【閲覧注意】アウラ「リーニエとイチャイチャするじゃない」1/2

【閲覧注意】アウラ「リーニエとイチャイチャするじゃない」1/2


第一節 再会


どことも知れぬ森の中

土の上に倒れ込んでいたアウラは目を覚ました

「………ここは…?」

状況を掴めぬままにゆっくりと起き上がり、記憶をたどる

(確か私は…フリーレンと対峙して…アゼリューゼを使い………ッ!!!)

ハッ と両目を見開くと同時にバシリと右手を首に当てる

その首は、頭と胴体をしっかりと繋げている

(私は自らの手で首を落として…)

グラナト領外の戦い、そこでアウラはフリーレンからアゼリューゼを返され、自らを断頭。彼女の意識は途絶えた

…それが魔王軍・七崩賢『断頭台のアウラ』の最後…のはずであった

「なぜ…生きている?…まさかあれは幻だったというのか?」

幻を使う魔族に心当たりはある。だがあの場面が幻であったというのも信じがたい

「何が…」

呟いて、アウラは自らの紫色の髪の内、三つ編みにして束ね右肩にかけていた部分が無い事に気づく

自害の際、首もろとも斬り落とされたのを思い出す

(間違いない、私は自害を決行させらせた。だが何故?何故髪の一部は失われただけで首が繋がっている?)

「…まるで分らないわね」

アウラは口の端を吊り上げ謎だらけの現状を嗤う

だが、確実に言えるのは、自分は健在で、意識がある事

魔力も…幸いにも失われていないようだ

「また、一からやりなおし…かしらね」




アウラは蘇った場所から魔力を放ち周囲の探知を開始した

ここがまるでどこか分からない以上、慎重に周囲を探る…

すると、覚えのある魔力の反応があった

すぐ近くである

(この魔力は…リーニエ!)

かつての計画のため一時の別れをした配下─というにはお互い情を持ってしまっていた─が近くにいる

驚きの表情を隠さずに、アウラは反応のあった地点に急行した

やはり何の特徴も無い森の中、そこには少女の姿をした魔族が仰向けに倒れていた

意識は無い様だが、アウラ同様目立った外傷はみあたらない…

いや、リーニエの髪をまとめていた左右のお下げの内、左側のそれが失われていた

(私と同じように人間との戦いで失われたか…そして何故か再生されなかった)

であれば、リーニエはアウラ同様生きているはずである、

アウラはリーニエの横に膝をつくとリーニエの上半身を起こし、自分にもたれかからせる

(間違いない、私の可愛い部下、リーニエだわ)

別れた時とさして変わらぬ姿に安堵するアウラ

「リーニエ…リーニエ?」

返事は無い、が、ピクリと身体が動いた

「リーニエ、聞こえるでしょう?私よ、あなたの主(あるじ)のアウラよ!」

つい、声が大きくなる

「ん…」

それが功を奏したか、リーニエから小さい呻きがこぼれ、瞳をゆっくりと開いてくる

「んん…」

(気づいた様ね)

リーニエはある程度まで瞼が上げると

「!!」

突然覚醒し、飛び起きて背に感じた気配の方、すなわちアウラの方に向き直り、戦闘態勢をとる

本来は戦斧の構えなのだろうが、その手に斧を生成していないためただのポーズになっている

「えっ…アウラ…様…?」

そして突然出現し向かい合った相手が主のアウラの姿をしている事に気づく

「目が覚めた様ね」

(この感じ…この子も直前まで戦闘していた様ね。そして、人間に敗れた…)

