邂逅Ⅲ.Ⅴ:夢は終わらない(Chapter.Ⅱ)

邂逅Ⅲ.Ⅴ:夢は終わらない(Chapter.Ⅱ)


名無しの気ぶり🦊


「それでは! ダイヤちゃんのメイクデビュー&(アーンド)初勝利を祝ってぇ〜…かんぱ〜い!!」

「「「かんぱ〜い♪」」」

「「「「「乾杯!」」」」」


ダイヤの勝利を祝い英寿とキタサンが発案して夜の栗東寮食堂、計9人で集まって祝勝会を行なっていた。ちなみに男子陣や美浦寮生であるクラウンの入寮も含めて栗東寮には事前に申請を通してあるのでモーマンタイというやつである。


ちなみに生卵とオロナミンCを使った絶好調カクテル(景和命名)を大量に用意しジョッキに注いで乾杯していた。

ビールの雰囲気は味わってほしいが健康にも配慮してほしいというトレーナー陣の意図によるもの。

オロナミンCは黄色、卵によりとろみも味わえるので、見た目にも喉越し的にもビールっぽさは十分だった。


「ってもー…、これで乾杯何回目?」

「っとはふはふ!…にしてもマルちゃんの牛すきうどん大盛り、何度食べて美味しいわね♪」


「まあまあいいじゃない。めでたいことは何回も祝ってなんぼよ〜!」

「沙羅さん…それもそうね、ツルツル♪」


「姉ちゃんは厨房で包丁握りながらクラウンちゃんにそれを向けないで、初心者じゃないんだから…」


ちなみに英寿たちは調理中である。手が開けば入れ替わり立ち替わりテーブルのほうに座っていくスタイルだ。


「たくっ、なんで俺たちが料理を…」

「ふふ、そう言いながらミッチーが1番張り切ってくれてたじゃない♪」


「そーそー、こういうことは熱心に祝え(声真似)みたいな感じで材料集めに精を出しちゃってね」

「クラちゃん引き連れて私とシュヴァルちゃんにも凄い勢いで参加を促してきた時はビビったよ〜もう、まあ楽しいからいいけど」


「祢音ちゃん…うぅ、どうしてボクまで……」

「あっ、青いちゃんぽんが相変わらずイケる…チュルチュル」


先程からクラウンやシュヴァルが啜っていることからお分かりかもしれないが、マルちゃんの赤いきつねと緑のたぬきシリーズの商品が各種幾つか鍋に投入して用意されていた。

季節は冬、ただしお手軽さを楽しみたいということで担当ウマ娘たちから発案した形である。

まあこれだけ量があると鍋パーティ感があるが。


「絶好調カクテルもやっぱり美味しい! あ、もちろんお祝いも何回やってもめでたいからね〜♪ では、今日の主役のダイヤちゃんと桜井トレーナーより一言!」


「今日のメイクデビューでようやくスタートラインに立てました。皆さん、応援ありがとうございます!」

「言いたいことはだいたいダイヤちゃんが言ってくれたから少なめに。…なんとかダイヤちゃんの努力が実ってくれて、俺はもう感無量です!」


「ダイヤちゃん、けーわ、おめでとー!!」

「「ふっふぅ!」」

「タイクーン、おめでとう」


本日の主役であるダイヤと景和が感想を述べていく。あっさりに見えてしっかりと嬉しさが感じられる一言だ。


「ズルズル…ゴックン! (やっぱりきつね美味しい〜) ではでは!これからの抱負をッ!」


サトノダイヤモンド「抱負? ……目標は来年のクラシック三冠レース」

「まずは皐月賞で、サトノ家悲願のG1タイトルを必ず獲ります」

景和「ここからダイヤちゃんの夢が始まるから慎重に選びました!」


「おお〜!」


「…まあせいぜい頑張れ、クラウンだって負けてやらんがな」

「ミッチー…そうね。頑張りましょうダイヤ、桜井トレーナー。私たち4人で、サトノ家の勝利のために!」


「うん!」

「もちろんだよクラウンちゃん!」


そして今後の抱負も述べていく。中身が中身なので、同じチームカペラに所属している道長・クラウンとも相通じる抱負。

かつてニラム・ドゥラメンテが持っていった皐月賞、英寿・キタサンが逃がしたものに必勝宣言。

伸び盛りを感じる決意表明だった。


「ではでは、続いてシュヴァルちゃんと祢音さんの抱負を!」


「ぁえっ、僕もお⁉︎」

「いきなりだね…でもピカリ♪ 任されました!」


「うん!」

「…ハァ。…春先の怪我でクラシックに出走できず悔しい思いをした。ッ、来年は巻き返し、必ずG1を獲る!!」

「正確にはジャパンカップをいずれは2人で取れたらなぁって考えてます♪」

