零(レイ)

零(レイ)





ふぅ、やっと終わったぁ…!

報告資料のお手伝い、ありがとうございます!

お陰でなんとか作れましたよ〜

ではマスター、今日もお疲れ様でした!

はい、明日もよろしくお願いしますね!

それじゃあっ!





タッタッタッタッタッ…





ウィーン…





ガチャッ…



ふぅ…今日も疲れましたね。

でも、マスターが居てくれるなら、それだけで疲れとか忘れちゃいます。

次はどんな『お願い』してくれるかな…

それとも今度は私から『お願い』…しちゃおうかな…?

うーんでもでも私としては…



コン、コン、コンコンコン






………


…はい。







ウィーン…



こんばんは。

司令部の方ですね。

この時間となりますと、夜間作戦の指示でしょうか、私はいつでも出撃可能です。

体調管理、及び装備調整も万全。

全装備、問題なく使用可能です。

それで今回の作戦と使用装備は一体…







…えっ?マス、ター…?


(そんな、なんで、どうして?

さっき部屋に戻ってるの…私見て…

それに…あれは…作戦指示の合図…

マスターには…合図…伝えられてないはず…

教えないでって…言ったのに…

こんな…冷たい機械のような…私…

見られたくない…のに…

なんで…なんで…!?)


…あ、あははぁ。

一体どうしたんですか?こんな所で。

私に何か用事でも?

…ん?「ここしばらく、レイが暗い顔をするようになった」?

「それで様子を見に来た」…って。

もー、何言ってるんですか!

私だったらこのとーり!ほら元気いっぱいですよ!

マスターは心配する必要ないです!

マスターってば本当に心配性ですね〜

全く、変なノックするから驚いちゃったじゃないで…






「あの合図は、司令部にいる自分の同僚から聞いた」


え…?


「同僚から言われたよ、「あの娘のことを本当に想っているならば、お前は知るべきだ。彼女がお前から隠したがっている事も含めて」ってね」


マスター?


「それと、暗い顔をするようになった時期に心当たりがある」


さっきから何言ってるんですか?

私は大丈夫なんですよ?

ほんと、本当なんですって。


「それはきっと、あの時から」


…マスター、もうやめませんか?コレ。

お互いにいい事ないですよ。

私は大丈夫で、マスターの心配も杞憂でした。

ほら、コレで無事に解決…


「レイが自分の『お願い』を聞くようになってから」


………言わないで、マスター。

ダメです、ダメなんです。

それは…それだけは…


「そして…」


やめて、聞きたくないです。

マスター、『お願い』です…!

どうか…どうか…!


「レイが自分に…」


やだやだやだやだやだやだ…

やだぁ!やだなのっ!

『お願い』っ!『お願い』だからぁ!

言わないで…マスター…!!


「…『お願い』するようになってから」


………なん、でぇ…!

なんで、分かっちゃうんですかぁ…!


「…レイの心を曇らせる原因は、一体何?」


………


「自分は、レイの助けになりたい」


…だから…です。

いつもマスターは、私に手を差し伸べる。

そうやって、いつも私の傍に来てしまう。

だからこんなにも…

こんなにも…!

胸が…苦しいんですよぉ…!











分かりました。全て、話しますね。


私は元々、装備に精神状態が影響される部分がありました。

ただでさえ閃刀姫という強大な力を持つ私に、そんな精神の異常性まであるなら、恐怖、侮蔑、忌避さまざまあれど、自分から近づこうとする人がいる訳ないんです。


だから私は、自分の感情を『零(ゼロ)』としました。

兵器足るべき存在として振る舞いました。

そうすれば、扱いが人に対するものでなくとも、私を傷つける人は居ない、私の居場所を失うことはない。

人ではなく兵器らしく活動すること。それが最前と考えていることは、今も否定しません。


…でもマスターは違いました。

マスターは機械の様な頃の私から、1人の人間として見てくれていましたよね。

それが嬉しくて…

少しずつ、私を縛っていた何かが解けていくような…そんな感覚…

それは…私が諦めていた心だったから…本当に嬉しくて…


だけど、今更になって自分を取り戻すことなんて難しくて…

それでもマスターの前では、ただの女の子(レイ)で居たいと思うようになりました。

だから、マスターには機械のような私は見て欲しくなくて、作戦指示の合図は伏せていたんです。


でも、機械と人を行き来するなんて、ずっと出来ることなんかじゃなくて…

兵器であろうとするのに…我慢出来なくて…

心が…『零(こぼ)』れてしまったんです…!