「…本物……だよね……」

わずかな間で得意の魔力探知によりアウラが本物であると確定させたリーニエは、その場に跪き

「アウラ様…『首切り役人』が一人、リーニエ……お、お会い、お会いしと…しとう……

……会いたかった」

かしこまった挨拶は途中であきらめ、自らの気持ちを口にした

アウラはそんな素直な部下の前にしゃがみ込み、両手で頭を包み込むと

「私もよ…リーニエ」

つぶやいて、胸元に抱き寄せた




第二節 再起へ向けて


再会した二人は一旦落ち着いて情報を整理する

アウラは勇者一行の魔法使いに敗れ、

リーニエはその仲間の戦士に敗れ、

気が付くと、この森の中にいた

敗北からいったいどれだけの時が流れたのか、敗北の地よりどれだけ離れた土地へと飛んだのか、他の配下も死んだままなのか、分からない

二人は慎重に森の中を彷徨いつつ、魔力の探知を開始した

リーニエには付近の探知を任せ、アウラは千里眼の様な魔法で周囲を見渡す

わかったことは、ここがリーニエと出会ったかつてのアウラの元勢力圏の端の地であったことだ

(このあたりは人口がそう多くない土地のはず、隠れるのには丁度いいわね)

探知の合間に人間の存在を遠くに感知したが、今はとにかく潜伏して体制を整えるのが第一だったので見逃した

そうしてしばらくすると、リーニエが歩みを止めた

「アウラ様…あれ」

リーニエが指さした先には、古びた小屋。それと小屋に接する様にリンゴの木が立っていた

「…思い出した、私が昔いたところだ」

「昔?」

「うん。アウラ様に拾われる前、このあたりをフラフラしてたよ」

(成程…つまりここ一帯はリーニエに縁があった土地、ということになる。私たちがここに飛ばされたのも、それと関係があるのか?)

アウラが手でアゴに触れて思案していると、リーニエは我関せずとリンゴの木の元に行き、丁度生っていたリンゴの実をむしりすぐにシャクシャクとほおばり始める

(相変わらずリンゴには目が無いわね…)

「…美味しくない」

リーニエは眉をひそめて愚痴をこぼした




アウラはリンゴの木の横の古びた小屋を臨時の拠点にすることに決めた

早速、小屋の掃除を開始して、内装を整える

(以前の城砦ならボロボロでも絵になったのだけれど、さすがにこんな小屋じゃどう清掃しても迫力が出ないわね…)

元魔王軍最高幹部とは思えない部下との地味なお掃除作業。知る者が見たら何と感想を抱くだろうか

(まぁリーニエがなんとなく楽しいそうだからいいわ…)

とはいえ掃除自体はすぐに終わったので、次なる必須事項は今後の方針の検討だ

壁沿いの机に添えられたイスに頬杖をついたアウラが足を組みながら座り、反対側の壁のベッド─1台しかなかった─にリーニエが腰かけている

第三次アウラ軍初めての会議である

「さて、リーニエ。何か意見はあるかしら?」

「…美味しいリンゴが食べたい」

「…あのねぇ…」

(いきなりこの子に聞いた私がバカだったわ…)

グラナト領に派遣している間、人間の文化に触れ、共に派遣した配下からの教育も受けていたという話であったがどうにもマイペースな所は変わっていない様だ

「とりあえずここを拠点に情報を集めるわ。私はひたすら探知といったところかしら。

人間が近づいてきたらアゼリューゼで引っかけて気づかれない様に情報を絞り取る。これの繰り返しね。しばらくは」

「…私は?」

「あなたも基本的に探知よ。とにかく私たちがここにいる事を悟られてはならない。肝に銘じておきなさい」

「分かった」

「時間があったら…そうね、鍛錬を行っておきなさい」

その言葉を聞いたリーニエの表情が、わずかに弾む

「鍛錬」

「そうよ。一度敗れた我々だけれどもそのまま腕を腐らせるのは魔族として失格だ。どんな理由があろうとね」

「じゃあ、またアウラ様とキスできるんだね」

「え?…あなた…何を」

アウラはたちまち口を引きつらせ焦りの表情を浮かべる

「グラナトにいるとき覚えたよ。アウラ様が『口づけ』って言っていた事はキス、とも言うって」

「まあ、言い方は色々あるわね」

「そしてキスは、人間は好きな人同士で行う事だって。つまり、アウラ様は私の事が好きなんだよね?」

「…それは人間の世界での情報でしょう?私たちは魔族。魔族の間で好きという感情はあり得ないわ」

「けどアウラ様。前に人間の姉妹を模倣してキスするって言った」

「そうね。姉妹は家族。人間では家族は、恋人に並んで大事な存在だそうよ。

だからあなたとは、人間換算でそれくらい大事な存在という意味なのよ」

「大事?私が?」

「え、えぇ」

(グイグイ来るわね…少し気圧されている?私が…)

