闇の夢、ありふれた夜
モテパニ作者ダークドリーム「えっと後は…」
ダークドリームがおいし〜なタウンに住み始めてしばらく、品田家でやっかいになっているダークドリームは品田家の手伝いをするようになっていた。
そして今は買い出しの最中である。
しばらくして目的地へ辿り着く。
湊「おおー!リムちゃんいらっしゃい!」
ダークドリーム「こんにちわ陽佑」
彼は湊陽佑、おいし〜なタウンにて青果展を営む若き店長。
以前伝説のクレープを幼馴染に食べさせてやりたいと悩んでいるところを拓海に助けられてからちょくちょくサービスしてくれており、それもあって品田家の行きつけの店でもある場所で、ダークドリームもまた彼とは顔見知りとなっていた。
湊「ははー、やっぱこんな年下の子に呼び捨てされるのはちょっと変な気分だなー」
ダークドリーム「ごめんなさい、そういう礼儀は習ってなくて…」
湊「いやぁこっちこそ悪い。海外じゃそういうもんなんだろ?気にしないでいいさ。それにしてもここのところずっとリムちゃんが買い出しだな。女の子に任せて拓海のやつは何やってんだ」
ダークドリーム「拓海も拓海でそれなりに忙しそうよ。それよりこれが欲しいんだけど」
買い出しメモを頼りに欲しい商品を示すダークドリーム。
その途中店の奥から何かが聞こえる。
『映画〇〇オールスターズ!いよいよ上映開始!』
湊「あ、いっけね。テレビつけっぱなしだったか?」
ダークドリーム「今のって…」
湊「ああ、今度やるらしい映画の宣伝みたいだな。リムちゃんもあれ興味あるかい?」
ダークドリーム「ええっと、映画は観た事無くてどういうものかわからない」
湊「そうなのか、よしちょっと待ってろ」
そういうと湊は奥に引っ込んで何かを持ってくる。
湊「これ持っていきな」
そう言って湊から差し出されたのは何かのDVDだった。
ダークドリーム「これは?」
湊「映画のDVDだ。リムちゃんにやるよ」
ダークドリーム「いいの?」
湊「昔買ってもう観なくなったもんだ。構わねえよ」
ダークドリーム「へえ…」
そうしてDVDを受け取り買い物も済ませたダークドリームは帰宅する。
〜〜〜
拓海「(疲れた…)」
その日の夕方頃、予定を終えた拓海は部屋でくつろいでいた。
ダークドリームが来てから家の手伝いは減ったが、受験を控えた身であり以前より増えた人付き合いなどで周りには見せないが疲れが溜まる生活を送っていた。
特に今日は少しばかり普段より予定が重なり疲労もその分大きかった。
そうしているとノックが聞こえる。
ダークドリーム「拓海、ちょっといい?」
拓海「んー、どした」
ダークドリーム「これ観たいんだけど、見方教えてくれる?」
そう言って湊から受け取ったDVDを渡す。
拓海「どうしたんだこれ?」
ダークドリーム「今日買い物で陽佑にもらったの」
拓海「湊さんから?今度お礼言っとかないとな」
ダークドリーム「それでそのでぃーぶいでぃー?の使い方は習って無いから見方がわからないの」
拓海「そうか、この作品俺も観た事無いし夕飯後に一緒に観るか?今日母さん遅くなるって言ってたしリビングで観ようぜ」
ダークドリーム「そう?ならお願い」
そう言って拓海とダークドリームは映画を観る約束をする。
その影には様子をこっそり見ている者が。
ましろ(妖精)『…』
〜〜〜
ましろ(まし拓)「うーん」
ましろ(常識人)「どうかしたの?」
ましろ(まし拓)「うん、時間があったから拓の家行こうかなって思ったんだけど、妖精のわたしが家の近くにいないみたいで」
ましろ(常識人)「なんだか慣れちゃいそうだけどほんとうにそれどういう仕組みなの?他の自分の場所までわかるの?いや他の自分って言い方がもう麻痺しちゃってる気がするけど」
ましろ(まし拓)「?、自分の居場所がわかるのがおかしいことかな?」
ましろ(常識人)「それはそうだけど!」
〜〜〜
そして夕飯後拓海は約束通りレコーダーをセットしてDVDを再生する。
その内容はハプニングに巻き込まれた主人公がそれを解決するため奔走するポピュラーなものだった。
ストーリーもまたテンプレを守ったものであり、わかりやすくシンプルに面白い。
湊が映画初心者のダークドリームに薦めるのも納得だ。が、
拓海「ふわぁ…」
テンプレ通り。
良く言えば王道、悪く言えばありふれたものであり、その初めて観るのにどこかで観たような内容はエンタメに肥えた現代の若者たる拓海にははっきり言えば退屈なものであった。
それでも普段ならもう少し興味を持ったかもしれないが、いかんせん今日の拓海は疲れており興味の喪失とともに瞼も重くなっていく。
そしてとうとう意識を失うと、その重心は隣のダークドリームの方へと傾いた。
ダークドリーム「!…拓海、寝てるの?」
びっくりして一瞬起こそうとするが、拓海が忙しいのをおそらく誰よりも知っている彼女は少しゆっくりさせる事にした。
ダークドリーム「…映画が終わるまでよ」
そうしてダークドリームは肩に重みを感じながらそのなんでも無い時間を過ごすのだった…