邂逅Ⅳ→Ⅴ:デュオ神経衰弱ブースト(ChapterⅠ)

邂逅Ⅳ→Ⅴ:デュオ神経衰弱ブースト(ChapterⅠ)

名無しの気ぶり🦊

「デザイアグランプリ第2回戦を終えて、勝ち残ったのは5人。次脱落するのは…俺かもしれない…」

「脱落って…何の話?」


「あ、いや…何でもないよ、姉ちゃん」

「景和…、隠し事してるでしょ!?」


「まさか…また入社面接落ちたの?」

「はあ…。うん、まあそんなとこ」


「しっかりしなさいよ、ほんとにもう。ダイヤちゃんのためにも次は受かって来なさいよ」


21年皐月賞も迫った春先のある日のこと。


『納期間に合ってよかったな、道長』

『明日から新しい現場だ。浸ってる暇なんかない』


『相変わらずドライだね。なんでこの仕事続けてるんだ?』

『理由いるか?』


『食うために働くのは人間の宿命ってか?俺はいつでも夢もってたいけどね』

『…夢?』


『生まれ育った故郷に、でっかいランドマーク、建てるんだよ!』


『…ふっ、高所恐怖症のお前には無理だろ』

『いやあ克服してみせるよ。俺の理想の世界を叶えてな』


──道長は1人デザイアドライバーを見つめながらもの想いに耽っていた

デザイアグランプリに彼が参加する前の回想のようである。随分と悲惨なもの想いだ。


『俺の理想の世界を叶えてな』


「…今思いだしても、仕方ねえだろ」


しかしすぐに忘れようとする。というのも今日版どうやら仕事、正確にはクラウンの知り合いに資産家の邸宅の一つを改築する日。

そう、道長は普段トレーナー業と掛け持ちでサトノグループの系列の土建会社で働いているのでこういう仕事もちょくちょく担当しているのだ。


「こんな広大な土地に一軒家ですか?」


「これは別荘の一つに過ぎない。気分転換に全面リフォームしようかと思って」

「教え子であるキタのトレーニング施設も兼ねようと考えている次第だ」

「は、はい、そんな感じで頭が上がらないでふっ!」

(噛んじゃったあ⁉︎)


「浮世トレーナーともキタサンブラックさんとも共通の知人ということで、今回は私サトノクラウンがおすすめさせてもらった次第です」


「…んなっ⁉︎」


しかし、どうやら内容は違ったらしい。

クラウンだけならともかく、道長が常日頃目の敵のようにしているスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズこと浮世英寿とその担当アスリートであるキタサンブラックが来ているのだから。

にしても改築前時点で凄みを感じる英寿の別荘、なかなかに凄いものである。


「さすが、スターオブザスターズ!オブザスターにサトノ家のご令嬢ですね!」


「えっ、あれ…! 浮世英寿じゃねーか?」

「クラウンお嬢の指示を受けてきたらすげえのが来たなぁ…」


そこへ業者仲間も到着、道長の比にならないぐらい驚いていた。まあ当然の反応である。


「これはこれは」


「お前ら、何でここに?」

「今日はクラウンの知り合いの資産家宅の改築って聞いてたんだが…」


「ああ光栄だよ。クラウンづてとはいえお前が俺の家の改築兼キタ用のトレーニング施設建造の依頼を引き受けてくれるなんて」


「はっ…?俺の家…?キタサン用施設…お前?」

「…おいクラウン…」


「对不起(ごめんなさいミッチー)!」

「ちょうどロケ中でな。番組名、なんでしたっけ?」


「『ガツンと一軒家』です」


しかもどうやらキタサン用の新規トレーニング施設も兼ねているようだった。至れり尽せりというやつか。


「テレビになんか出て、チャラチャラしやがって」

「教え子まで引っ張って余裕だな?」


「これが勝者と敗者の差ってことだな。悔しかったら、お前もデザグラで勝って理想の世界、叶えてみろよ」


「もう2度と、お前には…お前にだけは負けない!」


インタビュー後少しの間、道長は英寿と話せる機会を得た。

ただし相変わらずというか、英寿に食ってかかる始末。


「あまり偉そうに言えないし今さらだけれど、2人とも毎度毎度お約束みたいに仲良く喧嘩してるわね」

「あはは、ただ今回はあたしもクラさんも吾妻トレーナーには内緒だったからね…」


「…いやほんとにごめんなさい、ミッチー」

「すいません…」

「そういうことはもっと早くに言え、たく!」


ただ今回はいつも通り+クラウンやキタサンも道長が軽く怒るそもそもの原因を担っているので仲裁する気にはなれず、なんなら謝罪もしながら2人の口論を見守っているのだった


