雑居房

雑居房


雑居房


ATTENTION

・鰐虐

・モブレ

・オリキャラ

・インペルダウンの捏造

・他の方のSSと矛盾が生じるが性癖の数だけ世界線がある










0

 おれは看守という仕事に誇りを持っている。おれらが海賊共を閉じ込めておくことで安心して眠れる人がどれだけいることか。奴らが海に出るだけで眠れない人々がどれだけ多いことか。おれは、被害者を救えるかもしれないこの仕事に、誇りがある。

 そんな仕事をする中で、サー・クロコダイルのことは密かに尊敬していた。海賊行為は許されることではないが、海賊を狩り牽制することでアラバスタ王国の平穏は保たれている。そう信じていたからだ。

 しかし実態は違った。奴は国の乗っ取りのためだけに国民を傷つけ、人々を騙し、社会的地位まで確立した。仕事の合間に色欲に溺れてすらいたらしい。そんな記事を至る所で目にした。この件に関しては被害社らしいが、それでもやはり海賊にはろくな奴がいない。

 世界中を騒がせたクロコダイルは今日、インペルダウンへ投獄される。LEVEL6でもおれの管轄である一角に入ることとなった。

 引渡しに行ってみると、奴は噂に聞く通りの男だった。2m以上ある巨体。金の光沢を放つフック。大きな傷の目立つ顔は苦痛に歪んだ様子はなく、『風呂』など無かったかのように澄ましている。それどころか周囲を威圧するような何かがあった。海楼石の手錠をしているから能力や覇気ではない。元七武海が持つ風格というものなのだろう。

 奴の双眸がおれを捉えた時だった。

 その瞳が微かに揺らいだ。

 次の瞬間には元の表情に戻っていたが、あれは確かに恐怖の顔だった。とっさに記事の内容を思い返す。

 あれが本当ならクロコダイルはドフラミンゴに襲われ──金髪の男に恐怖を抱くようになった。おれは生まれつき金髪だ。

 胸元に目を走らせれば、そこには2つの突起があった。手が体の前で拘束されていることもあり、その胸は強調されてしまっている。おれの視線が気になったのか、奴は少しだけ、本当に少しだけ目を伏せた。

 噂を裏付けるような事実がこの一瞬でどんどん起こる。モルガンズの記事とはいえ、今度のは信用できる──か?

 面白い。確かにそう思った。

 おれはただの看守だが、クロコダイルに──元七武海という大物海賊に罰を与えてやれるかもしれない。




1

 クロコダイルをどの牢に入れるかなどの一切はおれに任されている。凶悪犯ということもあるし、「無限の退屈」の効果を上げるという意味では本来なら独居房行きだ。しかし今回はクロコダイルの弱みの件がある。それを利用しない手はないだろう。


「ここがお前の牢だ。入れ」


 そう言って案内したのは6人用の雑居房だった。6人用とはいえ既に7人収容されていて、奴を含めると8人が収容されることとなる。 

 別に定員オーバーくらい珍しいことではない。重要なのは7人共に非能力者であり奴の手錠に影響を及ぼされないこと、全員が過去に雑居房内で「問題行動」を起こしていること、そして内2名は金髪であることだ。さすがにクロコダイルよりも大柄な囚人は用意できなかった。そもそも2m越えなんて数が少ないし、牢の移動がそこまで大事となると上に何が目的なのかバレかねない。それでも筋肉質で一般的に大柄な男たちを集めた。

 クロコダイルは雑居房の面々を見て一瞬足を止めたが、すぐに歩みを再開させた。

 雑居房の奴らはその様を下卑た笑みを浮かべて眺めている。おれが牢を閉めると、何人かはクロコダイルに下品な言葉を投げかけた。

 こいつらは例の記事を知っている。というか、おれが差し入れた。賄賂を渡すことで看守から嗜好品を手に入れる輩は少なくないが、看守自らとなるとこいつらの他にいないのではないだろうか。

 今から夜が楽しみだ。




2

 座ったまま眠っていたサー・クロコダイルは、物音で目を覚ました。雑居房は人が多く、どうにも気が休まらない。だが寝ないわけにもいかず、仕方なく壁にもたれて寝ていたのである。

 灯りのない雑居房では目が慣れるのに時間がかかり、物音の正体を理解するのに少し時間を要した。

 物音にそこまでの興味を抱いたわけではないが、正体不明の音がしたとなると落ち着かない。

 しかし物音の正体がわかった瞬間、クロコダイルは戦慄した。

 囲まれているのである。

 背には壁、左から右にかけての全方位には7人の囚人たち。誰も彼も筋肉質で大柄で、しゃがんでいるクロコダイルより大きく見えた。

 鼓動が速まり、冷や汗が噴き出す。目の前でニヤつくあの男の顔がフラッシュバックする。

 クロコダイルの表情に大きな変化は見られない。しかし彼は確実に、パニックに陥っていた。

 海楼石によって弱体化させられているとはいえ、クロコダイルは元七武海である。普段であるなら、格下7人を相手に引けを取ることはなかっただろう。

 だが今のクロコダイルは冷静さを欠いている。あれよあれよという間に、床に組み敷かれてしまった。

 手は鉤爪と手錠ごとバンザイのような姿勢で押さえつけられ、ただでさえ疼く胸が張る。両脚は開いた状態で固定された。腕と足は合わせて3人の男に押さえつけられており、恐怖で力の入らないクロコダイルにはどうしようもない。