「アウラ様は、私の他に大事な魔族っている?」

「いないわよ。魔王様は勇者一行に敗れて久しいし、他の七崩賢の生き残りとは疎遠、部下もいまやあなたしかいないし…見つかるかどうか…」

「じゃあ、私がアウラ様の一番大事ということだよね」

「そうなるわね…」

「そしてアウラ様も私が一番大事」

「ま、まあ…そうね」

(実際現状二人きりな訳だし、否定もするつもりもないが、こうも口に出して言われると…やりづらいわね)

「とにかく。リーニエ、あなたは鍛錬を欠かさない事。そしてまた手合わせを再開しましょう」

「一本取れたらキスだよね?」

「しつこいわねあなた。しょうがないわね、それでいいわよ」

「やった。それじゃあ早速鍛錬してくるよ」

リーニエはベッドから立ち上がり、勢いよく小屋を出て行った

「まぁ、やる気があるのは良い事ね」

呆れた様な表情で、アウラは独り言ちた




第三節 愛の巣にて


それから一年ほどの時が流れた

慎重な情報収集の結果、分かったこととして、アウラ達が蘇ったのはフリーレン達との戦いから間もない事

アウラ軍が滅びた事で人間の勢力がその分増したこと…くらいである

かつての配下の情報はつかめなかった

「…どうしたものかしら」

ベッドの上に腰をおろし、壁を背にしてよっかかり足を前に伸ばしたアウラはつぶやいた

「どうしたの?アウラ様」

リーニエはそのアウラの膝の上に座っている。ちょこん、という擬音が聞こえてきそうだ

アウラの方を見上げながら、問いかける

理由やきっかけは分からないが、情報収集を開始してからというもの、リーニエとは物理的な距離がグンと縮まっていた

それぞれ別な事をしていない時はこうして、なんとなく密着している状態が素になりつつあった

キスだって、何かと理由を付けていた以前とは様変わりし、今では何気なく交わすことができる行為になっていた

「こんなこと話したくはなかったのだけれど…」

言葉を紡ぎながら、アウラはリーニエの残っていた右側のお下げを撫で始める

呼応するようにリーニエも、アウラの残っていた左側のお下げをポンポンと軽くもてあそび始める

いつの頃からか始まったこの触れあいにも、今は何も疑問を感じない習慣の様なものとなっていた

「…人間の勢力圏への侵略…止めようかしら……って」

はぁ、とため息を漏らすアウラ

情けない姿だろうが、ずっと前からリーニエにはもう隠すつもりもない

「それって、本気?」

「いや、暴れられるものなら暴れたいわよ。だけど…」

(現状、二人だけだもの。もし私レベルが暴れたら人間達は当然相応の戦力を向けてくるはず。そうなったらこの子を守りきれるか…)

それこそあの憎きエルフが再び対峙してくる可能性だってある

そしてそのエルフ対策は今のところアイデアすらゼロ。詰みである

他には潜伏しているだろう実力者─大魔族─を見つけて組む、という案もあるが…

(リーニエはお断りなんて言われたら、こちらから願い下げだわ)

それに組んだところで、少数精鋭なことは先の条件と変わらない

(あとは…リーニエをここに置いて、私は別の場所で活動する)

事実上の単身赴任であるが

(論外だわ。グラナトの二の舞はこりごりよ)

離れ離れになることがもうすでに耐え難いし、その間に万が一この子が討ち取られようなら…

(いや、それが魔族として正解なのよね)

きっと人間への殺意に満ちた大魔族が復帰し、人間界にそれなりの打撃を与えるだろう

その間に新たな配下を得るかもしれない、その者たちとかつてを超える勢力を構築するかもしれない

だけど…そこにこの子がいなくても満ち足りてしまう自分を、今の仮定段階ですら許せない

(他の魔族も全然接触してこないし…参るわね)

