限定4カンセットSS
※距離感のバグった仲良しな親友です
※解釈違い等ありましたら本当に申し訳ありません。素敵な概念の一端でも形にできていると幸いです
※ペパアオはいくらあってもいいと思います。ほんの少しでも楽しんでいただけるとなによりです
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「ペパー!今週のお店巡りはローリングドリーマーに行かない?」
アオイの味覚が治ってから毎週恒例となっている飲食店巡り、そのお店を決める放課後の会議にて候補にアオイはローリングドリーマーを挙げた。いつもは2人で食べたいものを話し合いながら決めるので候補の店が初めから挙げられることは珍しい。
「急だな!?勿論いいけど何かあったのか?」
「実は、この子がお寿司が食べたいって」
「スシスシー!」
元ヌシのシャリタツがボールから飛び出して跳ねる。精一杯のアピールにペパーは表情を緩ませた。
「オマエ、それは共食いってヤツじゃねー?」
「オレヌシー!スシー!」
「この子自分の姿に似てるお寿司が気になるみたいなの、だからダメかな?」
「当然いいぜ!……ここならテーブルシティにあるからすぐにでも行けるな。明日にでも行くか?」
「うん!」
こうして2人はローリングドリーマーに行った。ひとつのテーマにそった寿司の見た目は芸術的で味も満足できるものだった。
「見た目の割に辛かったけどなかなか美味かったな!」
「わたしの食べたお寿司は甘くて見た目も可愛くて良かったよ!………でもピカチュウとイーブイって鳥モチーフなのかな?うーん………テラスタイプがひこうだったり?」
「なるほどな?……いや寿司のテラスタイプってなんだよ!?」
「スシスシー!!」
こうしてこの日は和やかに終わった。
そして明くる日。
「ペパー!今週末のお店巡りもローリングドリーマーに行かない?」
ペパーの部屋に入るなりアオイはそう持ちかけた。既視感のある内容にペパーは口元を綻ばせる。
「オマエ寿司気に入ってたもんな、いいぜ!時間あるならこれから行くか?」
「ペパー、違うの!フリッジタウンのローリングドリーマーにはそこ限定のお寿司があるんだって!」
「そんなのあるのか!?……限定ってことは早めに行ったほうがいいかもな」
「うん、だから今週末のお昼前に行かない?」
「そうだな、イキリンコタクシー予約しておくぜ」
「ありがとうペパー!限定のお寿司ってどんなのだろう、楽しみ!!」
「限定ってことは手間がかかってて量産できないのかもな。プロが手間暇かけた一品か、どれだけ美味いんだろうなー」
アオイは期待に目を輝かせ、ペパーは職人のこだわりに思いを馳せた。
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こうして2人はフリッジタウンのローリングドリーマーにやって来た。
「わー、こういうお店って初めてだね」
「テーブルシティの店とは雰囲気ちがうよな」
少しお高いお店らしくメニューには品名と説明、値段のみが記載されており写真はない。通された個室にて2人は落ち着いた雰囲気を壊さないように小声で話す。
「オレは『限定4カンセット 〜霜〜』にするぜ。シェフ厳選って気になるよな」
「じゃあわたしは『限定4カンセット 〜雹〜』にするね。おすすめらしいから絶対美味しいよ」
それぞれ注文して寿司を待つ。
「それにしても寿司って色々な形があるよな」
「見た目が色々あるから見てても楽しいよね」
「珍しいよな、生の魚や肉団子をライスにのせる料理なんて」
「もともとは別の地方の料理なんだよね?地方ごとに食べ物もガラッと変わるっていうし、旅行に行って色々な場所の料理を食べてみたいね」
「そうだな、時間作って食べに行こうぜ」
「うん!絶対行く!まずはここのお寿司だね」
期待に胸をふくらませる2人。そんな彼らの前に並ぶのはワサビと唐辛子をふんだんに使用した寿司と柑橘系スライスが乗せられた寿司。
「お寿司って色んな形があるみたいだけど、こういうのもよくあるのかな…?」「………多分違うちゃんだぜ………」
2人は困惑しつつも寿司を口に運ぶ。取り皿もついてきたので1カンずつ半分こして食べたが、刺激的な味に2人はそれぞれ相応なリアクションを返した。
「なんというか、すごかったね……でも雪みたいにすっと解ける感じは新鮮だった!」
「すげえ味だったけど後には引かない………これがプロのワザってやつか?」
帰りのイキリンコタクシーの中で感想を言い合う。
「ペパーのあんな顔、初めてみたかも」
「あの寿司激辛ちゃんだったからな。でもオマエも見た事ない顔してたぞ?すっぱいって顔に書いてあった」
「想像よりすっぱくてびっくりしたんだもん!すぱスパイスとも違う味だったんだよー」
珍しい料理に話が弾む2人。タクシーの中の話し声が途切れることはなかった。
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「昼飯が早かったから午後が空いてるよな?ついでにどこか行くか?」
「それならパティスリー ムクロジでケーキ食べない?なんだか甘いものが食べたくなっちゃった!」
「この時間のテラスは混むかもな。今日は持って帰るか?」
「そうだね。とりあえずメニュー見ようよ!」
早速2人でスマホロトムを見ながら午後の予定を立てる。小さい画面を覗き込む為にほぼ隙間なく座る2人だったが、その距離の近さを指摘する人間はここにはいないのだった。