 仰向けのクロコダイルの視界に、金髪頭が入る。組み敷く間に指示を出していたのはこの男だったので、この7人のリーダーなのだろう。


「おい、てめェら。一体何のつもりだ」


 本心を悟られないよう、クロコダイルは気丈に声を出す。これはクロコダイルが今できる精一杯の威圧であったのだが、男たちに怯む気配はない。むしろ愉しくなってきたようである。


「そりゃあ、仲良くしようってだけさ。なァ?」


 金髪がそう言うと、他の囚人たちは頷いた。囚人は全員嫌な笑みを浮かべていて、クロコダイルの胸の突起を見つめている。


「それにしちゃ手荒な挨拶だな。悪いことは言わねェ。とっとと手を離しやがれ。後悔することになるぞ」


 クロコダイルは四肢を押さえられた状態で囚人たちをねめつける。しかしそれは彼らの情欲を煽るだけで、クロコダイルを助けることはなかった。それどころか男たちは声を出して笑い始める。


「馬鹿にしてんじゃねェ。おれは本気だ」


 焦ったクロコダイルが声を荒らげると、金髪がニヤニヤしたまま手を伸ばしてきた。


「馬鹿にするなって……こんなに乳首おっ勃ててんのにか?」


 男が服の上からクロコダイルの乳首を軽く押す。それだけで腰に響く痺れが走った。


「……っ」


 クロコダイルは嬌声を噛み殺すが、それでは「感じています」と宣言するようなものであり、囚人たちは優位を確信した。


「ははっ。噂通りだな。まるで売女じゃねェか」


「何ふざけっ、た、ことを……。

 ッ……、ふ。……っ!」

 

 男は話しながらクロコダイルの乳首をこねくり回す。押され、つままれ、撫で回され、快楽が体を駆け巡る。

 これはクロコダイルが望んでいることではない。気持ちよくなりたいなんて微塵も思ってはいない。ましてやこんな奴らの手で。しかし実際にクロコダイルは感じ、頬を赤く染め、息は荒くなり、この身をよじらせている。滲む汗が冷や汗でないことは、もうわかりきっていた。

 心と体が矛盾し、不安を覚える。あの時と同じだ。

 シャワーの水滴で。衣服が擦れて。何かにぶつかって。絆創膏を剥がして。それで感じるのも屈辱的だが、まだ体の反射として理解できる。しかしあの時も、今回も、嫌う人物のしたことで感じてしまっているのだ。快感など望んでいないのに体が反応してしまう。


「おいおい。感じてんだろ? 声を押し殺さなくたっていいじゃねェか」


「こ、んなん、で……、っ感じ、るはず……がっ……っねェだろ……」


 クロコダイルは嬌声を上げまいと腹を括る。服の上から弄られるだけで、体は快感で小刻みに震えている。しかし声さえ出さなければ、今この体が抱える矛盾は収まる気がしたからだ。

 しかし、


「寂しいこと言うなってさァ」


 そう声がしたと思うと、上衣が勢いよく捲り上げられた。肌に密着していた服が一気に剥がされ、乳首に強くて甘い衝撃が走る。


「うあッ!」


 完全に不意打ちで、耐えようとする間もなくクロコダイルは情けない声を上げてしまった。気づけば腰も浮いている。ある囚人はそれを笑い、またある囚人は卑猥な言葉をかけた。


「生で見るとデカい乳首だな。本当に自分じゃ弄ってないのか?」

「女でもこうはならねェよ。なあ?」


 決意はそうそうにへし折られ、弱点とも言える乳首を直接見られたこともあり、クロコダイルの目にじわりと水の膜が張った。

 ──いや、それだけはダメだ。

 泣き顔を見られるなんて屈辱、もう二度とあってはならない。

 しかしクロコダイルの心情に関わらず、囚人の指は伸びてくる。

 先ほどまでは布越しにしか与えられなかった刺激が、今度は直に来る。

 またこねくり回され、押され、潰され、強い刺激が来ることを恐れたクロコダイルは思わず身構えた。

 だが予想に反して男の指は乳首ではなく、乳輪の縁に触れる。


「……っ」


 今までとは違う感触に思わず息が漏れた。

 指は乳首に触れないギリギリのところを円を描くようになぞっていく。直接の刺激はないものの、乳首により意識が向いてしまい体はさらに敏感になってしまった。それどころか、声さえ堪えきれなくなっていく。


「……っ。っあ……! ん、く……ッ!! ぅ……」


 ただ周囲をなぞられるだけ。それだけで快感を感じる体になってしまった。その事実がクロコダイルの羞恥心を煽る。

 自分は今、どんな顔をしているのだろう。

 迫る刺激の中、ふとそんなことに思い至る。今の自分は情けない顔をしているに違いない、と。

 実際クロコダイルは口を半開きにし、そこから涎を垂らし、髪は乱れ、体は赤く火照っているという普段であれば絶対に見せない姿をしていた。囚人が言ったように、まるで売女である。いや、金のため働く彼女らと一緒にするのは間違っているかもしれない。サー・クロコダイルの出で立ちは、さながら色狂いであった。

