閲覧注意

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 今日も先生と、月夜の下で酒を酌み交わす。その日はちょうど満月で、さらに雲ひとつない快晴だったので、心なしかいつもより明るかった。なので僕達は電気を全て消して、月明かりだけを頼りにお酒を呑む。ある日をきっかけに、週に一度の周期でずっと続いている二人きりのこの時間。僕はこの時間が好きだった。全ての感覚を喪ったこの肉体でも、脳が活きているおかげで酔うことはできた。初めてこれに手を出したのは、ユメ君がいなくなったあの日だった。半ば自暴自棄になって手を出したこの飲料に、僕は虜になってしまった。18の時だった。ちょうどこの身体になったのも、それぐらいの時だった気がする。

 ……酒を飲むと、過去を振り返ってしまいがちになる。そんな事をポロッともらすと、先生は優しい声で「私もだよ」とだけ言う。そしてまた静寂が帰ってくる。

 ここ最近の私は、研究漬けでなかなか休息を取れていなかった。

 疲れ切った身体に過剰にアルコールを流し込むと、大抵ロクなことにならない。その事実を、今日私は身をもって知ることになる。

 「ああ、空になってしまった。」そう言って立ちあがろうとする。と、気を利かせた先生が「私が取ってくるよ」と動き出す。床には缶がいつもより多く転がっていた。朦朧とした様子で、私の背後にある冷蔵庫に向かおうとする先生。と、缶を思いきり踏んづけて、彼は転がる缶につられて派手に転倒した。強い衝撃が頭部を揺さぶる。驚いて閉じた目をそっと開くと、眼前には先生の顔があった。

私は先生に押し倒されてしまっていた。数秒の沈黙ののち、先生は急いで飛びのこうとする。私は酔ってぼんやりとした頭で、半ば無意識にその逞しい腕を掴む。積み重なった疲労というのは、性欲へと置換されやすい。…よく見ると、それは先生も同じようだった。掴んだその腕を,私の胸へとあてがう。飾り物に過ぎないが、まあ雰囲気は出るだろう。「そんな事しちゃいけない」と、必死で咎めてくる理性を酒で強化された本能と欲望が軽く打ち砕いていく。今の私は情欲に突き動かされる獣だった。

「ダメだよ、生徒と先生でこんな事…」私の理性を代弁する様に、先生はそう私を宥める。だがそれすら私には効果がない。「別に大丈夫ですよ。ここには二人しかいまhせんし、それに私は……生徒だけど、もう生徒じゃないので」自身に言い訳する様にそう返答をする。「で、でも……」ああ………うるさい。

 先生を抱き寄せ、私の唇で、舌で、その喧しい口を塞ぐ。「んむ!?んっ、んんぅ…」先生の困惑と驚愕が、口腔を通して熱と共に伝わってくる。口内に感熱システムを積んでおいてよかった、とそう思った。

 心地良い温もりが私の心を満たしてゆく。「私がココを残しておいたのは、今日この日のためだったんですね…」そう言いつつ、そっと先生の手を下腹部にあてがう。この日のために、私は義体を、いつもと違う限りなく生身に近いものに…所謂勝負義体(ボディ)にしていた。私の身体の変化に、先生は制服のおかげで気付いていなかった。「このカラダは最近開発した最高級品でね、最大の特徴は…」そう解説をしながら服を一枚一枚脱ぎ捨てていく。一糸まとわぬ姿になった時、私は久々に恥じらいを感じた。この身体が生身に近いからだろうか、いつも白衣一枚でいる時よりも恥ずかしい格好をしているように感じる。「…女性器まで再現していることさ」

 先生はまだ、愚かしく抗い続ける。私はそっと彼をもう一度抱き寄せ、そっと耳元でささやく。「私はもう子供じゃ無いし、人でも無い。この体が子をなすことはないし、安心して私に溺れて構わないんだよ?」その時、ぷつん、と何かが切れる音が先生からした。

 私たちは盛りついた獣のように、互いの肢体を貪りあった。思考はまるで回らず、人参をぶら下げられた馬のようにただ眼前の快楽に向かい続ける。大人だとか子供だとか、生徒だとか先生だとか、そんなものは最早どうでもよかった。あの先生が、私の事をあたかも欲望を処理する為の道具のように扱っている。無遠慮に子宮を揺さぶり、否応なしに子種を中に注ぎ込んでくる。私は物凄く興奮した。こんなに乱暴に扱われて興奮してる奴だなんて、ユメ君に、ノノミ君にバレたら彼女らはどんな反応をするだろう。蔑むだろうか、哀れむだろうか。想像するだけで下腹部がキュンと締まるのを感じる。と、また先生の粘っこい“それ”が私のお腹に注ぎ込まれていく。それは収まりきらずに溢れ出し、先生が引き抜くと同時にぶぽんっ、と下品な音を鳴らして溢れ出す。

 私はひとつだけ先生に嘘をついていた。この身体が子をなすことがないというのは真っ赤な嘘だ。まだ生理現象は続いているし、そもそも子宮が生体パーツなのだから生殖機能も当然生きている。だが私はそれを先生には言わなかった。それが何故かは自分でもよく分かっていないけど、まあ…今が幸せだから、良いかな。緩慢な思考は、悦楽の濁流に押し流されていく。夜は変わることなく、単調に時を刻んでゆく。

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