金庫大脱出
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「金庫に閉じ込められるなんて貴重品にでもなった気分ですわね...」
息も絶え絶えに翼は言葉を吐き捨てる あの女とおっさんに閉じ込められてしばらくして火が消えてようやく一息付けた
(正直言ってあまりにも厳しい どうやら体も金庫に入るために縮んでいるようですしどれだけの火力があれば金庫を破れるのでしょう...?)
金庫の中では光など一切ない 恐らく外は夜なのだろう
もしも金庫を破れなければここで死ぬ
仮に金庫を破れたとしても道に迷えば死ぬ
そもそも外に奴らがいれば追撃されて死ぬ
「考えても栓の無い事ですわね 罠があってもどの道ですし持ちうるものは全てぶつけておきましょうか」
汞一文字と我流滅却師としての力...奴らは完現術と言っていたがそれは置いておこう どちらも使ってこじ開けることにした
意気込んだはいいが結局やるのは単純 全力で一か所に武器をぶつけてぶち破るのみ
とりあえず硫酸水鉄砲かけて...ベイブレードをぶつけて...etc
「往生しなさい!!」
そして全力で刺突した 体中が軋み明らかに鳴ってはならない音が鳴っていたが壁に少し大きめの傷がついた
「こうしている間にも一護や石田君...井上さんやチャドも危険が迫っているかも知れない この無理をこじ開けて助けに行けなきゃ何が我流滅却師ですの!!」
もう一度構え直し足に力を入れる 今にも崩れ行きそうな己の体を奮い立たせる
無理を通しての一撃を経て...光が見えた どうやら月明りらしい
金庫から出ると体のサイズは元に戻った だが良い事それくらいで悪い事ばかりだ
「最悪ですわね...一体どこの山ですのここは?」
樹海だとかすごい有名な山という感じではなく特に人が出入りしないような普通の山なのだろう だからこそ案内も無ければ山道も獣道すら無い
せめて景色が良ければキャンプ場もあったろうが大した山ではないが故にそれもない
山の天辺から見下ろせれば道路なり街の方向が分かっただろうが木々は高く鬱蒼としており周りの状況は掴めない
「...いつも通りで行きましょうか 別に死にかけるのはいつもの事ではありますしね」
あれだけ燃えていたが恐らく翼本人以外に燃え移るようなことは無かったのだろう いつもの木の枝を置き 倒す
あまり歩く体力は無い 木の枝が人里から離れた場所を指せば恐らく死ぬ
「丁か半か...いや方角だともっとありますわね」
「はぁ...帰るの遅くなっちゃったな」
男は憂鬱な帰り道を少しでも気分よく帰るためにゴキゲンな音楽の音量を上げノンカロリーのエナジードリンクを飲んで車を運転していた
この道は対向車のすれ違いがくそめんどくさい以外は車通りはとても少なくサツも少ない
多少速度を出して帰れる良い裏道だ...たまにデカい虫を轢いて車を拭く必要があったりするが
「あぁ?なんだありゃ 狸か猪か?」
轢かれたのか分からないが赤い色が見えた これだけデカいと轢いた車も相当ひしゃげてそうだ
だが近づいていくとあれは赤い色が血なのはあっていたが恐らく服を着ていた
スピードを出していたのでそのまま通り過ぎてしまったがすぐさまクソ狭い道路を無理やり引き返してUターンした
「頼むからマネキンか何かか悪質なドッキリであってくれよ...!」
残念 実際に倒れたいたのは人間の推定少女であった
男はすぐさま警察と救急に電話を掛けた 山で遭難したには火傷の傷がありなぜか和服を着ている
もしかするとこの女の子をどうにかした奴がこの辺にいるかもしれないと不安だったが『もう警察も救急も呼んじゃったし自分しかいないし...』とうだうだ考えつつ近くで衰弱している少女に救急から聞いた出来る限りの事はして待っていた
警察と救急が来て事情を話し少女が一命を取り留めたのを聞いて帰る頃にはかなり時間が経っていた
余談だがなぜか少女を処置した医者が男を休めるように手配してくれたり 助けてからなんだか通ろうとする信号が全て青だったりするような小さな幸運な事が続いたりと良いこともするもんだなぁと男はノンカロリーのエナジードリンクを飲んで運転を続けている