青い星を堕とすまで

青い星を堕とすまで





リィラは一人、夜の街を駆ける。

女怪盗として数々の名品を奪い去るのは当然ながら、今の彼女にはもう一つ、大切な目的が合った。


「どこに居るの…?キスキル…」


キスキル。忽然と姿を消した相方。自分の大切な人。

心に空虚な穴が空いたまま、リィラは今宵のターゲットを求め、美術館へと侵入する。

館内警備を難なく潜り抜け、いよいよお目当ての宝石が待つ部屋へと到達するリィラ。

そこに在るのは宝石と…


「……ぇ…?」


見慣れた桃色の髪、お揃いのスーツ、一緒に買ったサングラス。

何よりも、誰よりも。

リィラが最も好きな、その横顔。

見間違えではない、間違える訳がない。そこに居るのは、紛れもなく───


「キスキル…?」

「…ん、久しぶりだね、リィラ。」


愛しのキスキルであった。

キスキルの奥には宝石が置かれているが、そんな事も忘れてリィラはキスキルに抱き着く。


「もぅ…馬鹿ぁ…!今まで何処にいたのよ…!」

「んーと…その辺を…適当に…?」

「適当過ぎ…!ちゃんと連絡しなさいよ…!」

「アハハ…ごめんごめん。」

「馬鹿ぁ…わたし寂しかった…!」

「そっか…ごめんね。」

「…もういい、それより二人でそこの宝石盗ってさ、早くウチに帰ろ?」

「…リィラ。」

「なぁに?キスキル…」


ごめんね。


キスキルのその言葉と共に、リィラの首筋に電流が流れる。

意識を手放してしまうリィラが視界に収めた最後の光景は、悪戯がバレたように舌を出して此方にウィンクするキスキルと、そのキスキルの手に握られたスタンガンであった。




───




「ん…ぅ…」


目を覚ましたリィラが居たのは、先程の美術館…

ではなく、知らぬ空間。

手足は何かに拘束されて動けない。

視界も暗くてほとんど見えないが、何らかの一室だろうか。


「お目覚めかな?リィラ。」

「…ッ!?」


その空間に、キスキルではない男の声が響く。


「だ、誰よアンタ…!」

「私の素性なんてどうでも良いだろう。今大事なのは、君の置かれている状況だよ、リィラ。」


瞬間、光が差し込む。暗闇に目を慣らすしかなかったリィラは思わず目を瞑った。


「ぐっ…!」


ようやく目を開けたリィラの視界に映るのは、拘束具や醜悪な道具が所狭しと置いている壁。柔和そうな表情をしているが、下卑た本性が隠しきれていない男の顔。

そして…


「…っ!?嫌ぁぁあ!」


男の手には、一枚の鏡。そこに写るリィラの身体に、衣類は何一つなく。産まれたままの姿を男に晒していた。当然手足は動かせず、恥部を隠す手段のないリィラは、男に視姦されるのを許すしか無かった。


「そう、今の君は私の玩具と呼ぶに相応しい状態だ。」


悔しさを滲ませるリィラ。だが今のリィラには、自分以上に大事な事があった。


「…!キスキルは!?アンタまさかキスキルにまで手を出してないでしょうね!?」


最後の瞬間、確かにそこに居た、最愛の相方。彼女の安否の行方が今のリィラに焦燥感を与えていた。


「あぁ…彼女か、惜しい事をしてしまったよ。」

「なんですって…!?」


キスキルの身に何が…?リィラは男を睨みつけるが、男は軽くそれを受け流し言葉を連ねる。


「宝石に見せかけて罠を張り巡らせ、少し前に彼女を捕まえたは良いが、僅かな隙を付かれ逃げられてしまってね…」

「じゃあアンタが…キスキルを攫ってたのね…絶対許さない…!」


この男が、今までキスキルを縛り付けていた。その事実に怒りをに滲ませるリィラだった。


「まぁまぁ落ち着いてくれたまえ。先程の通り、彼女にはまんまと逃げられたよ。まぁどうやら、彼女は置き土産として君を差し出してくれたようだけどね。リィラ、君は…彼女に売られてしまったのではないかい?」


