開頭、麻酔あり√の描きかけ。草案。

開頭、麻酔あり√の描きかけ。草案。

#多分R-18G

どうしてこうなってしまったんだろう。

四肢を拘束され、手術のために頭部を固定されたコユキは遅すぎる後悔をする。拘束ピンが骨にまで食い込んでいるというのに、麻酔が回った表情筋は脱力し緩んだ口からは唾液が垂れ流しになり、床に水溜りを作っていた。

眠たそうにも見えるが、筋肉をこわばらせ、恐怖に全身を震えさせている。そんな少女の胸の内なぞ知ったことかと、元ミレニアムの二人は着々と準備を進める。

「やっちゃおうか!やっちゃおうかなぁ!」

「先生の!ちょっといいとこ見てみたいハイ一気一気一気!」

「術中は静粛に願います」

「はい」

手術着に着替えた二人は大声を出しても唾が飛ばないよう大仰なマスクをしてじゃれ合っている。ずいぶんと息苦しそうなマスクだが、彼女たちにとって黙るよりは楽なことらしい。

「では、今回調べたいのは幻覚作用ということで、視覚野のある後頭部を広めに開頭したいと思います」

「早くしろぉ!待ちきれねえぜ!」

「21番!」

「はぁい!」

ぶるぶると震える手にメスが握られるとピタリと震えが治まる。そのまま吸い込まれるように銀色の刃が後頭部に押し当てられ、スッと皮膚に赤い線が浮かび上がる。

刃先に骨を撫でられるゾリゾリという音がコユキの頭蓋に響く。痛みはないが、却ってそれが恐ろしく、まだぼんやりと残る圧感覚が純粋に皮膚の裂けるのを知覚させる。

「開けるぜ開けるぜ開けるぜ!」

「止血クリップ用意ありまぁす!」

「くださぁい!」

「はぁい!」

「次い!」

「はぁい!」

綺麗に円弧状に刃が走ったかと思うと手際よく止血を済まされ、ベロンと皮膚が捲られる。その動きに追従して、捲られた皮膚に生えている髪の毛がコユキの視界の隅で動いた。

「……ま、こんなもんでしょう。後頭筋剥離します。電気メス」

「どうぞ」

頭蓋骨と筋肉の間に電気メスが差し込まれ肉の焦げる匂いが立ち昇る。鉗子で引っ張りながら剥離する。煙を探知したロボットアームが自動で吸煙機を作動させ、煙が吸い込まれる音と腹のなる音が無菌室に響いた。

「焼肉食いてえ〜」

「集中してください」

────

「おし、綺麗に剥がせました。ドリル」

「はい」

ドリルの先端が頭蓋骨に触れガリガリと削れていく。急ぎすぎず怠けすぎず、適度な速さで頭蓋に穴が開けられ、硬膜の手前、薄皮一枚残して自動で停止する。

「やー、便利でごぜーますなー」

「そーですなー」


(鋸で切って頭蓋骨取ってとかなんかそんなシーンがあったとして)

(コユキちゃんの可愛い脳にお砂糖かけちゃおうね〜)


小さじ程度の砂糖が脳に振りかけられる。

『ぴっ……ぎゅっ!あ、ああ!あが、はがっ……!』

漿液に溶け、広がった砂糖が大脳新皮質に浸み込む。

「はーい、落ち着いてくださいねー。何が見えますかー?」

『ふぅーっ!ふぐっ!……っはぁ、か、ぎあな?』


『光!眩しい!痛い痛い痛い!見えない全部が見えて何も見えない!白い!眩しい!怖い!怖い!!!』

『ユウカ、ノア、先生?誰か?』

『ふあ?え?あれ?たすけ?こわい?あれれれ?れ?うゆ?んあ……あああ。あ。あああ』

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