「あっ、そこまで言わないでえ!」


「ジャパンカップ! テイオーさんも取ったあのジャパンカップかあ…」

「復活後のレースとしては記憶にまだ新しいよね」


「いいんじゃないか、堅実だが諦めないって意思が感じられる」


「そっか、シュヴァルも祢音さんと来年度以降のG1、もっと言えばジャパンカップを…なら同期としては私たちも負けてられないわねミッチー!」

(…もう、秋天みたいな惨敗はごめんだから)


「お前はお前のやり方があるから焦らなくてもいいだろ。…まあ今のお前が目指して困るもんじゃないのはそうだがな」


なぜか続いた抱負表明。シュヴァルは昨年怪我

なのでリベンジをということらしい。

彼女に限らずアスリートはつくづく怪我やメンタルダウンが絶えない。怪我や自分との勝負

とりわけウマ娘であれば輪を掛けて繊細な生き方であるのだと。

人並みの体格から繰り出される人を超えた速さの持ち主ならさもありなん。


そして少しばかり前に秋天で大敗を喫してしまっていた道長とクラウンも密かに闘志を燃やすのだった。


「じゃあキタちゃん、英寿♪」

「うん、僕たちが言ったんだから次は2人の抱負をっ」

「えっ⁉︎」


「キタはともかく俺までとは予想外の流れ弾だな…まあ構わないが」

「トレーナーさんまで⁉︎」


「ほら早く」

「ぅえ〜⁉︎」


そしてさらにさらに抱負はなぜか続く。

シュヴァルなりのキタサンへの意趣返しであった

巻き込まれて強制参加、そのうえ抱負まで言わされたことの原因たる彼女への意趣返し。

まあ英寿はそこまで意に介していないようだが。


「えっと、ええっとぉ〜…! あ、有馬記念!」

「憧れの有馬記念で走りたいっ!! ですっ!」


「おお、同じ考えか」

「トレーナーさんもですか⁉︎ 良かったあ〜!」


「キタちゃんが2020有馬記念…」


「…出られるんじゃないの?」

「条件は満たしてるはずだよ、確か」


「えっ?」


「そうよ、菊花賞取ったんだし♪」

「あれだけ熱い勝ち方してりゃ、キタサンを支持する観客もわりといるだろ」


「そうですか…出られるかな、出られたらいいなぁ!」


抱負としては今年の有馬記念に出走したいということ。英寿も同様である。

キタサンからしてみればチームの先輩で憧れであるテイオーが最後の復活を遂げたレース、英寿からしても先輩である永夢がテイオーと組んで栄光を勝ち取ったレースである。

先程シュヴァルが出ると予定していたジャパンカップもテイオーが出たレースではあるが、やはりこのレースは特別。

両者共に目標としての興味は尽きず、なら形にしたいというところなのだろう。


「いやクラウンもそうだが、というかキタサン、お前こういう出れるかどうかみたいなことはギーツに直接聞いたほうが早いだろ」

「本人がいやがるんだからな」


「あっ、それもそうですね!」

「失念してたわね…で、実際この子は有馬に出られるの、浮世トレーナー?」


「そうだな…」

「と、トレーナーさん…⁉︎」


「──もちろん、出れるはずだ。知名度的にばっちり行ける」

「最近ちょくちょくリサーチはしてあったからな、スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ特権で」


「…やったあっ!!」

「走れるんですね、有馬で!」


そして気は早いがどうやら出られるようだ。こういうところの調査を担当にさえバレずにやってのけているあたりが英寿の英寿たる所以かもしれない。


「あくまでまだ確定してないうえでの話だが、ローテ的にも距離的にも菊花賞の走りなら十分戦えると判断した」

「そう、弱さは強さと知った今のお前ならきっとこの冬の祭典で戦える。お前のハイライトはまだまだいっぱいあるってことだ!」


「トレーナーさん…う、うぅ…ぃいやったあああッ!!」

「ほんと良かったわね、キタサン!」


「うんクラさん、あたし今めっちゃくちゃ嬉しいよお…!」

「涙流しちゃって、ふふ♪ でも頑張ってね、応援してるわ!」

「もちろんミッチーもね♪」


クラウンも当然喜んでくれる。元来彼女は悲願というフィルターを外せば自分も周りもハッピーエンドがモットーな欲張りっ子なので、今回のことも我がことのように嬉しく思うのだった。


