鎮魂歌
新世界、ハチノス。
元海軍大将のクザンは、当ても無くフラフラとドクロのような城内を歩いていた。
数週間前、勢いのまま仲間になったはいいが、改めて海賊として振る舞う事に葛藤のようなものを抱いていた。
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「…?」
ふと、ピアノの音が聞こえた。
別に珍しい訳ではないが、此処らでは聞かない曲のような気がしたのだ。
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(聞き間違い…じゃあねェみたいだが…)
「よぉ、お二人さん、何弾いてるんだ?」
そう十番船船長室の扉を開く。
思った通り、二人の青年がピアノの元で何かしら話をしていた。
「ノックくらいしてくださいよ…この前沈めた海軍の船に楽譜があって、全部あるみたいだけど名前が書いてなかったんすよ。クザンさん、わかります?」
そう話を振ったのは“番拳”シノノメ•アキト。
アキトの言葉に付け足すように、“演操家”アオヤギ•トーヤも話す。
「あと、コレには歌詞もあると思うんです。もし良ければ歌ってほしいのですが」
クザンは困ったように頭を掻き、
「海導、ってんだ。亡くなった海兵を弔う曲で、おれは嫌いでね。歌詞は写してやる、歌うのは断らせてもらうよ」
そう歌詞を紙に書き写した。
「鎮魂歌、ですか」
「ふ〜ん……じゃあ尚更アンタが歌えばいいじゃないすか」
「はぁ?」
ペラリと歌詞を確認したアキトがそう呟く。
ズイとクザンに近付き、
「もう“海賊”になったんじゃないんですか?なくなった“海兵”に鎮魂歌の一つくらい送りましょうよ?…ま、誰とは言わねェが」
と、ニヤリと嘲笑う。
見下ろしているのは自分の筈なのに、見下されている気分だ。
「おれは歌うが。冬弥、いけそうか?」
「嗚呼、大丈夫だ。彰人」
暫く悩んでいたクザンだったが、諦めた様に息を吐き
「おれも歌おうかな、タイミングとか必要でしょ?」
そう自虐のように微笑った。
「!!いやぁ助かりますよ」
「そうですね。弔いの歌ですから、相手を思う人が居なければ意味ありませんしね」
まだ20にも満たない青年だが、彼らも海賊なのだ。
海賊の中でも凶悪な、海賊の。
海は見ている__
世界の始まりも__
海賊の二人には、別に海兵の為にこの曲を歌っている訳ではないのだろう。
ただ自身の好奇心、向上心の為。
だが彼らは結果的に、一人の海兵の魂を弔った。