…カガリを身に付けて、そしてマスターを襲ってしまった日を覚えていますか?

私はあの日、閃刀姫としての力をマスターに振るってしまいましたよね…

あんなこと…したのに…

なのにマスターは…私を許してくれて…

それだけじゃなくて…あんなに…いっぱい…♡

私、ホントに満たされたんです…♡


だけど、心の何処かで。

『マスターは私という兵器を失わない為に、自分を差し出し、逃げられないようにしている』なんて考えてしまって。

そんな訳ないって思ってるのに…

マスターの『お願い』を聞く度に…

私の『お願い』を聞いてもらう度に…

マスターに、縋ってしまう度に…

私はマスターをもっともっと好きになって…

心が…どんどん満たされて…!

そして…

マスターから、どんどん離れなくなる。

いつまでも、兵器としての思考が振り解けない。

私が私を引き裂いていくようで…

もう…辛いんです…

私は…私を保っていられないんです…!




話したら、少し楽になれました。

ありがとうございます、マスター。






…ねぇ、マスター。



マスターは、どんな女の子が好きですか?



従者のように、メイドのように、ご主人様に仕える女の子(シズク)ですか?



それとも…天真爛漫で、お転婆で、ダーリンへの思いを爆発させていく女の子(ハヤテ)?



はたまた…言葉数少なくて、起伏が乏しいけど、キミの事なら何でも嬉しい気分になる女の子(カイナ)だったり?



もしかして…粗暴で、口荒くて。マスターの事を壊してしまうくらい危険な…女の子(カガリ)なんですか?



言ったのと全然違っても良いです。



ね、教えて下さいよ。



マスターの好きな女の子は、なんですか?







ワタシ、ソレになりますから。



わたしは私のままで居るのが辛い。



でも、マスターと離れてしまう方がもっと辛い。



マスターを失ってしまうくらいなら。



いっそワタシはわたしじゃなくてもいい。



マスターが喜んでくれるなら、それはわタしの喜びです。



ワたシはマスターが居ないと死ぬんです。



私、何にだってなりますから。



だからどうか捨てないで…



傍にいて…



行かないで…



助けてっ………!












「自分の好きな女の子は、レイだよ」



………え?



「シズクも、ハヤテも、カイナも、カガリも」



そんな…



「全部ひっくるめて、君が好きなんだ」



なんで…



「どうか自分の傍にずっといて欲しい」



な…



「レイ、愛している」




………

…うぅ

うそ…

うそ…です…

そんな…都合のいいこと…ありえない…

そうやって…マスターは…

私を何処にも行けないようにしてるだけ…

ますたーは…わたしをだまそうとしてるんだ…!

そんなますたー…もう…すきじゃない…!





「嘘じゃないよ」


「この気持ちは嘘なんて付けない」


「今から証明するね」


「『イヤ』とか『ダメ』とか言われても、もう止まらない」


「それでも本当に嘘だと思うなら」


「自分の気持ちが信じられないなら」


「自分のことを『キライ』って言って欲しい」


「そう言ってくれれば、いいから」






んっ…んんっ…!