「勝手に言いやがって…まあ頑張れキタサン。というかくそっ、いつかはクラウンだって有馬にも来年以降の秋天にも出てもらうからな!」

「今年の秋天の負けがなんだ、G1でのお前の力はこんなもんじゃねえ!」

(! ミッチー…)


『ぁっ…わた、わた、し…!』

『ごめん、なさいミッチー…負け、ちゃったぁ…グスッ!』


『…もう何も言わなくていい、俺とお前の力足らずで負けちまったんだ…すまねえ』

『ぇあっ、うっ、うっ……うわあああああああ〜〜〜!!』


「///、もう、今はキタサンのターンなんだからまた今度にしてよお…」

「…でも、うん。私だって負けっぱなしじゃ、悲願を叶えられないままじゃ決して終わりたくない。絶対にここから巻き返してみせるわ!」


「クラちゃん…うん、頑張ろう!」

「クラさんと同じ皐月賞時点で三勝バのあたしが行けたんだもん、クラさんだってきっとG1、取れるよ!」

「お、応援してる…」


「ありがとうダイヤ、キタサン、シュヴァル。まだまだこのままじゃ終われないからね、私も!」


そしてミッチーが改めて触れたが、秋天で17着と惨敗を喫してしまったクラウン。彼女のリベンジのためにも改めてG1優勝を誓うのだった。


「ふふ…あっ! 良い意味で脱線してたから話を戻すけど、キタちゃんと浮世トレーナーならきっと有馬記念は大丈夫。私とトレーナーさんと沙羅さんが保障しますっ!」

「今のキタちゃんを見て応援しない人はいやーなかなかいないでしょ!」

「英寿の知名度はもちろん、キタちゃん個人でも長距離である菊花賞、その一着になったことで間違いなく通用する実力があるアスリートとして有名になってるからね。まだまだ未熟な俺の意見だけど、通用すると思うよ」


「私とシュヴァルちゃんも保証します、ピカリ♪」

「…あの走りを見て難しいんじゃって考える人はなかなかいないんじゃないかな、たぶん…」


「皆…ありがとお〜!!!」



桜井姉弟やダイヤ、祢音・シュヴァルらも皆各々の激励をし、有馬に臨むキタサンの気持ちを今から奮い立たせるのだった。


「ちなみにテイオーからも応援メッセージが来てるぞ」

「⁉︎ ほ、ほんとですかあっ⁉︎」

「ああ、ほれ」


『にしし♪ キタちゃん聞いたよ〜、浮世トレーナーと有馬記念に出るつもりなんだってね。…今の君が出る有馬なら熱戦激戦間違いなしっ! 」

『──うん。頑張ってね、キタちゃんっ!!』


「あっ…」

「あたし、今あ゛た゛し゛、ここで死んでも悔いがないかもでずぅ゛〜゛!」


「「「「「「「いや死んじゃダメだからね⁉︎」」」」」」


ついには今はここにいないテイオーからの応援メッセージが届いたことで感極まってしまい、成仏するみたいなことを言い出す。


「…良かったな、キタ。お前の努力がまた報われて」

「ふわっ⁉︎///」


「と、唐突なスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズっぷりというかサプライズムーヴ…流石のエンターテイナーね浮世トレーナー…私も負けてられないわ!」

「いやこんなもん見習うな!」


(有馬記念に出られるって聞けたうえに、テイオーさんに凄く褒められて、そうかと思ったらトレーナーさんに頭を撫でてもらっちゃった…///)

(今日はダイヤちゃんと桜井トレーナーが主役なのに、祝ってもらえてるあたしってほんと幸せ者すぎるよお〜)


おまけに英寿に頭を撫で撫でされたことで、恋心にウブで無自覚なキタサンとしてはまたまた舞い上がってしまう。


(…でもだからこそ、頑張らなきゃ!)