自分を辱めるだけでも屈辱的なのに、あろう事か相方まで愚弄する男に、何も言わないリィラでは無かった。


「うっさい…!馴れ馴れしくわたしの名前を呼ばないで…!それにキスキルは…絶対わたしを見捨てたりしない…!」

「なるほど…でも、それが君の状況に何か影響が?」

「アンタ鈍いのね、キスキルが助けに来てくれるって言ってるのよ!」


そう言ってのけたリィラ。それを聞いた男の反応は、怒りでも、嘲笑でもなく…


「フフフ…そうか、助けに来ると…なるほど、それは盲点だった…やるなぁ彼女は…」


その手があったか、という感心に近いものだった。


「何考えてるのか知らないけど、アンタが好き勝手出来るのもここまでよ、キスキルが来たらアンタなんか…!」

「そうか…分かった。なら君たちの結束を試すべく、一つ勝負をしよう。」

「勝負…?な、何よ…!」


男は鏡を地に置き、両手を広げ、その勝負の内容の説明をゆっくりと始めた。


「この部屋を見て分かる通り、君を連れてきた理由は私の慰み物だ。君の中の女を、これ以上なく愉しみたいと私は思っている。故に君の性感を探り、開発し、浸らせ、しゃぶり尽くす訳だが…君から強請られるまで、決して挿入はしないと約束しよう。それまで君は、私からの愛撫に耐え凌ぐといい。何せ相方の…キスキルが助けに来てくれるのだろう?」

「アンタ…ホントに悪趣味ね…!」

「それほどでもないさ。さぁどうかなリィラ、タイムリミットも分からず、明らかに君に不利な勝負。助けに来る確証もない中、その相方への信頼だけで私との勝負に挑む勇気があるかい?」

「…ふんっ、乗ってやるわよ!わたしはアンタなんかに負けないんだから!」


ここで舐められては怪盗の名が廃る。キスキルは必ず来る。それまでこの最低な男からの、最悪な時間を耐え抜いてやる。そんな想いを胸に抱えた彼女の長い夜が、幕を開けた。




───




「いい返事だ。では早速始めるとしようか。」


そう言って男が棚から取り出したのは、何らかのボトル。

ラベルに描かれた淫靡なハートマークから、何に使われるかは想像に固くない。


「ふん、何?いきなり道具頼みって訳?あれだけ息巻いてたのに情けないわね!」

「そうかもしれない。だがリィラ、いずれ君はコレに感謝することになるぞ?何せ…」


リィラの挑発にも動じず、ボトルを片手に持った男はゆっくりとリィラの裸体に近づく。そして…


「…道具のせいにしてしまえば、いくら喘いでも、絶頂しても、快楽に耽り狂っても。何一つキスキルへの裏切りにはならないのだから。」


そうリィラの耳元で囁くと、男はボトルの中に入った液体を自らの手に出し始める。薄い桃色、鼻腔に刺さる甘い匂い、強い粘度の液体…男の用意したそれがローションであることは明白だった。

そのローションを纏った男の手が、無遠慮にリィラの身体中を這っていく。


「ん…くぅ…こ、の…ぉ…」


リィラの悶える声をスパイスに、男の手はリィラの女体を征服するべく行動を開始する。

まずは男を誘うかのように豊満に育った胸の全体を包み込むように、乳肉の下に隠れた肌すら余す所なくローションを塗り込む。

ローションが塗られた肌は、次第に熱を発し、空気の触れる感触さえリィラに敏感に伝えていた。媚薬効果も混ざっているのだろう。

そしてローションによって齎された熱に当てられ、ぷっくりと主張する乳首を、男は指の腹で転がしてリィラの声の愉しみつつ、その指の腹が滑るまで丹念にローションを塗す。

てらてらとした滑り心地になった乳首を男が弾いて愉しむ頃には、リィラの嬌声は完全には抑えきれず、その口から甘く漏れ出るようになっていた。


「ぁ…♥いつ…まで、弄ってるのよ…このヘンタ、ぁっ…♥ぃ…」

「そうか、もう次が欲しいんだな」

「馬鹿っ、そんな訳ぇ……っ♥」


胸部への悪戯に満足したように、男の手は未開の下腹部へと進軍する。

引き締まった腹を撫でさすり、リィラの滑らかな肉体を味わい尽くす中で見つけた窪みを、男の手は見逃さなかった。

ローションを追加し、腹の窪み…臍の周辺から螺旋を描くようにゆっくりと奥に入り込み、リィラを焦らす。

いよいよ臍の底に男の指がたどり着いた時には、胸部をまさぐられた時に近い性感をリィラは感じていた。


「んん…♥お腹…熱いぃ…♥」


男への生意気な言葉も忘れ、甘い性感に悶えるしかないリィラ。だがそのトリップも、すぐに現実に引き戻される。


「ぁ…待ってそこは…ぁ…駄目ぇ…!」


男の手は腹を這いずり、そして下腹部を抜け…リィラの股下にたどり着く。ようやく男の手が到着したにも関わらず、確かにそこは濡れそぼっていた。これが何を意味するのか、それが分からぬ男でも、ましてやリィラでも無かった。


