【閲覧注意】死が2人を分かつとも女はドラムを叩く

【閲覧注意】死が2人を分かつとも女はドラムを叩く

Nera

DANGER!!

この小説には以下の要素が含まれます

・過激な描写、内臓描写、猟奇、生殖行為、ネクロフィリア

1つでも抵抗がある場合は閲覧しないでください



それは曇り空の日だった。

1人の若者が幼馴染を庇って命を落とそうとしていた。



「ルフィイイイイイイ!?」



庇われた紅白髪の女は必死に傷口を両手で押さえた。

目の前にその惨状を作り出した元凶すら目に入らなかった。



「ああああああああああああああああああああ!?なんで!!!」



理不尽に振り回された女は再び、悪夢に突き落とされた。

むしろ悪夢だったらどれほど良かった事か。

現実でルフィを失おうとしている彼女は必死に拒絶して出血を抑えていた。

その無様さを見た男は鼻で笑って取り乱す女に手を掛けようとした。



「…ごがっ!?」



調子に乗った男は眉間を撃ち抜かれて地面に倒れ込んだ。

狙撃したヤソップは急いで赤髪海賊団を急かした!



「急げ!!ルフィが死んじまうぞ!!」

「分かっている!!」



ウタを9歳まで育てた赤髪海賊団は必死に走った。

医師のホンゴウは、抱えるだけの医療道具を持参して凄惨な現場に駆け付けた。



「あっ!いやああ!!誰か!!」



血が止まらないどころか腹部に空けられた場所から内臓が飛び出していた。

ウタは血を止める為に圧迫した結果、内臓が傷口から押し出されてしまったのだ。

弾力性がある熱い内臓が外気に触れて急速に覚めていくのが嫌でも理解できた。



「ウタ!!」

「…ホウゴウ…さん?ルフィが!!ルフィが死んじゃう!!早く助けて!!」



真っ先にルフィに駆け寄って来たホウゴウを見てウタは助けを求めた。

すぐに治療するつもりだった彼だが、もう手遅れなのは瞬時に理解できた。

だが、優しい娘にこんな理不尽な現実を見せるわけにも行かず、延命処置をする。



「う、ウタ…」

「ルフィ、大丈夫!!世界一の医者が来たんだよ!!すぐに元通りになるよ!!」



必死に腸を傷口の中に詰めていくウタはルフィの声を聴いて必死に励ました。

愛情ゆえに憎しみが増幅していたが、それでも彼女は赤髪海賊団の力を信じている。

しかし、当の本人は傷の感触や本能で自分が助からないと悟った。



「すまねぇ……ちゃんと守って…られなく…」

「喋らないで!!終わったら肉を食べさせるから!!それまでしっかりして!!」



双瞼から涙を垂らして顔面を濡らすのを感じてルフィはなんて声をかけるか迷った。

最後の最後までウタを心配した男は、駆け寄って来る1人の男を目撃した。



「しゃ、シャンクス……」

「ルフィ!安心しろ!刺客は全部やっつけた!!」

「あ、ああ…りがと……」



いつでも前向きな思考をするシャンクスですら目を覆いたくなる状況だった。

戦力を集中させずに別動隊を動かして入れば間に合ったはずだ。

またしても選択肢を間違えたシャンクスを励ますようにルフィは呟いた。



「う、ウタを……頼む」

「ああ、任せておけ」

「やだ!!やだああ!!!そんな事を言わないでよぉ!!」



駄々を捏ねた子供の様に泣き叫ぶ女は精神崩壊の予兆を見せていた。

それに気付けないシャンクスはルフィと最後の約束をした。

するとそれに安堵したのか瞼を閉じて少しだけ身体を痙攣させて動かなくなった。



「ルフィ?ねえ!!ルフィってばああ!!」



かつて肉体が死んでも精神が生きていれば問題ないという価値観を持っていた歌姫。

今まで一緒に居てこれからも一緒に居てくれるはずだった幼馴染が動かなくなった。