「…ありがとうございますトレーナーさん、でもこれもトレーナーさんやチーム世界スターの皆さんのおかげです」

「だから有馬記念、絶対一着取りますっ!」


が、こういうところの気の引き締めが意外としれっとできるキタサンなので、自らがこうなったことを喜びつつ有馬に向けた意思表示を改めて行うのだった。


「そうか。だがキタ、今までは同年代とのレースだったが有馬ではそんなのは関係なしの無差別級。クラシック級はもちろん、心身ともに完成されたシニア級とだって戦う事になる」

「トレーナーさん!」


「──そのうえで一着を取るっていうなら、覚悟はいいな!!」

「はいッ!! よーし!これからのあたし達皆の華々しいハイライトにぃ、皆でかんぱーい!!」


「「「「「「またー!?」」」」」」


そしてそこでまたまたお祝い代わりの祝杯を上げようとして道長やクラウンらに突っ込まれるまでがセット。


皐月賞・ダービーでの敗北でひたすら凹み、地球の裏側までぶち抜かんばかりだったキタサンだが、前以上に明るくなった気さえする。

ちなみにずっとカクテル髭が付いた状態で喋っているのはご愛嬌というやつである。


チームスピカ・部室


「…有馬記念、おめでとうキタサン」

「頑張ってね〜キタちゃん!」


「キタサンブラック、今のお前なら特に心配もいらんだろう」

「素直じゃないなあ。あ、僕も応援してるからね!」

「タイシンさんチケゾーさん、鏡トレーナーに宝生トレーナー…はい、頑張ります!」


瞬間、轟音



「「「「「「うわぁ!?」」」」」」


「なんだこの轟音…まさか…って、やはりお前かあ!」


「どうしたの⁉︎ ってこれは酷いなぁ」

「言うに及ばずだけど言うわ、酷い」


何事かと思えば、部室外でいつものスタートゲートが転倒。どうしてこうなったというと

原因はゴルシ。いつからかチーム世界スターにマックイーン絡みで居着いている彼女がまたまたやったのである。というのも自由奔放さが売りと言えるぐらい破天荒なウマ娘だからだ。

今年に限れば宝塚で観客の声援を一時的に大量の悲鳴に変えたゲート立ち上がりも記憶に新しい。


「何やってんだゴルシ!」

「おおパラドか、ゲートから出られなくてな」


パラドが怒鳴りにいくが、いやはやその原因はおかしい

出ようとして引っかかり、ゲート自体をひっくり返してしまったのだろうか。

ゴルシだからとするのではなく、体幹がおかしいだろうとか、筋肉的に考えるのであれば


「ハァ…頼むよ、宝塚記念の悪夢はもうごめんだよ…」


「やらかしたしね」

「やらかしたもんねえ」


妙に息ぴったりでむしろ怖いタイシンとチケゾー。

そう、先程も触れたが宝塚記念の悪夢

2020年、つまり今年の6月28日の宝塚記念、約120億円の金の流れを紙くずに変えたそうな

スタートに失敗しただけだが、なら伝説級である。


「全くだゴールドシップ。やっとお前はゲート再試験に合格したというのに今度のジャパンカップで失敗したら「安心しろ!」んおっ⁉︎」


「次こそ完璧なスタートで芝のGⅠ七勝。そのまま有馬に乗り込んで史上初の八勝だッ!!」


「「「夢みたいなこと言ってないで、ちゃんと練習しろー!?」」」


リアリストな永夢以外ロマンチストとそもそも人間じゃないやつな状況でそれ言う!?とはなるが、そこはまあ立場の違い。

夢みたいなことを謳って成績を残せないままに去っていく誰か

これはどういった職種や業界でもあるあるで、とりわけそれが如実に出やすいトゥインクル・シリーズというウマ娘限定職種なら尚のこと。


それを見届ける側の人間だって切り捨てたくて切り捨てるわけではないのだから。


「ったくあの方は……」


マックイーンという出会いから現在に至るまで散々ゴルシに振り回されている者が言うと重みが違う。

ちなみに最近目を狙っていない。


とはいえ皆が目標とするGⅠを六冠

ゴールドシップは本当に凄いアスリートウマ娘なのである。

なので、こいつのせいで120億が紙屑になったことにぶう垂れるやつがそれなりにいるのも一応理解はできるのである。


「……気合入ってますね、ゴルシさん…!!」

「お前もそう思うか、キタ」


「はい、闘志に満ちてました!」


が、みんな呆れる中で戦意を高める英寿とキタサン。

このトレーナーとアスリートウマ娘、恐らく前者に磨かれる中で後者の育ちゆえの真面目さやトレセンに来るまで眠っていた勘が研ぎ澄まされ鋭利になっていったと言うべきか

とにかく2人とも察しが早く戦うこと、競い合うことに実はわりと意欲的。

特にキタサンはダービー時点ならゴルシの本気を感じた時点でビビリ倒してそうなもの。そうでない今はダービーによる挫折、英寿による再起を経た事が活きているということなのだろう