同族との交流も絶たれたこの生活で、自分の中でリーニエが想像を遥かに超える大きな存在になるとは分からないものだ、

とアウラはリーニエの髪に触れながら思い、目を細める

「アウラ様?」

考えに耽り過ぎた様だ。リーニエの声にハッ、と意識を戻される

「…すまないわね。…ねぇ、リーニエ?」

「何?」

見上げてきたリーニエの額に、アウラは軽く口づけをして問いかける



「ずっとここで暮らしましょう、って私が言ったら、あなたはどうする?」




第四節 目覚め




………あの時の問いから、半年ほどが過ぎた




「うん、暮らす」




と即答したリーニエは、いまはリンゴの木からとれる実が美味しくなるよう土いじりを始め、グラナトで仕入れた知識を元手に奮闘している

アウラは、相も変わらず周囲への探知─今は半分くらい警戒が目的である─を続け、

その合間に、小屋に地下室を作り、徐々に拡大させていた

(いざって時の潜伏場所や脱出経路ってところかしらね…しかしボスってのは本拠地を改造したがるサガでもあるのかしら?)

魔王軍の勢力拡大時には拠点を構築することがあったから魔族が土木工事とは無縁というわけではない

だが、ここまでこじんまりとした作業を大魔族自ら行うのは前代未聞であろう

しかし、アウラがリーニエと離れて別の作業を行うのはまた別の目的があった


アウラは作業を一区切りさせると、床にペタンと座り込む

そして、自らの指を白いスカートの中…のさらに下着の中に滑り込ませ、皮膚の部分と指をこすらせ始める

「ん…ふっ…」

アウラに今までに味わったことのない感覚…性的な快感が身体を走る

脳裏に浮かぶリーニエの姿、その解像度が上がる度に指の動きも細かく素早くなっていく……


事の起こりは少し前、いつものようにリーニエを膝に座らせてお互いに髪をもてあそんでいた時だ

何となく、というかたまにはいつもやっていない事をしてやろう、という安易な好奇心が発端だった

アウラはリーニエのスカートの中に手を忍ばせ、さらにドロワーズの中に手を突っ込んだ

するとリーニエはビクビクと背を反らせ、眉をハの字にしだらしなく口を開き

「ひゃ…あぅ…」

と、悩ましい声を漏らした

大切な存在の初めてみる反応に

「リ、リーニエ?ごめんなさい」

と、思わず素直に謝罪をするアウラであったが

「もっと…いい…です…」

リーニエはこちらを向き、少し瞼を降ろして、普段使わぬ丁寧語を持ち出してまでおねだりをしてきたのである

アウラは衝動を止められなかった

その後、ドロワーズの内側をスリスリしていたが、とうとうドロワーズをずり下げて

スカートに覆われて直接は見えないがその下で露になった股や腰、太ももを撫でまわし始めた

リーニエはアウラに寄りかかりながら両手はシーツをギュッと握りしめ、腰をくねらせ首を振り「あぁ、あぁ」と喘ぐばかり

そしてアウラが股間の内側に手を差し入れ指を動かすと

「ぁああっ!」

リーニエはたまらず叫ぶと、一段と大きく身体を反らしその勢いで顔は天井を向いて薄いピンク色の髪を跳ねさせる

その後はハァハァと、荒く熱い呼吸を繰り返す

アウラはその様子を疑念を瞳に、狂喜を口に浮かばせながら食い入るように見つめていた

リーニエの角がアウラの肩の素肌に食い込むのも、まるで気にならないほどに


魔族にとって、服は体の一部である

服の下には当然素肌が存在するのだが、魔族の認識としては人間で例えるとそれは皮膚の内側であり

魔族にとっての服の下の素肌は、人間で言うと皮膚を剥がしその下の肉に触れる様なものである

…と、アウラは思っていて、それを疑う事もなかった

だが、リーニエの服の下の素肌に触れた時の反応は、明らかに快楽がもたらされた反応だ

これまでも寝技の特訓と称してなどで、リーニエを撫でまわした事はあったが、それは全て服を撫でた場合であり服の下の素肌に触れた事は無かった

もしかして、服の下の肌部分は、快感をもたらす作りになっているのでは?