「相変わらず血の気が多いな。赤い服きてるからか?」

「人を闘牛みたいに言うな」


「初めて会った時から感じてたよ。俺になにか特別な恨みでもあるような気迫をな」

「そう言われてみると、確かに…」

「質問なんですけど吾妻トレーナーをそこまで恨みを感じるようなこと、トレーナーさん何かしたんですか?」


「…お前は気にすんな。俺とこいつの問題だ」

「うぬ惚れたスター野郎には一生分からないだろうことだがな!」


「ええ、そんなにですか…」


道長が普段英寿に向ける眼差しにはただ気に入らないだったり超えたい者を見る以外の意図が英寿曰く見え隠れしているらしい。

ただキタサンにはそんなものは当然分からず、質問を返すもはぐらかされてしまうのだった。


「キタ、幻滅したか?」


「してはないですけど、あまり恨みつらみはトレーナーさんに向けられたくないです。事実でも恩人が悪く言われてると、あたしも悲しいですし…」


「…嘘ならどんなに良かったか」

「吾妻トレーナー…」


「ミッチー…」

(いつもより気迫を感じる怒りかた、これは私も知らないただならぬ過去がありそうね…)


ただ、何やら悲しい秘密がそこに秘められているのは間違いなさそうで。


「このメロディは!」

「確かデザイアグランプリ再開、ってことかしら。前から数ヶ月経ってるけど」


しかしそれを許さないのか、デザイアグランプリの再開を告げるスパイダーフォンの着信音が軽く周囲に響き渡る。


「だろうな、お呼び出しだ。というかバッファ。俺の家直すならデザグラ、棄権するか?」

「なんならクラウン共々観戦してても怒らんぜ?」


「あ、誰が?ソッコーで仕事、終わらせてやる!」

「律儀ですね…」

「真面目で義理堅いのよ、彼は」


しかし仕事を放棄してまで参戦する気は吾妻道長という男にはなく。当然タスクをこなしてから参戦するような旨をスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズに高々と告げるのだった。

ちなみにクラウンが惚れた理由の一つだったりするのだが、そんなことは当然今の今に至るまで道長に伝わったことはない。


「キタちゃん、浮世トレーナーの別邸改築は上手くいきそう?」

「上手く行きそうではあるんだけど、案の定吾妻トレーナーが最初カンカンだったよう…申し訳ないことしちゃったや」


「でもなんとかなったんだね」

「うん、一応なんとかなったのかな」

(吾妻トレーナーの過去は気になるけど)

そうして彼女たちもスパイダーフォンでデザイア神殿のモニタールームに移っていく。1人目はキタサンではなくダイヤ。キタサンもいつも通り、というわけではないがトレセンでしているような他愛ない会話を繰り広げるのだった。


「昨日ぶりだねクラちゃん♪」

「ダイヤ、今日は私はいなかったけれど皐月賞に向けたトレーニングは今日のぶんは大丈夫そう?」


「うん。ちょうど一区切りついたタイミングでデザグラ再開のお知らせが来たんだ」

「ただ、着替えは流石に持ってきてなかったからトレーナーさんのをお借りしたの」


「呀、やっぱりね。つまり彼シャツってことかしら♪」

「⁉︎ も、もうクラちゃん!」


どうやら景和とのトレーニングを終えた直後ぐらいにデザグラ再開のお知らせを受け取ったようだ。通りで景和の私服を身につけているわけである。クラウンからすれば微笑ましく写ってしょうがないのだった。


「…皆、普段通りですごいね。僕はまだ慣れないや…。祢音ちゃんが死にそうな目にあったのが前回だし」

「そのせいで変な度胸が日常でついたけど」


「シュヴァルちゃん…」


「…今回は出ないと信じるしかないわね。流石に、毎度毎度初回みたいになるわけじゃないでしょうし…」

「クラさん…だと、いいなぁ」


シュヴァルも到着したようで、しかし前回平の死を目撃したことや彼女のトレーナーである祢音が生死を賭けた事態に直面したのを目撃したのもあってか、今回もデザグラには消極的だった。


(キタちゃんもクラちゃんもシュヴァルさんも皆、やっぱり緊張してる。当然だよね…)


