鉄 魚 草 トライピオ アサヒ スゥパァ ドラァイ
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主
「酢飯を作ってくださいますかカワキさん 銀色の奴を12本持ってきたのでそれと交換ですわ」
「なぜ酢飯を?」
「さあ?今日の必要アイテムらしいですわ 『第六感』が言ってましたの」
タワーマンションのロビーにあるインターホンを通じて虎屋翼がカワキへお願いをしていた
カワキの天秤は酢飯の手間よりビールに傾いたようだ 承諾し少ししてある程度冷めた酢飯をタッパーに詰めて持ってきてくれた
「これが君にとって一体どういう方向性で必要になるのかは分からないが...ともかくビールは貰っておくよ」
「ありがとうですわ~」
マンションを出て木の棒を倒しその方向に進む 今日は随分と"風"が強く感じた
数度分岐を進んだところで一応見知った者がいた
「ダルヴァさんにマツィヤちゃん あー...蒼都(あおと)さんでしたわね?」
「ツァントゥだ」
「読みづらいので改名していただけると嬉しいですわ」
「改名する気はない」
三人は何か鍋を囲んでおり鍋の中は野草と肉で構成された普通の鍋料理だ
「やはり月島何某が除草剤を撒いたせいで一度枯れたからかのう...あまり野草がとれぬ」
「テメェが毎回食うために取り過ぎてんのもあるだろ もうちょっと茂るまで待てよ」
「こんなにクソほど風が吹いている中で焚火は良くないですわよ 食べ終わったら早めに消しておきましょう」
しかしこの四人仲が絶妙に悪い ダルヴァと蒼都間の感情は良好だが他が壊滅している
「なんでテメェら三人全員年相応の恰好じゃねえんだ 禿げるか白髪になれよ」
マツィヤは蒼都も翼も嫌い マツィヤはジジ専であり年季が入っている方が好きなのである いや男なら大体OKだが年齢詐欺は嫌いと言うべきか
「そこの草食動物と水族館はともかく そこの改名待ちはとっとと帰っていただけませんこと?」
翼はマツィヤもダルヴァも微妙 蒼都は今まで会った全ての存在の中で一番嫌い
「まぁまぁみんな仲良くしようではないか 蒼都もメキメキと陛下から下賜していただいた力の扱いが更に伸びておるのだ」
ダルヴァはほぼ全員すごく高い
「...(当たりが強いな)再度言うが改名はしない」
蒼都はダルヴァに「殿下の未来の忠臣」となるべくダルヴァとの修行を行った後食事をしに来ていたが この様である
鍋も食べ終わり火も消した 更に風は強まっている...火は消して正解だったと言えるだろう
「そういえば『カマイタチ』の噂を知っておるかの こういう風の強い日に人が斬られるとかなんとか」
ダルヴァがふと思い出したのか鍋を片付けながらそう独り言ちる
「改名待ちさん 貴方は今日『カマイタチ』に殺されて命日にする方向で逝ってみてはどうでしょう 『第六感』もそうだそうだと言ってますわよ」
「自然現象程度で斬られて死ぬ気は無い 僕が死ぬのは陛下か殿下の手でだ」
真顔で睨む翼と反抗的な目で見る蒼都 それを気の抜けた笑顔で見るダルヴァ
「流石は陛下に楯突いただけはあるのう 元気いっぱいじゃ!儂ら滅却師の未来は明るいのう」
「ダルヴァ テメェ来世は深海魚になれる素質(ポテンシャル)があるぜ」
ドン引きしているマツィヤが突っ込んだ後に続いて飛び込んできた声があった
「わあ...霊王の欠片がいーっぱい!それに......なんだか楽しそうだねお前達」
「「「どこがだ(ですの)!」」」「そうじゃろ?」
四人の前に現れたのは白い道化とでもいうべき破面...なのだろうか霊圧などからして以上であることは確かである
「The Think─熟考─ 貴方どこの誰ですの」
範囲内にいる全員の思考を吹き出しの形で表在化させる虎屋翼の聖文字が発動する だが
「ナポリタンコード...⁉暗号なんて整然とした羅列ではなく随分乱雑な思考ですわね 変更入力も出来ませんしイタリアンですわね!」