そう考えたアウラはリーニエを目の届かない時を選び、リーニエに行った様な事を自分にも行ってみた

アウラは素肌を露出している部分が多いので、スカートの中の下着の内側くらいしから対象の箇所はなかったが

その分、分泌される快感は並では無かった。あっという間に快感の我慢の限界を超えていった

それ以来、ほぼ定期的に、地下室の作業の合間に…

リーニエの痴態を思い浮かべながら自分で自分を昂らせる行為にアウラは励むようになった


「んっふ、んんっ!」

股間に忍ぶ手を足で閉じこめ、指の動きに集中させてアウラは果てた

その後に押し寄せてくるのは快楽ではなく、刺すような罪悪案と背徳感…

しかし、戦いではまず陥る事が無い熱い呼吸のリズムが落ちつくてくると

かつて七崩賢と讃え恐れられた頃の様な頭が冴えが呼び起こされるため、アウラはこの行為が手放せなくなってしまっていた




第五節 発覚


…とはいえ

行為の度に落ち着くものの、もう一度リーニエの痴態を見たいという願望は心に蓄積する一方だ

(私から命令すれば従ってくれるでしょうけど、それはちょっと違うのよね)

そんな事を考えながら、アウラは夜の森を一人、フラフラと散歩していた

散歩といえど獣道が作られ人間に存在を悟られない様にルートは毎回を変えていたりするから時間もバラバラだ

「そろそろ戻ろうかしら」

帰路につこうとしたアウラは、そうだ、と気まぐれに遠くを見渡す千里眼の様な魔法を発動させる

これで今、自宅にいるリーニエが何をしてるか覗いてみるのだ

とはいってもリーニエは魔力探知が得意なので、あっさりバレて帰りの合図代わりになるだけだろうが…

(どれどれ…鍛錬でもしてるのかしら…?)

リーニエは小屋の外で壁にもたれかかって膝を曲げ座り込んでいた

だが…何か様子が変だ

さらに覗き込むと…スカートの中に手を突っ込んで、モゾモゾと動かしている

(ちょっと!…アレってまさか)

リーニエの表情はあの時の様に快感に悶えており、舌をだらしなく突き出している唇の動きを読むと

「アウラ様、アウラ様」

と主の名を呼び続けている

まさに自分が地下室で行っている自慰行為を、リーニエも行っているとは…

喜びとショックが入り混じる中、アウラはリーニエの行為から目が離せない

リーニエの腕の動きすなわち隠れて見えないが股間をまさぐる指の動きが一段、二段と早くなっていき…

「あーっ、あっ」

ともはや名前ですらない喘ぎ声になったところで、リーニエのつま先から頭まで身体全体がピーンと強張り、快感が限界を超えた

その瞬間、アウラは魔法を止めた

少しでも落ち着いたリーニエが魔法に気づくと思ったからだ

「…ふぅ、とんでもないものを見てしまったわね…」

深呼吸をして、アウラは何事も無かったの様に装い、リーニエの待つ自宅へと帰っていった

しかしアウラは長く過ごした大切な存在を…甘く見ていた




アウラが何食わぬ顔して小屋に戻ると

「見てたよね、アウラ様」

リーニエが腕を組んで待ち構えていた

「え…?何の事かしら」

「誤魔化しても無駄だよ。魔法使って覗いてたでしょ?」

(しくじってたか…)

「…流石ね、リーニエ。でもたまたまよ、偶然使ったらあなたが…その…」

「別に怒ってないよ」

「そう」

「………」

「………」

向かい合ったまま沈黙する二人

「…聞かないの?」

「何を?」

「どうして、その…してたか…とか」

言いながら、リーニエは顔を反らす

「どうしてって…仕方ないじゃない。あなたにもそういう欲求があったんでしょう?」

(そういう欲求に火をつけちゃったとしたら原因は私なんだけどね)

「…アウラ様がしてたから…」

「え?」

「アウラ様がしてたから、なんか私も…」

「私がしてたから、って。あなたまさか」

「アウラ様の魔力の流れが乱れてたから。いつもとヘンだったから。と思って読み取った」

(迂闊だった。単純に姿が見えないから大丈夫と、何故、思ってしまったのか…。まさか魔力を読み取ってくるとは……ん?)

