青い傷
赤井/大上の人『アオちゃんってさ、なんでキヌヨちゃんと一緒だとケンカばっかりなの?』
ずっと気になっていたことを聞く。
二人の喧嘩は激しくて、巻き込まれたら風紀委員の子でも無事じゃすまないと思う。
いつもアオちゃんが勝ってはいるけど、怪我も多いし…
そんなになってまでケンカをすることもないと思うんだ。
「そっ、それは…その…」
アオちゃんは動揺してるみたい。
話すと嫌われちゃうかも、みたいな動揺にも見えるけど…
どっちかっていうと、自分が怖い、みたいな。
それを話してる間に、自分がどうなるかわからない、みたいな。
そんな恐怖の方が大きいかな。
『変なこと聞いちゃったね。話したくないなら…』
「ボクは」
『!』
話題を変えようと思ったけど、考えがまとまったみたい。
話す決心がついた、って言った方が近いかな。
「ボクは、あの子にひどいことをしちゃったから…
あの子が復讐に来るんだ」
「だから、やられないようにやるしかないんだよ」
…口ぶりから、謝って済むような問題じゃないのはわかる。
キヌヨちゃんが復讐に燃えている、っていうのも本当だろうね。
向こうから仕掛けることの方が多いし。
でも、それなら…
『なんでケンカしに行くのさ。』
『キヌヨちゃんが仕掛けてきたならともかく、アオちゃんが仕掛ける意味はないんじゃないの?』
復讐が怖いなら、なるべく見つからないようにすればいいじゃん。
そう言おうとしたんだけど…
「っ…そうじゃないんだよ…」
「ボクは悪くなるオオカミだから…」
『へ?今、なんて…』
聞き返したけど、そこからはぼそぼそ何か言ってるだけだった。
…私もデリカシーなかったかな。
『その、ごめんね?もうキヌヨちゃんとのことは聞かな』いから…あれ?
「もう聞こえてないだろうが…もう一度言ってやる。」
「俺は。」
「大きくて悪いオオカミだ。」
―――1stトランペットが鳴ったある日