「スパゲティコードだ それにナポリタンは日本発祥だよ」
盛大に間違えた翼に蒼都が口を挟む
「喧しいですわね!張り倒しますわよ!?」
それに顔真っ赤で反応する翼を横目に道化は話を続ける
「スパゲティ...先生たちと会えたらみんなで食べたいな... そのためにもお前達から霊王の欠片をもらわないとだね」
聞こえてきたのはカワキの声 そこに居る全員がそうだと認識した
「おいおい...『カジキマグロ』(カワキさんの別称)の奴どれだけ綺麗に霊圧消してここに来たんだよ まあ心強い...あれ?」
聞こえてきていたのはダルヴァと蒼都の吹き出しが合体した内から...つまり
「君の考えていることは分かる つまり私は『虚像』の志島カワキだ
どうやらそこの破面も志島カワキとの面識があるようだね」
吹き出しの中のカワキをぼんやりと見ていた白い道化に話しかける
「殿下...?どうして窓から喋ってるの?」
「その前に一つ質問だ 『ナポリタンの発祥は?』」
「え...?......なんの話? ごめん殿下...わからないよ」
「構わない そもそも"答えられない事"を望んでいたからね」
「そっか~...じゃあこれで良いんだね殿下!」
白い道化は狂気を孕みつつも子供のような無邪気さも含んだ笑顔を見せた
吹き出しの中の殿下は道化に聞こえない様にしつつ四人組に話しかける
「分かったことを伝えよう
・彼女は完現術師の持つ霊王の欠片を狙っている
・彼女はいま噂になっている『カマイタチ』の正体である可能性が高い
・能力がまともに効かないのは恐らく崩玉もしくそれに準じるものを所持している可能性がある
最後が重要だ
・彼女は会話などの"記憶"を碌に保持出来ていない
彼女はナポリタンくだりに反応した後すぐに忘れている...単に興味が無いだけにしては彼女の吹き出しにも動きが無さすぎる」
「ご慧眼ですのう 殿下」「成程...」
ダルヴァと蒼都はすんなりと受け入れたが残り二人は...
「俺の吹き出しは金魚鉢で淡水魚が泳いでんのは分かんだよ...あれなに?」
「頭の中にイマジナリーなカワキさんを飼っているってことじゃないんですの?混ざっているってことは二人とも似たような思考なんでしょう
あと霊王の欠片がいっぱいあるのは私がユーハバッハを殺すために現世で蒼都連れて雪緒を脅して情報を得て希望者から回収したことがあるのでいっぱいなんだと思いますわよ」
「えっ 身近にカマイタチモドキがいんだけど...」
ドン引きしつつも話は聞いていた 吹き出しのカワキは更に続ける
「なんにせよ彼女にはこの場は"ご退場"願おう ダルヴァと蒼都は前衛をそしてマツィヤは寿司を握ってくれ あとタスクは配達を」
それを聞いて四人は行動に移し始める
「行くぞ蒼都!殿下に認められる為には『力を示す』これに限るのじゃ!おぬしが儂と違う思惑で殿下の忠臣を目指すのであれ...本人に媚を売ってせこせこ点数を稼ぐのでなく 外へ出て結果を作るのじゃ!」
「根性論は肌に合わないが..."未来"の忠臣二柱の片割れの忠言なら聞いてもいいだろう」
二人は無駄に息ピッタリに白い道化に駆けだす マツィヤは特殊な術を使い魚を召喚する あまり深く考えてはいけない
「鮪(ツナフィッシュ)!解体するからなんか刃物を貸せよ」
「はい『ドス』ですわ 回転ずし風にプラ〇ールやトライピオにでも乗せて運びますわね あとカワキさんが作った酢飯があるので使ってくださいね」
のんびりと寿司作成とデリバリーの準備をする二人 最後に吹き出しのカワキが付け加える
「蒼都 マツィヤの完現術『シークレット・イングリディエント』は自身の体から作成した魚での料理に回復効果を付ける...その効果は愛を込めるほど強くなる
つまり君には全く意味はない 君は孤立無援だが...君なら生き延びられると信じているよ」
「えっ」
──◇烈風吹き荒れる中運行続行 回転ずし開店開始(ローテート)