「あなた…読み取ったってまさか…」

「動き、模倣したよ」

リーニエが自分で自分を慰める動きは、アウラの動きであった

つまりそれは、アウラの預かり知らぬところで、アウラの動きで、リーニエが慰められてたというわけで…

ゾクゾクッと背筋を微弱な快感が通り抜ける

(ヤバいわね…何かしらこの背徳感と優越感…)

「でも、たまにアウラ様を模倣せずに自分でするときもあるよ」

「そ、そうなの…」

「うん。たまにね」

「って。待ちなさい。それって、あなた結構頻繁にしてる、って事かしら?」

「そうだよ」

「どのくらいしているのよ、答えなさい」

(結構しているとはいっても、私に知られずにそんな頻繁にできる時間なんてあったかしら)

それが、大切な存在の自慰ペースを答えさせる、という嗜虐的な問いをすることになっても知りたいアウラの疑問点だった

「アウラ様と同じ」

「?」

「アウラ様と同じ時」

(繰り返された。私と同じ時といわれても…。私は地下室で…)

「ああっ!あなたまさか!私がしている時に」

「そうだよ」

「もう、嘘でしょっ!」

アウラは思わず手のひらを口にかぶせる。顔の引きつりが止まらない

リーニエはアウラが自分で始めたのを感知して、同じタイミングで自分も行為を始めていたのだ

分からなくて当然だ。行為にふけっている最中に探知なんて無粋の極みだ、やろうとも思わない

(盲点だったわ…でも…)

離れてはいても、お互いを想い、同時に慰めていた

そんな相互で一つの様な行為が幾度となく行われていたと気づくと、安心感や満足感が満ちてくる

それと同時に、

わざわざ別れて慰めるなんてことをせず直接交わりたい

という欲求が湧きだしてきた

そうした中でアウラがリーニエを見ると、どこか寂しそうな表情をしていた

(そうだ。

そもそも私が一人でしていたからといって、この子もしなくてはならない理由なんてない。

つまり、この子もきっと…)

「……」

アウラは一旦瞳を閉じて、少し多めに息を吸い込むと、ゆっくりと瞳を開き

「リーニエ…」

虚ろさを帯びた蒼暗い瞳がリーニエを捉えた

「アウラ様…」

羨望を秘めた紫の瞳がアウラを放さない

アウラの両手がリーニエの肩に触れ、二人の距離を近づける

「…」

リーニエは左右それぞれの手でアウラの手を自分の肩から引きはがすと、お互いの手のひらを重ね指を絡ませる

お互いの吐息は漏れた瞬間に相手の唇にぶつかり散っていく…

そして…

二人の唇が重なった




二人は唇同士を滑らせ合う

一通り唇をまぶし合ったところでアウラが舌をリーニエの唇をこじ開けて口内に差し込んできた

リーニエには─無論、アウラにとっても─初めての動きだが、本能が働いたのか舌を差し出してアウラの舌とすぐに絡み合う

ピチャピチャと、いやらしい音が漏れる

唇の間から唾液が洩れ出でて、糸を引いて二人の胸元に垂れ落ちたところで

アウラは舌をリーニエの唇から引き上げると、唇ギリギリまでリーニエの舌が追いすがってくれた

そのまま、唇もお互いから離れる

アウラは、口を閉じると、リーニエに見せつける様にゴクリと混ざり合った二人の唾液を飲み込んだ

「さ…あなたも」

アウラが誘うと、リーニエも口の中に溜まっていた二人の唾液を体の中へと送り込んだ

「アウラ様、今のは…?」

「今のも『キス』よ。だけど、もっと気持ちよくなりたい事をしたい、っていう意思表示のキスなのよ」

「もっと…?」

「そ…でももう遅いわよ。このキスに応えたということは、あなたはOKということなの」

「……ちゃんと、いえます」

「?」

「私、自分の気持ち、ちゃんと言えるよ。

私は……アウラ様ともっと気持ちよくなりたい…です」

「この子ったら…。ふふ、私もよ。私もあなたともっと気持ちよくなりたい」

二人はお互いの願望を伝え合うと、再び軽く唇を合わせた


第六節へ続く

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