったぬいぐるみ達やおもちゃを入れる。安置室が出来たら、大好物のアイスも入れよう。

特注でガラス加工を施した蓋をする。眠っているような顔は、楽しい夢でも見ているように微笑んでいた。

触れられはしないけど、その笑顔を見ているだけで安らぐ。

「どうかそのまま、ずっと綺麗なままでいてくれ、ラミ」





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