 僅かな刺激にもこんなに反応する人物は、夜の街でもそうそう目にはかかれない。しかしそれを最も自覚しているのはクロコダイル本人だろう。


「ッ、あ……。くっ……ふ、っあ!」


 声を殺そうにももうどうしようもなく、嬌声は夜の雑居房に響きわたる。

 それに気を良くした囚人は、乳首を挟むように指を添え直した。そしてそのまま扱くように掻くように、乳首を挟んだまま胸を往復する。


「あっ!! っ、あ……」


 強まる刺激に声が大きくなる。それに伴って囚人たちの嘲笑も大きくなっていった。


「感じてないって言ってたの、誰だったっけ?」


 金髪男が煽るように尋ねる。


「んッ……! か、んじて……っ!! な、っん……か。んぁッ!!」


「感度だけじゃなくて声まで女かよ。いや、それ以上か」


 その言葉にドッと笑いが起きる。慰みものにされている事実を突きつけられ、クロコダイルの頭は真っ白になった。

 ──七武海にまでなったおれが。この、おれが。遥かに格下の相手に弄ばれている。

 全てはあのクソ野郎のせいだ。あの日体を変えられたせいだ。おれのせいじゃない。だが、そんな言い訳は何の役にも立たない。

 今よがり、嬌声を上げているのは他ならぬ自分なのだから。

 下半身が疼き、反射的に腰が浮く。熱を持った性器は、とうに勃起していた。そればかりか囚人服は体液でぐしょぐしょになっている。性感に合わせて体は動くが、逆に強い快感のせいで体に力が入らない。当初恐怖で動かなかったはずの体は、快感に動かされ、快感に無力化されている。

 ──これがおれの本性なのか?

 無理やり押さえつけられ、性感帯を弄られ感じる。それがおれなのか?

 クロコダイルは自分自身すら、信じられなくなっていた。


「は……っ。う、あ……ッッ!!」


 快感で頭がクラクラして時々意識が飛ぶ。乳首にしか集中できないせいで気にしてすらいなかったが、きっと何度かイッているはずだ。

 恥ずかしい。こんな姿、誰にも見られたくない。

 そう思い顔を隠そうにも押さえつけられた手はビクともしない。クロコダイルはだらしない顔を7人の囚人全員に見せていた。

 見せたくない。見ないでくれ。見るな。

 そう思った時、急に両乳首がつねられた。

 今までのものとは比べ物にならない衝撃が腰に響く。


「ああッ!! 〜〜〜〜〜ッ!!」


 クロコダイルの嬌声が、一際大きく響いた。それはもはや絶叫に近かった。

 背は反り、性器からは白い液体が勢いよく飛び出す。そして次の瞬間には全身から力が抜け、腰から床に落ちた。

 全身の痙攣が止まらず体は小刻みに震えている。精液が出きっていなかったのだろう。性器からは白濁液がチョロチョロと漏れていた。

 おそらく人生で最も情けない姿を囚人たちの前で晒してしまった。そのことにクロコダイルの目からは涙が溢れる。


「て、めェっ……! らっ……ァ、んぁッ……! はァ……」


 無様なりにも文句を言ってやろうとも思ったが、快感の余韻で嬌声紛いの言葉しか出てこない。

 囚人たちが何か言葉を投げかけてくるが何も聞き取れない。

 ぼやける視界で人影が動き、右の乳首に指が添えられた。


「おいっ、まッ……! くぁっ、ぅ……っ。ッああ!!」


 乳首が押され、つねられ、指の腹で撫でつけられ、誤魔化しようのない嬌声が上がる。快感が抜けきらないままに新しい快感を与えられると、体の気持ちよさについていけなくなる。一瞬だけ味わう最大出力が絶え間なく与えられる気分になり、頭がどんどんおかしくなる。

 狂ったように喘いでいると、今度は左乳首にざらりとした感触があった。滑りがあり、生暖かい。それが舌だと気づくのに、そう時間はかからなかった。


「今度はッ、な、にィッッ! をッ……! ふあっ……。ッ……くゥ……ッあ!!」


 胸の突起は舐められ、甘噛みされ、大柄な男の肺活量で勢いよく吸われる。その度に女のような声が上がった。


「ふっ、……は。ん、……ぅ。あっ! や、めろっ……!! ッう……」


 今度は見ているだけで欲求不満になっていた残りの囚人たちが脇や横腹、体の弱い所を舐め始めた。もはや上半身は全て、敏感な性感帯に成り下がっていた。


「ぅッ、あ、あァッ……!! あああああ!!」


 絶え間ない責め苦にクロコダイルはここがどのような雑居房であるのかを理解する。

 夜はまだ長く、これから幾度も巡ってくる。

 その事実が今はただ、ひたすらに堪えるのだった。


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