幼馴染が動かなくなったせいで、これが【死】と認識した彼女は必死に否定した。

慌てて傷口を塞ごうとした娘を屈強な漢たちが取り押さえて引き離した。



「放してぇえ!!ルフィが死んじゃう!!!」

「ウタ!!ルフィは死んだ!!死んだんだ!!」

「ベック!!馬鹿にするのもほどにして!!ルフィと約束したんだよ!」



天竜人という絶対的権力者に狙われた時、救ってくれた男。

いつでも彼女を励ましてくれた幼馴染と約束していた。

「後悔せずにずっと一緒に生きていく」と。

その誓いを胸に彼女はずっと生きて来れたのだ。



「ウタ、現実を受け入れろ。もうルフィは2度と動かないんだ…」



副船長のベックは取り乱す娘に冷酷に事実を告げた。

船長に代わって鬼となりウタを叱るのが彼の役目だった。

久しぶりに彼に威圧された彼女は、最後に残っていた理性を失った。

ベックの言葉が正しいと本能が理解しているからこそ防衛本能が働いた。



「とにかくルフィをこのまま寝かせるわけには行かん。誰か回収を…!?」



ホンゴウがルフィの亡骸の回収を手伝ってもらおうとするとウタが駆け寄って来た。

治療で助けられなかった自分を責めに来たかと思ったが違うようだ。

持参したバックから彼女はガラスの小瓶を抜き取ってルフィの元に駆け付けた。



「ルフィ!!私、諦めないから!!」



もしも逃亡生活が始まって間もなければウタは後追いをしただろう。

だが、後悔しないで生きていくと誓った以上、彼女は死ねなかった。

絶対的な権力者である天竜人に狙われた時は、女として生まれて後悔した。

ただ、今回だけは彼女は女として生まれてよかったと感じている。



「おいウタ…」



シャンクスは愛する娘の名前を呼びかけたがすぐに様子がおかしいと見抜いた。

何故か傷を抑えるわけでもなく彼女はルフィの亡骸の前に座った。

そしておもむろにズボンを両手で掴んで力づくで脱がせた。



「ウタ?」

「お前何を…」



ハウリング・ガブやビルディング・スネイクは目を疑った。

彼らの脳裏には歌を楽しく歌う9歳児のウタの印象が未だに残っている。

それなのに彼女は何故かルフィのズボンを脱がした事に疑問しかなかった。



「ふふふ、相変わらず不思議な形をしてるよね」



その勢いで下着を脱がした彼女の眼前には男特有の部位が見えていた。

逃亡生活時代では入浴時間や水を節約するためによく見かけていた物だ。

当時はそれどころではなかったが、いつかウタを愛してくれる存在のはずだった。

だが、既に彼女の眼中にその器官は無かった。

ウタが欲しいのは、もっと奥にあるものだ。



「あああああ!!はぐっ!!」



縮れた棒状の器官に正気を失ったウタは思いっきり噛みついた。

まだ温かいその器官は、小便と垢によって濃厚な匂いをたっぷりと彼女に与えた。

だが、それに怯まないどころか武装色の覇気を纏って噛み切ろうとした。

血液や体液が口内に流れ込んで異物感から無理やり身体がそれを吐き出させた。



「ごほっ!!ごほごほ!!ああああ!!あぐっ!!」



鉄の味と小便特有の苦みと塩の味が口内に広がるのを気にせずに再び噛みついた。

ゴム人間であるので弾力性があって噛み切れずに両手を肉棒に突き刺した。

猛獣の様に顎を動かしていると、耐え切れなかったのか肉が半分ほど千切れた。

すぐに吐き出して両手で掴んで思いっきり引っ張ると肉棒は耐え切れずに折れた。



「……ウタ?なあウタ?ウタ?」



可愛い娘がこんな蛮行をするわけがない。

誰もがそう思いたかったが、たった今千切られた肉棒が宙を舞って地面に落下した。

世界を滅ぼす力があるとされる赤髪海賊団は、たった1人の女に無力化されていた。

