酔っ払いの昔話
「……ただ遊びたかっただけなんです」
「私の家にはお仕置き部屋があったんですよ。レナトスさんの家にはありました?無い?そうですか」
「お仕置き部屋はいつも暗かったです。光がほとんど無くて、見えなくて、あと物もありませんでした」
「悪いことしたらそこに入れと言われて3時間くらい入れられてました。私は3時間暇なので寝てたり、こっそり開けた穴から外に逃げ出したりしてました」
「だから私は平気だったんですけど、ワースはダメでした」
「その部屋に入ったワースはいつも泣いてました」
「なので私はこっそり穴から入ってワースの傍にいたり、ワースを穴から外に連れ出したりしてました」
「そうしたら泣き止むんです。ワースが泣くのはあまり好きではなかったので私はそうしました」
「その日もワースは閉じ込められて泣いてました」
「私はこっそり穴から入ってワースを連れ出して外で一緒に遊んでました」
「ただはしゃぎすぎて、帰りたくなくて、帰りが遅くなって父に外に遊びに行ったのがバレました」
「父が怒ったので私が無理やり外に連れ出したんだって言いました。実際ワースは自分から出ずに私が手を引いた時だけ出たので」
「父は怒って私を殴りました」
「別に大した傷ではありませんでした。かなり痛かったですし血も出てましたけど、当時の私の魔法で治せる範囲でした」
「ただワースは泣きました。大した傷じゃないと言っても泣き止みませんでした」
「魔法を使って私の傷を治してみせても泣き止みませんでした」
「それから私が誘っても遊びに行ってくれなくなりました」
「ただ私はワースと遊びたかっただけなのに何が悪かったんでしょうね」
「……ぐう」
「……やっと寝たか」
テーブルの上で突っ伏して寝ているオーターをみてため息をついた。
「それにしても凄いなこのエピデムがつくった擬似アルコール飲料。本当に酔っているオーターと似た症状だった」
寝ているオーターを起こさないように気をつけながら客間という名のオーターの部屋に連れていく。
そしてベッドに寝かせた。
「……お前は悪くなかったと思うぞ」
そう言ってオレはオーターの部屋を出た。
※兄弟は全員外出中
※兄弟がいたら多分この話はしなかった
オーター「だって兄弟の地雷踏みそうなので」