「ありま~ありま~あーりまーっ♪ 有馬っをねっらっえ〜♪」

「だーれと走っても負っけないぞぉ~♪ 」


「鼻歌混じりとは余程嬉しかったんだな、キタ」


「そりゃもう! ダイヤちゃんが主役なのにこんなに幸せお裾分けされていいのかってぐらいには昨日の夜は嬉しかったです!」

「生徒以外基本立ち入り禁止な寮だからトレーナーさんと楽しく語り合う時間もなかなかなかったですし」

「それこそ今みたいな時間も貴重なんですっ。あたしやトレーナーさんの都合がなければトレーナーさんとはなるべく長くいたいですし」


「…可愛いやつめっ!」

「⁉︎ はにゃあ〜…えへへ、ありがとうございますっ♪」


放課後、それも帰り道。昨日の一件で有馬に凄く意欲的だからか、はたまた英寿と最初は進路が同じだからか一緒にいられることに浮かれたのかテイオーみたいに歌いだすキタサンがいた。

真似ているのか似てしまったのか。

そして丁度、見慣れた地獄みたいなチームスピカ勧誘看板に差し掛かったところである。

今さらではあるが、これみて入部する者がどこにいるのだろうと思われやすいぐらい八ツ墓村感のある凄惨なイメージイラストである。


「辿り着くまで挑み続けてぇ〜(以下略)いつか叶うときを信じてる〜(以下略)期待と願いあっきらめないっ♪…おっ?」

「菊のコンチェルトで聴かせて貰ったよ、君の魂のメロディーア…!!」

「デザイア~♪ 英寿、君に一目惚れだベイビー♪ 結婚しようよ♪」


そんなおり、またえらく濃いトレーナーとウマ娘が現れた。

英寿を待ち受け、ギターを弾いていた暫定トレーナー。

キタサンを待ち受け、ヴァイオリンを弾いていたウマ娘。


おまわりさんこっちですと言わんばかりの怪しい雰囲気。あとどうでもいいが、すごく巻き舌である。


「Bellissimo! 浮世トレーナーにキタサンブラック!!」

「私がサウンズオブアースだ!」


「プチョヘンザ! ドープなレースだったなキタサンブラックに浮世英寿! 俺がこいつのトレーナー、晴家ウィンだ! ハードノックに行かせてもらうぜ〜!」


「「よろしく!!」」


「誰だお前ら」 「あっハイ…」

((うわぁ…))


キリスト教に出てきそうな名前に、遊戯王のモンスターみたいな名前の2人。

何かと音楽に絡めたワードを出すのは、演劇に絡めて語りやすいオペラオーを彷彿とさせる。

同じく芝居がかったタイプなものの彼女より没入感が強い。ただウィンに限ればまだどこか敢えて演じているふうでもある。

まあどちらもありていにいって変なのは間違いない。


「レースは地球とウマ娘のensamble! さあ!アースと共に、美しき音色を…!!」

「か、顔が近いです!?」

 

「俺たちと見せようぜ! パンクでロックな、エルヴィスもかくやってぐらいのギグを!」

「いや近づいてくるな、というかよせ気持ち悪い」


ウィンは英寿を、アース早くキタサンを壁ドンする。

ダイヤがいなくてよかったというべきか。

いたらキタサンに関して危うく殺し合い宇宙、とは流石にいかないが多少揉めていた可能性はあるだろう。


「Ah、君となら有馬で空を舞うVirtuosoにだって「近いですってばー!?」」


「インプロヴィザッツィオーネのアイデアが湧いて止まらねえぜ!」

「あっインプロのほうが聞きやすいか!」

「知らんが離れろ、早く」


「こ〜ら、ウィンさんにアースっ!」

「「ぁうっ(ん)?」」


「あんたらまた何やってんの!」

「ネイチャさぁん…!」

「救いの女神ありだな」


そんな状況は幸いネイチャが通りすがって終了。まさにナイスなタイミング。しれっと落下する形で看板が犠牲になったが。


「やれやれ…これからがHarmonyだったのに」

「俺たちのセッションはまだこれからなんだがねえ」


言ってウィンはギターの弦から指を離し、アースはヴァイオリンのスイッチを切って去る

いや弾いてなかったんかい!!と英寿・キタサンは内心叫んだのだった。実はヴァイオリン型の音楽プレイヤー、そういうのもあるようである。


「では楽しみにしているよキタサンブラック、浮世トレーナー。有馬記念のορχηστραをッ♪」

「楽しい対バンにしようぜ! じゃあな英寿、キタちゃん♪」

「ハーハッハッ♪ ハーハッハッ!」


(あれが浮世英寿か…まあプレイヤーとしてはどうにかしなきゃだがデザグラ抜きなら仲良くしたいタイプだな!)