シャンクスはこっちに戻って来るまで娘の名前を呼び続けていた。



「はあっぐ!!あぐっつう!!」



野犬が獲物にがっつくように肉棒を根元を何度も噛んで傷口を広げた。

未だにお目当ては見つけられず苛立ったウタは、傷に両手を突っ込んだ。

意外と血は噴出せず代わりに透明な液体と黄色の液体が彼女の顔を濡らした。

匂いを何度も嗅いで本能が『それ』じゃないと否定した。

改めて彼女は傷口に手を突っ込んで捜索した。



「あははははっははあああ!!なんだ金玉っていうから黄金だと思ったのに」



肉棒の根元に繋がっていた皮袋は意外とあっさりに引き裂けた。

下部の方を探って以前ルフィが言ってた金玉を発見した。

色合いはウタの予想したものではなかった。

だが、その中にはお目当ての物が入っているかもしれない。

そう考えた彼女は、丸い物体を口に含んで噛み締めた。



「んぐっ!?」



弾力性があり意外と噛みにくかったが一点に集中させると潰せて汁が飛び出した。

慌ててウタはガラスの瓶に粘液を吐き出した。

唾液と白濁色の粘液が混ざり合った体液がボトボトと瓶の中を満たす。



「はぐっ!まぁぐ!!もぐっつ!!べぇ!ぺっ!!」



残ったもう1つの玉もかみ砕いて粘液を瓶の中に入れた。

それだけでなく掘り進めて垂れて来た体液も一緒に混ぜ込んだ。

既に膀胱から小便が漏れ出しており、ウタの顔に掛かるが動揺すらしなかった。



「ルフィ!!あんたの生きた証を残すから!!絶対に離さないからぁ!!」



ミニスカートの中に手を探って下着を破いた彼女はルフィの体液を望んだ。

精神崩壊して生きる希望を失った彼女に本能が性欲を通じて生き残ろうと模索した。

何を狂ったか、ルフィの子を宿せばマイナスを0に近づけると考えてしまった。

女であることを活かして新鮮な子種を摂取し、身籠ろうとしたのだ。



「ルフィ!!ルフィイイ!!!私はあんたの子を産むからさぁ!!」

「だからぁ!!生き返って!!ママにはパパが居ないと生きていけないよぉ!!!」

「早く起きてよぉおお!私はぁ!?お母さんに!!なるんだよぉおお!?」



ガラスの瓶の中に指を突っ込んで粘液を浚った彼女は股間の中に指を突っ込んだ。

既に小便を漏らしており、赤髪海賊団が見ているにも関わらず自慰を始めた。

何度も穴の中に出し入れさせて必死に下腹部の中をほぐしていく。

全てはルフィの子を孕む為の準備の為に。



「ルフィ!!おおきいのぉ!!やああ!!欲しいのぉおお!!赤ちゃん!!」

「もっと!!早く!!やっておけばぁ!!よかったたあ!?あああああっ!!」



大切な娘が倒錯的な自慰を、性交ですらない何かをしだした。

情事の経験があるヤソップがウタを止めようとしたが、ベックマンに阻止された。

「バカな事をやめさせるのは親の務めだ」と叫びたい彼は副船長の顔を見て黙った。

ここで引き離せば今度こそ彼女は命を絶ってしまう。

だからこそヤソップ以外の海賊たちは行為を見守るしかなかった。



「ヤソップ、気持ちは分かる。だがおれたちに止める資格は無い」



シャンクスは壊れかけた娘を見ても前に進んでほしかった。

自分たちが不甲斐ないせいでまたしても選択肢を間違えてしまった。

だから彼女の選択を見届けるつもりだ。

正論を言うとするヤソップを黙らせた船長は娘が前に進んでくれると信じている。

地面に転がって必死に自慰をして粘液を受け入れる準備をする娘を見守った。



「今度は私が!!救うの!!あんたの血を!!絶やさない!!」

「私は!!私は!!ルフィが!!ルフィの!!私はああ!?わあああ!!」



泣き出して鼻水を垂らして笑いながら自慰をする女の精神は壊れている。