「…トレーナーさんが無事でありますように」

「「「…トレーナーさん(ミッチー)(祢音ちゃん)…」」」


そんな彼女を見てダイヤが始めた細やかな祈り、それを見た3人も自らのトレーナーの未来の安全を祈るのであった。

そう、自らの命と同じ程度には大切である自分たちの運命の相棒の無事と勝利を。


『新たなジャマトが現れました。これより、デザイアグランプリ第3回戦。神経衰弱ゲームを始めます』


そして時を同じくしてツムリのアナウンスがデザグラ神殿各所に伝播され、それはつまりデザイアグランプリ3回戦がスタートすることを意味していたのだった。


「神経衰弱…」

「つまりトランプかな?」


『トランプのアレですよね?』


『まさに。今回のジャマトはトランプジャマトです。カップルや仲睦まじい2人が集まるスポットを襲い、その仲を引き裂いて、自分たちの巣へ持ち去る習性があります』


『ひどい』


「人間臭さのあるジャマトね…毎回習性が変わるのかしら」

「僕、まだ付き合ってなくて良かった…」


『今回はくじ引きでデュオを決めてミッションに挑んでもらいます』


『2人1組のチーム戦てわけか』


「くじ引きだからそこが最大のメリットでデメリットになるのかな」


どうやら今回のミッションはチーム制らしい。

死なば諸共一連托生、とまでは行かないが片方の敗北はもう片方の敗北にもなる。

なら気をつけねばならないことは山ほどありそうだ。


『ジャマトを殲滅させればミッション完了。今回もスコア勝負です。最終的にスコア最下位だったデュオ2名が脱落となります』


「「「ええ⁉︎」」」

「つまり、あたしたちのうち2人も次から観に来れなくなる可能性ありってこと?」


『えっ…?2人同時に…!』


『望むところだ』

(ミッチー…頑張ってね)


キタサンたちもそれに気づいたようで、観客ながら戦々恐々としているのだった。


『では、前回までのスコア成績順にくじ引きをしてもらいます」』

『まずは』


『俺だな…。ナーゴだ』

『英寿様と私がチーム!?』


「トレーナーさんと祢音さんかあ」

「…祢音ちゃんにいかがわしいことしませんように」

「そこは流石に大丈夫じゃないかな…」


一組めは英寿と祢音に。


『では次は』


道長が引く。すると…


『タイクーンか…』

『俺が…君と…?』


「へえ! チームカペラ、ここでも結成ね♪」

「2人で応援しなきゃだね、クラちゃん」

「ええ、まさかこんな偶然があるなんてって気持ちだわ」


2組目は景和と道長に決まった。ダイヤとクラウンも自分たちが現在所属しているチームカペラ再結成だと湧き立つのだった。


『じゃあ…俺が組むのは誰?』

『我々デザイアグランプリの運営側から特別に1名参加します』

『その名も仮面ライダーパンクジャックです』

『おわっ!?びっくりしたー。えっ?いきなりライダー?』

「オレンジのクマさん?」

「カボチャかな?」

「南瓜(ナングァ)bear…って言ったほうがいいのかしら?」

「可愛い…」




そして余った森魚はパンクジャックという謎のプレイヤーを当てがわれていた。外見はオレンジのダパーンといったところか。


『顔出し、声出し、NGのスタッフなので、ご理解ください』


「そういうパターンアリなんだ…』

「でもなんだろう、あたし最近会ったような気がする。いや初めてなんだけど」


「キタサンの身近な誰かが変身してるってことかしら?」

「うーん、そこまでは分かんないけど。でもなんとなく、初対面じゃない気がしたんだ」


「なるほど…気に留めておくわね」


そしてキタサンは初めて会った感じがしないらしい。しかし誰がそうなのかまで思い浮かぶはずもなく。


『ギーツ、ナーゴデュオ。タイクーン、バッファデュオ。メリー、パンクジャックデュオに決定しました。今回はデュオごとに宝箱を1つプレゼントしますので、仲良く使ってください。それではミッションスタート!』


第3ミッションはスタートしたのだった。


『あっ、宝箱。これは…爪?』

『クローバックルだ。ナーゴが使え』


『いいの?』

『そのほうが2人のパワーバランスがとれるからな』

『さすが英寿様。イケメン』


「フォークみたい…でも幸先はよし…!」


英寿と祢音は早速クローレイズバックルをゲットしゲームスタート。


『鉄球?念願の武器だ!』


『えっ…?何?欲しいの?』

『ハロウィンちゃんは、はい、盾でも使いな』


(…なんか、俺に合わねえ!みたいな感じで怒ってそう)