「ふむ…まだここは触っていないはずだが、どうしてこんなに濡れているのかな?」

「違う…嘘よ、こんなの嘘…私は…アンタなんかに、感じて…っ♥ない…こんなの…こんなのぉ…」

「そうかそうか、性感によるものではないとしたら…リィラは粗相をしたのかな?それとも…」

「漏らすわけ無いでしょ馬鹿っ…!これは…これはぁ…」


気付いていた、遅かれ早かれこうなることは。ただそれが、恐ろしく早かっただけで。それでもリィラは告げるしか無かった。何せそうでもしなければ…


「アンタの…その…悪趣味な道具のせいなのぉ…♥」


男からの免罪符を使わなければ。キスキルを、自分自身を裏切ってしまうから。


「フフフ、そうか。道具のせいか。ではこうやって…肉壺を掻き回す度に君の蜜が溢れ落ちるのは、何故かな?」

「ぁあん♥それも…アンタの♥道具のせいぃ♥」


くちゅくちゅと淫らな音を立てる股下に、男は興奮を、リィラは快感を隠せないままでいた。ローションを内側からもたっぷり塗り込まれ、リィラの言葉とは裏腹に、彼女の膣肉は男の指を咥え込み、離すまいと受け入れている。指が柔らかく動く度、リィラは艶めかしい声を奏でる。男は片手で割れ目への愛撫を続けながら、反対の手をヒクついている菊門へと近付けた。彼女の尻穴は、前同様に、男の指を受け入れて逃さない。


「そうかそうか、ならばリィラ。君の穴が前後共に私の指を吸い付いて離さないのは?」

「ひぅ♥あ、うっさい…♥道具のせいに、決まってるでしょ…♥早く抜きなさ…ぃぃぃっ♥」

「お望み通り指を抜いてあげたというのに、随分な乱れようだな。」


そのまま男の声にリィラが噛み付くようなやり取りを見せながら、リィラの身体中は確かに男に弄ばれていく。最後に太腿の内側から塗りたくられ、僅かな痙攣とか細い喘ぎ声が漏れ出た頃には、リィラの当初の反骨心のほとんどは削られ、もはや拘束具によって肉体の自立を支えられている形であった。


「はぁ…♥はぁ…♥」

「では、そろそろ締めとしようか。」


そう男が告げると、男はリィラの正面に移動。そのままズボンのチャックを下ろし、隆起した肉槍を振り下ろす。

それを見たリィラの心境は、侮蔑と恐怖と、ほんの僅かな…


「…っ!し、しまいなさいよ…そんな汚いの…!」

「そうは言わないでおくれ。君ほどの女性を見て、ましてやこれほどまでに極上の身体を相手していて男根が立たぬほど、私も枯れてはいない。」

「くっ…!というか約束が違うじゃない…!わたしから強請るまで挿入れないはずでしょ!?」

「その通りだよ。だから…」


その言葉の続きと言わんばかりの顔で、男は自分の剛直を慰め始めた。


「え…?嘘…冗談よね…待って、それ…」


リィラが戸惑いを見せる中、男の右手は陰茎への刺激を緩めない。男の眼前にあるのは…先程念入りに下拵えをした、リィラの裸体。


「…っ!?そんな…!変態…!さっさと辞めなさいよ…!」

「勘弁して欲しいな、此方からルールを設けた手前、君への劣情を処理するならこうするしかないんだ。少しは大目に見てくれ…」


リィラの静止も聞かず、男は自慰を加速させる。手と指で散々堪能した裸体。それを下の方で味わえないのなら…肉槍の震えが、男の漏らす息が、終わりが近い事をを告げようとしている。


「凄いな…君はどこも余す所なく魅力的だ…見るだけでこんなにも…さぁ、そろそろだ。リィラ、ちゃんと受け止めておくれよ…」

「嫌ぁ…!やめて…!そんなの…要らないからぁ…!」


ドクッ、ドクドク…びちゃあ…


「ゃ…ぁ…♥こ、これ…♥熱…っ…♥」


はち切れんばかりの男の肉棒から、吹き出すように白い欲望がリィラに襲いかかる。

その醜悪な白濁は、リィラの臍のやや下…子宮の在る場所にぶちまけられていた。


「ふぅ…。君の"ナカ"に注ぎ込む日が今から愉しみだ。それでは、また。」


去り際に吐いた男の一言、それが意味する事は、すなわち。リィラは頭の中でその答えを想像してしまい、恐怖と快感に震えてしまう。


「うぅ…♥臭い…強過ぎ…♥気持ち悪っ…でも…こんなのに…わたしっ、負け…なぃ…」


気丈に振る舞うリィラ。だが彼女の身体は、性感の火照りと、男の欲望の匂いに包まれていた。







彼女の夜は、始まったばかり。


Report Page