何度も同じことを叫んでルフィに強姦されていると錯覚し、それを受け入れている。

吐き出した粘液を使い潰すと再びウタはルフィの股間に噛みついた。

何があっても妊娠したい彼女は、あらゆる体液を体内に注入させた。



「ルフィ!!欲しいの。はむ!むぅ!!」



ルフィの死から20分が経過した頃だろうか。

この時になるとルフィの死を受け入れたのかウタは大人しくなった。

全身は返り血と体液塗れで股間の惨状から海賊は目を逸らしたくなるほどだった。

真っ白のはずの正義のコートは彼女の精神が汚染されたのを示すように汚れている。

何度も彼の唇に口づけをして紅白の髪で頭を抱いていた。



「ぷはっ!やったよルフィ!お目覚めのキスをしたよ!起きて!起きてよおお!!」



ウタは、ルフィが死んでもキスをしたらまた目覚めるという謎の思考をしていた。

本気で彼を愛しているせいで自分が置いて行かれるなどと思っていない。

彼が天竜人を殴って自分を救ってくれたのだから今度も救ってくれるはずだ。

きっとルフィは子供をあやす為に目覚めると本気で考えていた。



「お頭!!さすがにもういいのでは?」

「ロックスター!もう少しだけ待ってくれ」

「死体が硬直します。ルフィ君の感触が変わればお嬢の精神は崩壊しかねない」



ついに幹部候補の男に正論を吐かれた。

生命活動を停止し、肉体がどんどん死んで行って硬直をし始めた。

さすがにこれ以上、無垢な女を死体に触れさせるのは危険と感じた。



「お嬢!?」

「ふふふ、これがルフィの心臓……」



シャンクスから“グリフォン”を借りたウタは夫の胸部を切り裂いた。

そして傷口を大きく開いて返り血を浴びてでも触りたかった部位があった。

“ルフィの心臓”、もう二度と動くことは無い大切な場所に手を伸ばした。



「起きて……私と一緒に生きるって言ったでしょ…」



ルフィの肉体から心臓を取り出して握り締めたウタは瞳を濁らせながら笑っていた。

鮮血を浴びた女の虚ろな視線は、文字通りルフィの心臓だけを見つめていた。

意味のない心臓マッサージをしながら彼女は人工呼吸を始める。

無駄な行為だと知っていながらも満足するまで手は止まらなかった。



「見てられんな」



ボンク・パンチとその相棒である猿のモンスターは目を背けた。

親である以上、蛮行を叱るのが役目だとヤソップと同意見だった。

始めは彼女に同情して動向を見守ったがさすがにこれ以上放置できなかった。

穴という穴から体液を溢して肉塊を弄り回すのは死者への冒涜だ。



「ウタ!!もういいだろう!!これ以上死体を弄るのは許さん!!」

「ねえパンチ」

「…どうした?」

「ルフィの心臓が動いたの……」

「はぁ……?」



ところがウタはルフィの心臓が動いたと戯言を抜かした。

本気で叱責しようと彼は口を開こうとするとウタが何かに抱き締められた。

さきほどルフィだった肉塊が真っ白になったと思ったら動いた。



「おいおい…まさか!!」



誰もが信じられなかった。

ここまで凄惨な屍が動くなどあり得ない。

だが、彼らは心当たりがあった。



『『『『ニカ!?』』』』



太陽神ニカ、ルフィが食べた悪魔の実は、神様の力が使える能力だった。

ゴムの特性を与えるのは、あくまで見せかけているに過ぎない。

ドラムの音と共に目覚めたニカは供物を欲した。

本来なら能力者の肉体を使うのだが、特例として目覚めさせた女を利用した。



「ルフィだあ!!違うルフィじゃない!!でもルフィだあ!!」



赤髪海賊団の目の前で娘は神様に持っていかれた。

まず神は流し過ぎた血を補充しようと女の血を抜き取った。

