零れたのは、想い。
なんでワシはコン→エピが好きなんやろなア・・・「こ〜んちゃんっ。」
上目遣いで僕を見つめてくるこの人はエピさん。菊花賞とジャパンカップを取っている、僕の同室。
「お風呂空いたって。いこーよ。」
菊花賞のパドックと同等以上の緊張が走る。親を殺したと語るような気持ちで正直に話すが、僕はこの人に性的な興奮を抱いている。
身長体重は僕とだいたい一緒。けど、ほんの少しこの人のほうが背が低くて薄い。首元がゆるい服が好き(というより縛られるのが嫌いなのかな?)で背が低くて活発だから鎖骨なんかが見えたりしてかなりやばい。一応言っておくけど僕は別に変態じゃない。
感じる要素としては女の子みたいなのに、触れると意外とゴツゴツしてて戦う人の肉体だなと思わされるときがある。
この体を僕だけのものにしたい・・・
何度だって言う。僕は変態なんかじゃない。
「さっきからどうしたんだよーコンちゃん。ぼーっとしちゃって、コンちゃんらしくないよ。」
気づけば、とっくに風呂場についていた。というよりエピさんが引っ張っていってくれていたみたいだ。ベルベットのように滑らかなその肌触りと子供の体温のようなその手のぬくもりがまだ僕の手に張り付いていた。この人のこういうところが好きなんだ。そのやさしさがもっとたくさんの人に知られれば、この人が抱える苦しみはきっとなくなるのに。
僕は上から脱ぐ主義だけど、先輩はそういうことは気にしない。今日はしたからだ。
腰回りのラインは意外とワイルドで、菊花賞を取っただけのことはあるなといった感じ。
胴体から感じる印象が細い分、尻はミホノブルボン先輩を思わせるほどのむっちり。
ただデカいのではなく、むっちり。触れれば沈み込みそうにすら思える。
安産型、というのはきっとこういうことなのだろうなと思う。
そんな不埒な物思いにふけっていると、僕もエピさんも着脱は終了していた。
エピさんにはこういうところに来たら真っ先に風呂に入りそうなイメージがこの人をあんまり知らない人にはあるかもしれないが、この人は育ちがいいのでしっかりと全身洗ってから入る。知らないでしょ?
「♪~♬~♪♪」
後これも多分知らないでしょ。エピさんはこういう時鼻歌を歌う。エピさんの鼻歌はリラックスの合図だ。だから僕のそばにいるときエピさんは基本鼻歌。他の誰にもきっと引き出すことはできない、この人のかわいげ。
「いった・・・」
しまった。エピさんに見惚れていたらシャンプーが目に入った。
「コンちゃん?!大丈夫?!」
異変に気付いたエピさんがすぐに洗い流して・・・顔ちっか。ちっさ。
「大丈夫です。ちょっと目に入っただけです。」
「よ・・・よかったぁー・・・」
へなへな、という擬音すら聞こえそうなほどエピさんの体から気が抜ける。
目に泡が入っただけでこれほどまでに心配してくれたのか。
「エピさんのおかげですよ。あなたがいてくれてよかった。やっぱりエピさんはすごい。」
「べ・・・別にコンちゃんのためにやったんじゃ・・・待って!今のなし!コンちゃんのため!ぼくもコンちゃんがいてくれてよかった!・・・なんでぼくいっつもいっつもやっちゃうんだろう・・・」
エピさんは褒めると典型的なツンデレになってしまう。だが、すぐにびっくりするくらい謝ってくれる。それほどまでに僕に嫌われたくないのだろう。興奮しないと言えば嘘にはなる。だが、この人の奥に潜んでる自尊心の低さは問題だろうな。多分、この性格で何人か友達になりたかった人を失ったのだろう。あとディープさんからの拒絶がきついか。よりにもよってあの人に嫌われたんだ、かなり絶望しただろう。でも今は・・・
「いいんですよ、別に。僕はどんなことがあったってエピさんのことを嫌いになったりなんてしません。ディープさんはあなたのことがちょっと苦手ですけど、僕は大好きなんです。エピさんのこと。」
この人のことを独占したい。許されるなら、一生この人を僕に縛り付けたい。抱きしめた肌のぬくもりが永遠になれば、きっと僕は天さえ駆けることができるのに。
「ありがとう・・・コンちゃん。でもずっと・・・甘え続けてることなんてできないよ。
人間関係をコンちゃん一人に絞れたらどれだけ幸せだろうって考えたこともあった。でも想像できなかったんだ。その世界の幸せを。コンちゃんだけじゃなくて、キズナとかロゴとか、クリスさんとかスぺさんとか、コンちゃんの友達のエフ君テレス君あとタクトちゃん。
他にももっと、いっぱい、いーっぱい!もっとみんなと・・・いっしょに・・・!」
・・・風呂にいるのが僕らだけでよかった。・・・のか?むしろみんなにこの姿を見せた方が・・・まだ、僕一人のものであってくれることを感謝しよう。・・・この人が、いずれみんなを愛せて、みんなに愛される人になりますように。そしてその愛は僕が最も大きくありますように。祈りを込め、肌をなぞる。「えっちだ・・・」としか意見のでなかったその肢体は、まるでステンドグラスに移る神のように神々しかった。改めて思った。この人を独占するなんてとんでもない。