今さらだが、また濃いのが現れたものである。


「ごめんね、キタサン、浮世トレーナー…ウチの新入り2人が迷惑かけちゃって」

「え…、ウチの!?」


「なんとなく察してたが、やはりか…」


「あーはっはっは!!」


ちなみにやはりカノープスのメンバーだった。

予想を裏切らないというか、納得の面子だった。


「カノープスの所属だったんですね、アースさんと晴家トレーナーって」

「ちょっと変わり者なコンビだけどね〜。…でも、それだけじゃないから!」

 

「えっ?」

「強いし凄いよあの2人は! 有馬に出たらとっちゃうかも? カノープスで初めてのG1!」


「お前が自信ありげにそう言うってことはそれなりに腕は立つってことか」

「もち、アクは強いけど実力も強いよ〜」


「それにあんたらも出るんでしょ、有馬記念?」

「うぇ? あっはい! まだ確定ではないですけど走れるだろうってトレーナーさんが言ってました!」

「まあな、出れないわけないだろうし」


「2人とも嬉しそうじゃん♪」

「はい、憧れのレースですから!」

「教え子が一年めから有馬に出るかもなんだ、そりゃな」


広い公園にありがちな見慣れたボート

そこで3人は喋りながら漕いでるものの

キタサンが興奮するたびにボートが加速し、長い付き合いとはいえ英寿は少しヒヤヒヤしていた。


「有馬記念…、あたしにとって特別なレース…!!」

「あのレースかぁ…♪」


テイオーが奇跡の復活を遂げた舞台が少し前。まだ記憶に新しいレースである。


「ネイチャさんも出走してましたねっ」

「まあ、三年連続三着だったけどっ」 


「謙遜すんな、毎年それだけ善戦できてるやつもそうはいない」

「あはは、どうも」


「でも確かにちょっと特別だよねえ、有馬記念って」

「そうなんですっ!…あっ」


「…ありがとうございましたネイチャさんっ!」

「俺からも言わせてくれ、ありがとうネイチャ」

「え⁉︎ ちょっと何よ2人して突然⁉︎」


そんな有馬について語る中、何を思いだしたのか2人はネイチャにお礼を言いだす。当然ネイチャからすれば困惑が勝つのだが。


「あたしたちが有馬に出られそうなのって菊花賞を取れたからです」

「そこまでの期間、ネイチャさんはじめ、トレーナーさん以外のいろんな人がいろいろアドバイスしてくれるってこともなかったら…」


「よ、よしてよもー/// その間頑張って菊花賞に出て勝ったトレーナーとウマ娘は他ならぬあんたらでしょ。あたしはなーんにもしてないよ」


理由が分かるも、その間メンバーの感情に合わせていよいよボートの加速がえらい事に。


ただ英寿も言っていたが謙遜こそすれど、そも有馬はもちろん重賞に出走できるだけで栄誉である。本人的には不満もあろうが三着というのも充分好成績である。

つくづく「凄い奴らの同世代に挟まってしまった」名バでつまりはすごいウマ娘なのである、ネイチャさん。


「まあ2人とも余計なこと考えてないで、今は有馬に向けて仲良く一緒にがんばんな?」

「相談あるなら…まあ先達として話くらいは聞いてあげるしっ」


母性に溢れているというのかさり気ない気の利いた言い回しができるあたり、商店街でいろいろな人間と接しているだけはある。

ダービーでも我がことみたいに応援してくれていたこともまだ記憶に新しい。


「ふわぁ〜…! ありがとうございますっ、ネイチャ先生!!」

「ご教授感謝するぜ、ネイチャティーチャー?」


「せ、先生って…///」

(うわぁ、やばいやばい…キタサンってばキラキラしてるし後輩力高すぎっしょ〜!)

(浮世トレーナーはキザなだけかと思ったらあざとさある笑顔見せてくるし〜!)


こうやって人並みに照れてくるのも親しみやすさを感じさせるようで、彼女の魅力というやつかもしれない


そして3人はその後も洗足池公園でちょっとしたフリートークを楽しみ帰宅したのだった。


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