雛鳥は幸せに眠る

雛鳥は幸せに眠る


ピピピ ピピピ 38.2℃


「……どうしよう」

早朝、自分の部屋で頭を抱える、風邪を引いてしまった


「まずアコに連絡して…ああでも、書類ならできるかな……えっと、携帯は…」


プルル ガチャ


「ハイ!どうしましたかヒナ委員長!」

アコがすぐに出る、電話をかけたのは私だが、ワンコールもせずにでた……


「アコ?ちょっと体調が悪くて……しょるいだけ…こっちに……バタッ」


「!? ヒナ委員長!大丈夫ですか!委員長!?」


日頃の疲れが祟ったのだろうか……気づけば私の意識は闇に落ちていた



───ん、私…そうだ、熱が出て…アコに連絡して…


"あ、起きた?大丈夫かい、ヒナ"


「…え、せん、せ?」


"うん、先生だよ、アコに呼ばれて…熱が出てるみたいだったからね"


他でもない、信頼する人の、安心できる声                    そして状況を理解する


「…ごめんなさい……迷惑をかけてしまって…」


"迷惑なんて、そんな事無いよ、おかゆを作ったんだけど、食べられそう?"


「……うん」


"よかった、はい、あーん"

そう言って先生はおかゆをすくったスプーンをこちらに向ける


「……先生…さすがにそれは…」


"あ、ごめん…自分で食べれる…?"


「ええ……」


そんなやり取りをし、自分でおかゆを口に運ぶ


「うん…おいしいわ……先生…」


暖かく、優しい味、こういうのを…愛情と呼ぶのだろうか……


"そう?よかった…食べたらゆっくり休んでね、この後イオリたちも来るって、    しばらく一人だけど大丈夫かい?"


「え、先生…帰っちゃうの…?」


"うん…仕事もあるしね…"


…わかってる……

先生の仕事を邪魔してしまったことも、こうして来てくれるだけ

優しいことも、だけどその時は風邪で心細かったのもあったのだろう


……少しだけ、ワガママを言える気がした


「先生…お願い……もう少し、そばにいて……」


"! うん、わかった…イオリ達が来るまで、そばにいるからね"


そう言って先生は手を握ってくれた…包まれるような安心感の中、私は眠りに落ちた


───1時間後

「ヒナ委員長!だいじょうぶです、か…」


"しー、しー"


"もう少し寝かせてあげて、こんな言い方はアレだけど、

せっかくだし日頃の分ゆっくり休んでもらおう"


「そうですね…あと先生ヒナ委員長の手は私に譲ってください」


"ブレないねアコは……"


「すー…すー…」                              雛鳥は、幸せの中眠っていた

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