森魚はというとチェーンアレイレイズとシールドのバックルレイズバックルをゲットするも自分が攻めたいのかシールドをパンクジャックに回していた。

これが原因かは分からないが、キタサンから見たパンクジャックは不服そうにしているように見えたのだった。


「やっぱりこの森魚って人、僕、前に何かのニュースで見た気がする…」

「ニュースで、ですか?」


「うん。それもそこまでいいニュースじゃなかったような…」

「シュヴァルちゃんが気になる人、か…クラさん」

「ええ、普段大人しいシュヴァルがそこまで言うなんて気になるわね…というか気になること出まくりよ」


そしてシュヴァルは前回に引き続き、どうしても森魚に既視感があるらしい。しかも悪い意味で。


「でもマジックを多少嗜んでる身から言わせてもらうと、この人、手癖が悪そうな気は前に見た時からしてるのよね」


「なら悪いんだけどクラさんやダイヤちゃんのほうで調べてもらうことできそう? あたしの実家だと難しそうだし」

「呀of course! 今ダイヤがまさに連絡してくれてるわ」


「──はい、はい。…! ありがとうございます!」


「うん、依頼はしておいたからあとは時間が解決してくれるよ。それもそこまで掛からずに」


なのでダイヤ・クラウンらが実家であるサトノグループに捜索届や各種個人情報の調査を依頼しておき、それに頼ることとしたのだった。


「良かったぁ。あっ見てダイヤちゃん、桜井トレーナーがなんか見つけたみたいだよ!」


「ほんとだ、しかもこれは…」


『うわあ!ブーストバックル!ラッキー!』

『お前、いつもそれ手に入れてないか?』


「ほんとにね、ミッチー」


今回も今回とて景和がブーストレイズバックルを開幕早々ゲット、案の定道長に、なんなら今回はクラウンにも不思議がられている。


『ま、使ったことは一度もないんだけどね』

『運がいいのか悪いのか、分かんないやつだな』


「トレーナーさんとブーストは相性いいのかな、今のところは」

「もしくは赤スパみたいに誰かが投入してたり、かな」

「ああなるほど、スパチャシステムや視聴者が存在する可能性…でも私たちが見てるわけだし、なくもない可能性、なのかしらね」


それに繋げて、ここでオーディエンスが存在する可能性をキタサンやクラウンが提示する。そう言われればそうだとなるが意外と気に入らない見方である。


「「「「「変身!」」」」」


直後にそれぞれのライダーは変身しトランプジャマトと交戦

道長/バッファはトランプジャマトを角でかち上げ吹っ飛ばし、息の根を絶やす。

が、クローバーが浮き上がり、トランプジャマトはあっさり立ち上がる


『ALLOW VICTORY』

『ジャジャァ⁉︎ …ジャジャッ!』


景和/タイクーンもアロー直撃でジャマト一体撃破と思いきや、スペードが浮き上がり、つまるところ倒せていない。


『MAGNUM TACTICAL BLAST 』

『ジャジャッ⁉︎』


そんなことで止まらないとばかりに道長/ばはマグナムシューターの必殺技をゼロ距離射程から放つ。


『チョロいな』


(う、撃つんじゃなく殴るんだ…貴方らしいけど。というかそれはフラグよミッチー…)

『ジャジャァ…』

『ん…? 何だと!?』


見事にフラグを建築して回収。やはりジャマトを倒したと思ったら、クローバーが浮き上がり、復活してしまうのだった。


『やあっ!!』

『ZOMBIE VICTORY』


『『ジャジャァ…』』

『何?』

『復活した! なんで⁉︎』


祢音/ナーゴ はアームドクローへ変身しクローで斬り裂く。

英寿/ギーツゾンビフォームもすかさずベルト操作で必殺技を繰り出し、ジャマト撃破。

かと思いきや、やはりハートが浮かび上がり…


「シュヴァルちゃん、ジャマトってこんなにしぶとかったっけ?」

「僕が見てる限りじゃ、そんなことはなかったはずだけど…僕もデザグラ初心者だし分かんない、かな…」


そうなるとジャマトにまあ詳しくないキタサンやシュヴァルも気になってくるわけで。


『ジャジャァ〜〜〜ッ⁉︎』

そうこうしているうちにトランプジャマトは逃げていき姿を見失う。

結果、一時的にお開きとなったのだった。


『…なるほど。どうやらこのゲームにはある秘密があるようだ』

『化かされたままでは終わらないさ』


「…トランプ、神経衰弱…」

(…呀、なんとなく分かったかもだわ)


「でもその前にミッチーに会ってこようっと」


英寿やクラウンは今回のミッションやジャマトが持つ仕掛けに気づいたらしく意味深に納得する。

ちなみにどのペアも0ポイント、つまりまるで得点を稼げていない。ここから巻き返していくしかない。


『どうなってるんだ?…ああくそっ!…外の空気でも吸ってくるか』


道長もまた今回のミッションについて頭を悩ませるも、慣れないことを試しにやったぐらいですぐ解が導き出されるわけでもなく。

気晴らしにサロンから出て行くことを選択したのだった。


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