それだけでは足りずに転がっていた内臓にも手を出した。



「お前ら!!ありったけの食料を船から持ってこい!!」



シャンクスはこのままでは娘がニカに喰われると判断。

慌てて、船にある食料を差し出すことにした。

赤髪海賊団は船長とコックのラッキー・ルウを残して船に戻った。



「大丈夫!あなたが助かるなら全てを捧げるからぁ!!」



次の欲したのは、傷口を塞ぐ筋肉だ。

それが終わったら皮膚も欲しいし、熱も欲しい。

能力者が耐え切れない以上、ニカは近くに居た女を生贄にした。

あらゆる物をウタから奪われていくが彼女にとっては悦びだった。

自分が犠牲になるだけでルフィが助かるならそれでいいと思っていた。



「おいニカ!肉だ!受け取れェ!」



食べかけの骨付き肉をルウがルフィだった何かに投げる。

あっという間に肉が消えてさらにドラムの音が強くなってくる。



「お頭!!ギガントヘラジカを狩ってきました!」

「よくやったロックスター!そのままルフィに向かって投げろ!!」

「ええ!?調理は…」

「早くしろ!!ウタがニカに喰われるぞ!!」



ニカの暴走を警戒しているシャンクスは不機嫌そうに幹部候補に告げた。

それを聴いたロックスターは獲って来たヘラジカをルフィに投げつけた。



「あははははは!!」

「ししししし!!」



ルフィとウタは笑っていた。

デフォルメされた真っ白の彼は幼馴染の女を抱き寄せている。

そこに投げつけたヘラジカが飛んできたがあっという間に霧散した。

どうやらニカは彼女に手加減しているらしくゆっくりと捕食しているようだった。



「急げ!!一刻も早くルフィに食料を捧げろ!!」

「皿ごといいんですか!?」

「なんでもいい!!最悪投げても構わん!!」



赤髪海賊団が食料をニカに提供するがすぐに消えた。

100m級の海王類ですら丸ごと喰ってしまうほどであり、胃袋は底無しに見える。

その食欲はすさまじくペースが落ちる事もなく4時間が経過した頃、収まった。



「ようやく落ち着いたか」

「お頭、早くレッド・フォース号に乗せた方が良い」

「ああ、2人一緒にな」



シャンクスとベックは、2人の姿を見つめながら会話をしていた。

ルフィとウタは全裸で抱き合っており、まるで情事が終わったようである。

さきほどまで狂ったように笑った女は、やせ細っているが命に別状はない。

男はあらゆる傷口が無くなっているが代わりに身体が白いままである。

この状態が当然であると言わんばかりに安らかな顔で同衾していた。



「よし!載せるぞ!!」

「「「「一斉のおおでぇ!!」」」」



担架を持ってきた海賊たちは息を合わせて2人を乗せた。

二度と離さないように抱き合った男女は今後も離れないだろう。

複雑な心境ながらもシャンクスは彼らを見送った。



「お頭!!」

「ヤソップか。どうだ?刺客について何か分かったか?」



そもそも刺客のせいで最悪の事態を引き起こした。

敵の正体を知っておこうとシャンクスはヤソップに調査を依頼していた。

ちょうど終わったようで近づいて来た狙撃手の話を聞こうとした。



「おそらく世界政府に所属している。だが……」

「だが?」

「人間兵器だった…」

「“平和主義者<パシフィスタ>”か?」



パシフィスタは世界政府が運用する人造兵器だ。

クローン体を改造して自我を無くしたサイボーグである。

だが、ヤソップは首を振った。



「いや、どうもベガパンク製じゃないようだ。明らかに技術系統が違う」

「……そうか、ならいい」

「他の船員を調べてみるか?」

「入手した情報だけで充分だ。今はルフィとウタを保護するのが先だ」



