青天井にも光る星
伏黒双子妹作者※一方的な解釈で書いてます ※喃語ぎみで喋る幼児が出てきます ※ほぼ会話文のみ ※原作に存在しない直毘人の息子が死んでます
久々の実家だからか、常よりも屋敷全体が慌ただしい気がする。 まぁ、気に留めるほどの違和感でもない。そんなことより、曲がり角の向こうを走る知らない気配の方が煩瑣いのだから。 減速を始めた、小さくも勇ましい足音の主を待つ。 すぐに、知らない子供と目が合った。 子供がそのまま派手に転ぶ。折角受け身を取れていたのに顔から壁へ突っ込むとは。まるでコントか何かである。
子供が、反転術式を使っていなければ。
「・・・・・・ いた!!」
叫びながら身を起こす。元気なことだ。 この年頃の子供なんて、転べば泣きじゃくるものだと思っていたが。 幼さに釣り合わない呪力量があるからだろうか。
はて、この家は、たったそれだけで拘束具紛いの呪物をつけるような所だったか。否、そんな家だった。なんなら拘束具の呪力に見覚えすらあった。
「こんいちわ!!」
「こんにちは」
元気でよろしい。挨拶は人間の基本だ。
「あんね、うっちゃんね、いまね、ひとかがししてーの!」
「ふみょぉ?ちゃん! しあない?!」
「ここには私しかいないわね」
「そっかぁ!!」
「やっと見つけた!! って、晴さん? 帰ったらしたんですか」
「えぇ、ついさっき」
「ねぇ、蘭太くん。 蘭太くんならふみょうちゃん?ってどな たかわかるかしら。この子が探している らしいのだけれど」
「晴さんはともかく、昴ちゃんは何を言っ てるんですか。文直さんなら一昨日に昴 ちゃんが食べちゃったでしょう?」
女の子はすばるちゃんと言うらしい。 女の子が探しているのは文直という男。 確か、四つか六つ上の兄だったか。 それより、こんな1メートルすらない子供が、体格のある成人男性を喰らったと?
「・・・・・・ おとつい?」 「・・・・・・ はぁ?」
「直哉さんが、昨日の昨日に蹴っ飛ばしてた大きい虫さん。覚えてません?」
「みどりろの、だんごむちちゃん」
「それです」
なんで心当たりあるのかしら。 お説教の気配を感じたのだろう。 すばるちゃんの威勢と元気がみるみるうちにしぼんでいく。
「じゃあ、おばけちゃんたべほーだいのとこにつれてってーは?」
「誰が全滅させたと思ってるんですか 二度と立ち入らせないと言いました」
「・・・あい」
「ほら、おばけじゃなくてちゃんとしたお昼ご飯を食べるんです」 「足止め、ありがとうございました」 「食べさせないとなんで、これで失礼しますね」
「気にしないで、その子が勝手に転んでただけだから」
本当に急いでいたのだろう。蘭太くんがすばるちゃんを抱き上げ、そそくさと引き返して行った。
私も踵を返し、来た道を引き返す。 なんだかかなりの大事だったらしい。 流石に事情は知らねばなるまい。
さっき会ったばかりだが、聞いてないわよ呑んだくれ!!
「わからん」
「アレの呪いは呪力出力の低減だけだった。見鬼の喪失を免れた文直だけが、勝手に病んで首を括って、殺しに行って殺された。それ以外は普通に暗殺で復讐しに来とる。直哉へのいい課題になろう?」
「薄情な言い方するのね。 どっちも自分の息子のことでしょうに」
「お前の兄でもあろうが」
「興味がないわ」 「口ぶりからして被呪者は他にもいるのね? 解呪してみてもいいかしら」
「あの子の呪い、少し見てみたいの」
「ハッ、好きにしろ」