んっ…ちゅ…くちゅ…

れろ……れぇ…んぅ…

あむ……くにゅ…じゅぞぞぞ……

ちゅぱ…じゅる…

ちゅう……♡

……ぷはっ♡


やめて、きすしないで…♡

ますたーのおもいなんていらないの…♡

こんなぁ…すき♡すき♡ばっかのちゅー…♡

わたし…いらないのにぃ…♡


あっ…♡

やだぁ…♡

くびもとにもちゅーしちゃだめぇ…♡

『あと』ついちゃう…♡

れいはおれのものってばれちゃうよぉ…♡


ギュッ…


やだやだ…ぎゅってするのもだめ…♡

やだ…はなして…♡

ますたーのたいおんなんていらない…♡

みみもとで「あいしてる」とかいうなぁ…♡


やめぇ…くんくんもだめ…♡

わたしのにおい…すっちゃやぁ…♡

「いいにおい」とかしらないもん…♡


かおこっちむけちゃだめ…♡

『みない』で…『みる』のだめ…♡

わたしのかお…『みる』なぁ…♡


あっ…こし…♡

て…まわすのもだめ…♡

わたしとますたーの…からだのすきま…♡

『うめる』の…やだ…♡

「しんおんはくなってる」とかしらないもん…♡

どきどきなんかうそ…♡うそだから…♡

わたしはからっぽ…からっぽなの…♡

なのに…ますたーで…♡

からっぽ『うめ』ないで…♡


んんっ…♡

んっ…ちゅぱ…ちゅうぅ…♡

ちゅ…れろ……れぇ…んぅ…♡

あむ……じゅる…じゅぞっ…ぢぅ…♡

ちゅく…じゅっぽ…ぢゅう…♡

ちゅう…ちゅ…♡

……ぷはっ♡


また…きす…した…♡

きすだめって…いった…のに…♡

ばか…♡へんたい…♡



「…レイ、止まるならここが最後だ」


わたし…ずっと…だめっていってる…♡


「自分の想い、最後の一滴まで伝えるから」


さっきから…やだ…いってるもん…♡


「それが嫌なら、自分の事…」


そんな…いじわるますたーのことなんて…♡


「………『キライ』って、言うんだ」


ますたー…なんて…

き…


………


い…

いえない…♡

いえるわけないじゃないですか…ばかぁ…♡






ドサッ…





あっ…♡

はい…わかりました…♡

わたし…もう…にげませんから…♡

だから…ちゃんと…♡

あいして…ください…♡♡♡













おっ♡お"っ♡おほぉ♡

すきっ♡すきです♡すきぃ♡

ますたー♡あっ♡ずっとお"っ♡すきですぅ♡

わたしっ♡あっ♡

まだ♡へいきぃ♡だけどお"お"っ♡

こわがられるけどっ♡お"っ♡

ますたー♡こわがらせる"っかも♡だけどっ♡

もうっ♡はなれないぃい"っ♡からぁ♡

つれてってっ♡

つれてってぇ♡くださいっ♡

はいっ♡はいっ♡はいっ♡

なりますっ♡

これからはぁっ♡あ"あ"っ♡ますたー♡

ますたーせんよう"ぅ♡

ますたーだけのぉ"♡

およめさん"ん"ん"っ♡ですっ♡

あぁ♡♡お"っ♡♡おほぉ♡♡♡

きて♡♡♡きて♡♡♡きてきて♡♡♡

ますたー♡♡♡すき"っ♡♡♡

あいしてますっ♡♡♡ますたー♡♡♡

すき♡♡♡すき♡♡♡だいすきぃっ♡♡♡

ますたー♡♡♡♡♡ますたー♡♡♡♡♡


す…♡♡♡♡♡き…♡♡♡♡♡









はぁ…はぁ…♡

こんなに…いっぱい…♡

もう…マスターの変態…♡

私のことどれだけ好きなんですかぁ…♡

あー分かってますから…耳元で言わないでください…♡


ねぇ、マスター…♡

私がどれだけマスターのこと好きか…知ってますよね…♡

こんなことになるくらい好きなんですよ…♡

それくらい…めんどくさいんですから…♡


だから…私だけを愛してくださいね…♡

私以外の女の子見たらだめですから…♡

浮気したら許さないもん…♡

それでも…いいんですね…♡


私…マスターの隣にずっといますからね…♡

マスターから離れるのいやです…♡

ダメって言っても絶対着いて行きますから…♡

いい…ですよね…♡


マスター…♡


世界で一番、貴方の事を愛しています…♡♡♡










………チッんだよ、マスターかよ。

戦闘以外で話しかけんなっつってんだろ。あ?今日の活躍も最高だったぁ?

はん、アんなの活躍した内にも入らねぇよ。おいバカやめろ抱きつくんじゃねぇうっとおしいんだよ!

ったく、こっちは疲れてテメェの相手してる暇なんてねぇんだ。

分かったらさっさと他所行きやが…


………ん、おい待て、どこ行くつもりだ。

「それじゃあロゼの様子でも見に行く」だと?


ふっざけんな浮気じゃねぇか私という女が居ながらこのスケコマシ野郎…!

おまっ何笑ってんだよ馬鹿にしてんのか!?

調子に乗りやがって…!

おら着いてこい、テメェが誰のモンなのかみっちり教えてやるからな…!




ズル…ズル…




あ?んだよマスター、なんか言ったか?

は?「自分のこと、どれくらい好き?」だと?

首根っこ掴まれて引き摺られてる時に聞く質問じゃねぇだろソレ…

……どうしても、言わないとダメか?

……あー分かった!言うから暴れんな大の大人がみっともねぇ…!

ったく…

















「世界で一番愛してる」に決まってんだろ、ばーか♡




fin.


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