ヤソップの言った兵器に心当たりがあるシャンクスはあえて黙った。

ここで発言しても混乱するだけだろうし、2人を保護するのを最優先にした。

握り締めたグリフォンを振り下ろして刺客を跡形も無く消滅させた。

いろいろあったが結果さえ良ければそれでよし。

赤髪海賊団は、探し求めていた宝を取り戻す事ができた。



「お頭…ちょっと良いか?」

「どうした?」



船医のホンゴウが深刻な顔をしてシャンクスに話しかけた。

それを見て腹を括った船長であるが意外な一言を告げられた。



「生き返ったルフィなんだが…ウタと一緒に歌を歌ってるぞ」

「あの負傷でか?今さっき見送ったばっかりなんだが」



耳を済ませれば、確かにルフィとウタの歌声が聞こえて来た。

ただ問題なのは、彼は歌える状態じゃないし、そもそも歌が上手過ぎた。

明らかに別人格のように感じられたとシャンクスにホンゴウが口を開く。



「おかしいな…と思ってよ。血を摂取したら血液型がウタと同じになっていた…」

「ルフィの血液型はF型だったよな?XF型になったのか?」

「ああ、そうだ。恐ろしい事にルフィの血液がウタになってた」



彼らは触媒がウタの血肉だった為、こうなったと考えるしかない。

問題なのは、ニカとウタでルフィの人格が上書きされないか心配だった。

現に彼女譲りの歌を歌っている以上、影響が出ているのは間違いない。



「だとしてもルフィとウタが大切なのは変わりがない」

「そうだとも!船医として彼らを見守るつもりだ」



一度は手放した娘と信じて放置した男の子が立派に成長した。

そんな彼らが出す若い芽を世界が潰そうとしている。

なんとしてもそれを守るべく赤髪海賊団はずっと傍に居るつもりだ。



「お頭、説教される準備はできるか?」

「ヤソップ、お前もウソップにされる権利があるんだが?」

「おっと!そこまでだ!おれは何も言ってねぇ…!!」

「おいおい、信じてばかりじゃ失敗するってこの件で分かっただろ?」

「もう少しだけ時間をくれ!!まだ息子に逢う勇気がねぇんだ」



偉そうにヤソップがシャンクスに絡むとカウンターをされてしまった。

息子を愛しているがどんな面で逢えばいいか分からず彼は慌てた。

その様子を笑いながら赤髪海賊団はレッド・フォース号に戻った。

ウタの帰る場所、そしてルフィが憧れた場所でもある船へと。



「「新時代は~~♪この未来だ♪」」



半年経っても相変わらず船首でデュエットして歌っているカップル。

違うのは、ウタが身籠っておりルフィと正式に結婚が認められていた。

ようやく彼女は精神的に落ち着きを見せているが予断は許さない状況だ。

赤髪海賊団は交代制で彼らの動向を随時把握していた。



「やっぱダメだ。ウタのように歌えない…」

「じゃあ!ドラムを叩いていこう!」



ウタの血を引いているルフィは、なんとしてもウタに並ぼうと背伸びしていた。

それを見て嬉しそうなウタは、ドラムの音を口ずさんで歌った。



「おおっ!?良い感じになって来たァ!!」

「どっとこどんどん♪どっとどんどこどん♪」



ニカの覚醒条件はウタが握っている。

文字通りルフィの心臓を握り締めて蘇生を行なったせいなのか。

赤髪海賊団は未だに答えが導き出せなかったがやる事は決まっている。



「野郎共!!肉を調達するぞ!!」

「「「「おう!!」」」」



シャンクスの号令に一同が声をあげた。

暴食漢とそれに寄り添う歌姫の為に肉を調達しようと船員が海に飛び込む。

今日もウタはドラムでルフィを覚醒させてデュエットを楽しんだ。

その生活は、ずっと続くことになり半世紀が過ぎても2人は幸せだった。


END

Report Page