間が悪かったのだ
わし様が周囲の願いを叶えるタイプの機構だった世界 その2
その1
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俺が物心ついた頃、世界というものは父母や弟妹の愛に満ちた優しいものだと思っていた。
しかしながら、どうやら家族以外の者には俺は世に禍を齎す不吉な子であるらしく、それらは俺と会う度に『凶兆の子を生かすなど今に災いが起きるぞ』と悪意を孕んだ目でこちらを見ていた
折角だったのでその災いを望む欲を肯定してやる事にした
下働きの青年や踊り子といった下々の者たちと少しばかり話をするだけで幼い俺にでも簡単に願いを実現することが出来た
日頃の行いというものは大切なのだなと思った
王宮で事件が立て続けに起きたので警備の見直しが入るらしく俺たち兄弟は暫く奥から出てはいけないと言われてしまった
両親も心配しているし弟妹はそんな両親の様子を見て不安そうにしている、少しやり過ぎてしまったらしい
次からは加減というものを覚えようと思った
父の弟が死んだためその息子たちが王宮にやって来た。
いきなり家の中に増えた他人に少し不安を感じるが、家族以外と触れ合う機会の無い弟たちの友達が増えればいいのだが
増えた他人の一人、ビーマという奴が弟たちを手酷く傷つけた。
力の加減を誤っただとか言い訳をしているが知ったことか、それを咎めなかった兄弟たちも同罪だ
ビーマを殺した。毒を飲ませて、手足を縛って川に突き落としてやった
暴虐に苦しんだ弟たちが喜んでいるようで俺もとても嬉しい
ビーマが帰って来た、川の中の蛇に助けられたらしい。運のいい奴だ
事情を知ったパーンダヴァと弟たちが敵意を向け合っている。
いずれは大きな争いになりそうだが……
やった、やり返したを繰り返していつのまにか戦争になっていた
殺し合った、わし様たちは弟たちを息子を友を互いに失った
弟たちがいなくなって、友もいつのまにか欠けていて自分は何をすべきだったかと思い返すことが増えた
少し間をおいてパーンダヴァを殺すという目的を思い出す。はて、これは誰の願いだったか?
ぼんやりしていればユディシュティラがやって来て一騎打ちで戦争を終わらせようと言った。
わし様は既に戦争を続ける意味を失っていたのでその願いを了承した
ビーマが決着を望んでいた。一騎打ちの相手をビーマと指名した。
それなのにビーマは反則をしてわし様を打ち倒した。決着を、と望んだのはお前のはずなのに
そこまでして勝利が欲しかったのならばそう望めばよかったのに。
頭の中でぐちゃり、と音がして何も見えなくなった
どうやら頭を潰されたらしい。
このままでは死ぬな。ここにはわし様の生を望む者は誰もいないのだから、まあそれでもいいか
そう思って大地に横たわっていればふと声が響く
『ああ、重い重い。この大地の上を這いずる人間などすべて消えてしまえばいいのに』
願いをかなえようと思ったが、死がすぐそこまで迫っている身では何をなすことも出来ない
死を回避する方策が無いわけではないが死を願われたのだから大人しく死んでおくべきだろう
この地の底にいる者は先の戦争で減った分で我慢してはもらえないだろうか
そうこうしているうちに近くに誰かが来たのを感じた
わし様をここまで連れて来たアシュヴァッターマンだろうか?
『まだ死なないでほしい』
ぽつりと、小さいながらもはっきりとした願いが届いた。
嫌いなパーンダヴァの死を願う欲と気に入りのアシュヴァッターマンの生を願う欲、どちらを取るかは言うまでもないことだ
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わし様
願いを叶えることを行動原理としているが別に自我が無いわけではない
嫌いな奴の願いは捻じ曲げて叶えるし、好きな人の願いは優先して叶える
両親が普通の子です!って言ってたので大人しく人間をやっていた
頭が潰れてた所に入ったオーダーは自我より奥に根差したため本能で叶えようとする
アシュヴァッターマン
この世界の彼は常に間が悪い
大地の女神
人類殲滅がベストだけどある程度まで減ったならそれで我慢出来る強い子
それはそれとして他の神はいい加減にせえよと思ってる
正史ルートだとアシュヴァッターマンがまだ死なないで欲しいとは願わなかったので
わし様はそのまま死んで大地の女神は今回はこのくらいで勘弁してやらぁって感じで収まった