酔いどれとうちょ
ちゅ、ちゅ、と音を立てて口付けられる感覚に深く息を吐いた。
酔っ払いに手を出すほど男は廃れていないと思いつつ、何度か口付けを返す。脹相は珍しく上機嫌な様子で口角を上げて柔らかく笑んでいた。可愛いと素直に思ってしまう。
「……脹相、抱かれたいと言っていたな。」
「ん…?あぁ。そうだ…おれは、あおいに抱かれたい。」
舌っ足らずに告げられる言葉が愚息へ熱を溜めた。だめだ。酔ってる時にそんなことは、と必死に理性を働かせる。
重ねた唇の隙間から舌を差し込むと、脹相の低い鼻がかった声が漏れ出し興奮を煽られた。眉間を寄せて波に耐えようとしたところで、白い指が俺の耳を撫でた。強いアルコールの風味が鼻を抜ける。
「あおい、これは言ってなかったんだが」
「……何だ。」
「お前の名前は、とても可愛い。」
くふくふと笑いながらそう言って脹相の舌が俺の舌に絡んだ。あまりの可愛さに、意識が飛びそうになる。
「……襲うぞ。」
「お前は、酷いことはしない。」
はっきりと告げられ襲ってはいけないと縛りをかけられたような気分になった。服の裾から手を入れて、胸の突起を弄る。
「ん、ぁ……っ」
「これは酷いことか?」
「んん、ん……気持ちいい、から、酷いことじゃない……」
首を振る度にふたつに結ばれた毛先が揺れて音が鳴る。正直、俺はこの髪型が好きではなかった。異形であることを主張するような意味合いを感じる。髪を解いてやると、脹相も俺の髪を解いてきた。ドレッドがかった髪が肩に落ち、それを愛しそうに撫でる脹相がたまらなく愛しかった。
「…あおい、」
「脹相…お前、今後俺以外の前で酒は飲むなよ。」
「なぜ、だ?」
「酔ったお前は可愛すぎる…。」
俺の言葉に脹相は目を丸めた後に気恥しげに笑った。恥ずかしい時に笑うのは珍しい、余程酔っているらしい。2年、それだけの月日がやたら長く感じてしまった。
「…脹相…、もっと、キスさせてくれ」
「お前が、酔ってしまうかも」
「知るか。そんなの、どうだっていい。」
舌を絡めあわせて、口内に残るアルコールの風味が消えるまで口付けた。いつか、成人した時はこいつの好きな酒を飲もうと心に決めた。
こいつに酒の味を覚えさせたのが誰かなんてことは何となく分かりきっていたが、それすらも上書き出来ればと思う自分はやはりまだ子供なのかもしれない。