水も滴る………

水も滴る………


───彼女はレミナ・エルトフロム・ユグドミレニア。

魔術協会から離反した一族、千年黄金樹(ユグドミレニア)出身の魔術師で、自身のサーヴァントであるアスラウグとラグナルと共に亜種二連聖杯戦争に参加したマスターである。


ひょんなことから出逢ったカルデアのマスターである藤丸立香とは同年代で年齢も近く、二人は交流を深めていくにつれ、今ではたまにこうして二人っきりで出掛けては目に入った良さげなお店に飛び込んだり、オススメのレストランを紹介して堪能したりする仲になっていた。


この日も街中でのショッピングを終えた二人は、休憩がてら近くの公園を訪れていた。

買った商品やランチタイムに訪れたお店の料理の感想を語っていたふたりであったが……


「あ、降ってきた」


先程から天気が曇っていたとはいえ、大丈夫かなと思っていたところにポツポツと降りだしてきた雨。

幸い二人は公園内にあるガゼボ(西洋スタイルのパビリオンの一種、日本でいう東屋)で休息をとっていたので濡れることはなかった。


「うーん、これはしばらく止みそうにないかな?とりあえず此処で雨宿りにしようか、レミ……」


そう立香が言おうとした次の瞬間


レミナは立ち上がると、ガゼボの外へゆっくりと歩きだした。


「えっ?」


傘など当然持ってない彼女は屋根のあるパビリオンから出ると、降り注ぐ雨の中、曇り空を眺めるように立っていた。


「あ────」


────彼女を呼び止めようとした手が止まる。

────視線が彼女に固定される。

自分たち以外誰もいない公園の中、空から絶えず落ちてくる雨をしっかりと浴びるようにレミナは立っていた。

まるでシャワーでも浴びるかのように、雨水に打たれるレミナの体はあっという間にずぶ濡れになる。オシャレな現代服の至るところからレミナへと降り注いだ雨水は彼女の身体を流れては地面へと滴り、ぐしょ濡れになったことで身体に張り付いた服は彼女のスタイル抜群の身体を強調しており、公園内に自分たち以外の人がいなかったことに内心ホッとしていた。


雨に濡れるレミナの姿に、藤丸立香は思わず見惚れていた。


「あー……いい………」


雨に打たれ続けているレミナの口からついそんな声が漏れる。


その声を聞いて、ハッと我に帰った立香は慌ててレミナの元へと歩き出した。


「ちょ、ちょっとレミナ!どうしたの、急に!」


彼女の手をとり、荷物の置いてあるガゼボに戻る立香。

ずぶ濡れになった彼女の姿に少し顔を赤らめ視線を逸らしながら、とりあえずとポケットからハンカチを取り出すと彼女に手渡した。


「ありがとう、立香」

「どうしたしまして。それにしてもさっきのアレなんだったの?」

「あー……そっか、言ってなかったよね。実はあたしね、ああやって雨の中に佇むのが好きなんだ」

「傘も差さずに?」

「そう、ああやって降り注ぐ雨を浴びてるとね、悩みとか不安とか忘れることができたり、頭を整理したいときに深く集中することができる感じがしてね」


───そう静かに語るレミナ。

自分はきっと水が好きなんだろうと。

なのでこうして心を落ち着かせたり、周りに人影がないときは、『濡れる』という状態になってみたいのだという。


「そっかー……。あ、でも俺もなんとなくその気持ちわかる気がする」


それを聞いて、ホント!?と反応するレミナ。


「う、うん。帰宅してたときに今みたいに通り雨が降ってきて咄嗟に雨宿りしたんだけど、なんかこう……気がついたら雨の降ってる目の前の景色をボーッと眺めてたんだよね……。あ、あとお風呂でシャワーを浴びてるときとか落ち着くのとかそれっぽいかも」


立香の隣に座っているレミナはそんな立香を見て、思わず笑みが溢れた。


「───なんか、立香がみんなに慕われてる理由わかった気がする」

「……え?」

「ううん、なんでもない」


雨音で消えてしまうような声で、そう口にしたレミナは再び立ち上がると……


「ところで、さっき雨に打たれてるあたしに見惚れてなかった?」

「えっ!?い、いや……それは………その……はい」


───ふふ、かわいい。


「───せっかくだからさ、立香にだけ特別に見せてあげる。雨の中のあたし♡」


そう言うとレミナは渇ききってない格好のまま再び屋根の下から雨の降る公園へと出ていった。

雨水はたちまち彼女の全身を余すことなく、これでもかと濡らしていった。濡らしてくださいと言わんばかりに両手を広げて空を見上げる姿に、立香の手は自然とポケットに忍ばせていた自らの携帯端末を取り出していた。


しばらくするとレミナは以前、立香にも見せたことのあるダンスをその場で披露し始めた。とあるアイドル特異点の話を聞いたレミナが、立香の前でちょっとだけと披露したのもであった。


────静かに、それでいてところどころエロティックさが溢れ出るような踊り。

綺麗な髪から、コートから、スカートから、次々と滴り落ちる水滴は彼女の舞に合わせて飛んでいく。

いつの間にか彼女の足元にできた水溜まりはお気に入りのブーツのステップに合わせて飛沫をあげる。

そういう振り付けとはいえ、普段の彼女ならまずしないであろう濡れたアスファルトに座り込んだり寝そべったりしては彼女の体を限界まで濡らす。

途中何度か脚をあげたりターンをしたタイミングでスカートが翻っては彼女の下着がチラリと見え、上に至ってはずぶ濡れなのでうっすらと透けて見えていた。

以前披露したときとは比べ物にならないほど色気溢れるその踊りに立香も夢中になって見ており、手にした携帯端末にもしっかりと保存されていた。彼の視線を独り占めしている事実にレミナはこっそり歓喜していた。


雨の降る特別なステージでぐしょ濡れになりながら踊る彼女は、いつものひとりで水を浴びているときとはまた違った────情熱的とも言える踊りをひとりの少年へと送ったのであった。

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