錦上に花を添える
「マルク・スナッフィー!息子さんはもらいます!!」
「…とりあえずジャパニーズ土下座はやめてくれない?」
1週間前にしおらしげなロレンツォから「恋人連れてきたいんだけどいつがいい?」と聞かれた時から正直内心修羅場なのに、まさかそのお相手が今をときめく潔世一なことあるか?どうやって射止めたのお前。
「だぁー、スナッフィー!!!俺の恋人のよっちゃん!」
「ロレンツォ……♡」
き、気まずい………目の前で一応息子として育ててきた子のいちゃつきを見るの存外ダメージキッツいな…。
というかロレンツォを貰うのは確定なの図太くない???
そう思いつつ目の前のアジア人らしい童顔と、その顔に見合わず初めて青い監獄で見た頃よりもがっしりして幾ばくか伸びた背を見下ろす。
というか本当になんで?どこで?いつ?what???
「………えぇ〜っと、こういう時って息子はやらんとか言った方がいい感じなのかな?」
「「え」」
いやいや、逆にこれでOK貰えると思ってたの?
「どうしよロレンツォ……やっぱりスナッフィーをサッカーでねじ伏せるしかない?」
「だぁー、手強いな…」
いやいや全然手強くない手強くない!!!!
困惑してるだけなんだけど??!!
幸せにできるのならもちろんいいよ全然好きにしな?!
「……とりあえず中に上がって貰える?」
***
「君たち距離感やばくない????椅子2つ用意してるのに片方の膝の上に座ることある?」
「「?」」
「何言ってるのか分からないって顔やめて貰えない?!」
はぁ……はぁ……疲れる…本当に疲れる。
フィールドを90分駆けるよりも余裕で疲れる……。
「とりあえず……君たちの馴れ初めを教えて貰えない?」
「その……まずはお手紙かr「試合の後ノリでヤった!」ロレンツォそれ言わないって言ったよな?!?」
……もしかして俺夫婦漫才ギャグか何かを見てる?というか大分聞き捨てならないこと聞いたぞ。
「ヤったってなにを?」
これは流石に第一に確認しなきゃだよな。まさかブルーロック内で淫行に及んでたとかそんな聞き捨てならないことないよな?
「セッ「ごめんやっぱやめて」」
ロレンツォ……俺そんな子に育てたつもりないんだけど…そんな…そんなところ構わず誘う子に育てた覚えは………。
「あ、その……俺が誘いました!」
おま、い、いさ、おま。
「無理矢理トイレに連れ込まれて咥えさせられたな♡」
「ごめんって………」
おっと?君たち本当にどういう関係なわけ?聞けば聞くほど謎が増えるんだけど。
「………で、今日は何しにきたんだい?」
色々と掘り下げたらダメなやつな気がする。
見て見ぬふり見て見ぬふり。俺は何も知らないOK?
「その……ロレンツォの人生めちゃくちゃにする許可をください!」
「いやなんでそれを俺に聞くの???」
びっくりした。びっっくりした。びっっっくりした。
本当になんでただロレンツォの保護者代わりなだけの俺にわざわざそんな許可を求めるわけ?
最近の若い子ってすごいなぁ………。
「俺の人生はスナッフィーが拾い上げてくれたから。スナッフィーに俺の人生の使い道を聞きたかったOK?」
といつものように笑うロレンツォの指には高そうな指輪がぴったりハマっていて、幸福をたくさんもらったようで本当に心底幸せそうに笑っていて。
――なんかもう疲れたな。キミが幸せならそれでいいや。
馴れ初めが無理矢理気味でも倫理観がおかしくてもキミたちが幸せならもうなんかおじさんそれでいい……。
「挙式の日はいつにするつもり?オフシーズンがいいな」
「……っ!ロレンツォ!!!!」
「ッだあ!ありがとうスナッフィー!!」
と若くて青い2人の緊張が解けて嬉しそうに笑顔で抱き合ってる姿を見て、この選択が間違いでもその道を正しい道にしてほしいなぁとぼんやりと思ったし、きっと俺の口元も緩んでいたんじゃないかと思う。
【錦上に花を添える】
華麗な錦の上に、さらに美しい花を添えるように、美しいものの上に、さらに美しいものを加える、よいものの上に、さらによいものが重なることのたとえ。