霧散
注意
・男性妊娠、からの流産描写
・短い
・なんでも許せる方向け
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腹がポッカリと空いた感触がする。海賊の拳が腹を突き抜けた、ただそれだけだ。ギギギ、と錆びたブリキのように鈍く動く首で自分の腹の事実を確かめる。
「ぁ、」
ない
腹は男の拳を中心にドーナッツ状に抉れ、そこから白く煙となってフワフワと消えていく。腹は、そこは
「ぃ、や、やだ」
身体中の熱と血の気が引いていく。右手でこれ以上こぼれないように腹を抑えながら、左手でまだ自分から出たと判別できるもの、既に空気中に溶けてたものも全て掴み空虚になったそこへ持っていく。海賊の捕縛も、市民の安否も放り投げその場でうずくまる。
いやだ、なくしたくない、おれの子だ、父親が誰だと分からずとも、急に突きつけられても、産むと決めたのだ。
決めたのに、殴られて崩れた腹と共に子の行方も消えた。我を忘れて集めた腹は、形は戻れどもう一つの命の分の重みは失っていた。さすっても膨らんでいた腹部の感触はしない、何もなかった頃に戻っていた。
おれは身を守る行動で我が子を殺したのだ。