邂逅Ⅰ→Ⅲ 運命の日(Chapter2)
名無しの気ぶり🦊
「「「「…」」」」
((((気まずい…すっごく気まずい…))))
「…なんか食べよっかな」
「…私もお願い、キタちゃん」
「あっごめんねダイヤちゃん!」
そしてモニタールームに案内されたはいいものの生き死にが絡むレースとあっては安易に話題に出すのも難しく、四者共にだんまりを決め込んでいた。
(…勝ち抜けるのはただ1人、生き死にが絡むなら余計に他の誰かに負けても負けないでも言えない)
(あたしたちのレースが甘いってわけじゃないけど、すごく厳しい世界なんだな…)
「…皆、今回のことどう思ってる?」
「開幕前っていうのは分かってるけどさ」
「…いろいろありすぎてどうと言えるほど、まだ飲み込みきれてないっていうのが正しいのかしらね」
「…僕としては祢音ちゃんに負けてほしくはないけど、でもきっとここに挑む人も皆命懸けなんだろうし、なら、誰も負けてほしくはない…かな」
「始まったらきっと、誰も彼もが私たちのレースみたいに最後に立ってるわけじゃない。なら、やっぱり…まだまだ飲み込めてないけどトレーナーさんの無事、これだけは信じたいよ。キタちゃん」
「皆…考えることは一緒なんだね」
「ええ」
「うん…」
「私たちは見届けることしかできないから」
「なら…うん、見届けよう、応援しよう。あたしたちのトレーナーさんを」
「「「うん(ええ)!」」」
しかし彼女たちは元々仲良しであり、ならばこういう雰囲気にはそこまで耐性がなかったのか、はたまた考えていたことが似通っていたのかすぐに会話を再開できたのだった。
「…始まったわね」
『それではデザイアグランプリを開催します。運命の第一回戦、最初のミッションは宝探しゲーム』
『ジャマトに奪われた宝箱を取りかえして、アイテムをゲットしてください』
そして始まった第一回戦。目まぐるしくという表現が的確かは分からないが、早いテンポで進んでいくのだった。
『ねえ、ねえ、ねえ、協力してやらない?』
『誰が…!?』
「は? 祢音ちゃんに…なんてことを!」
「シュヴァル落ち着いて!」
祢音は墨田奏斗という青年に協力を依頼するもあえなく邪険に扱われ、それを見たシュヴァルはもう反射的に憤慨。
『ふっ!!』
『ジャジャッ⁉︎』
『ウォーターか…試してみるか』
『変身』
『SET』
『ARMED WATER』
『READY FIGHT』
「うわぁ…!」
(あれが…トレーナーさんが変身する仮面ライダー、ギーツ…こういう時なのに、その立ち居振る舞い含めてすっごくカッコいいって思えちゃう…トレーナーさんって生まれついてのスターなんだなって)
「…頑張ってください、トレーナーさん!」
有り合わせのレイズバックルを使い窮地をこともなげに脱する英寿にキタサンは非常時ながら目を奪われる。流石のスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズと言うべきか
『あの、ありがとうございま…あれ…?確か…!?
『君か!』
((この人は…))
「確かサトノ系列の会社で働かれてる…」
「平考人さん…」
『俺は…まあ、世界が平和になればいいな、って』
『世界中の人が幸せなら、俺も幸せなんで』
『立派な願いだな…。でも、私も負けるわけにはいかない…』
『実は息子が治らない病で苦しんでいてね…。これに参加すれば、息子が健康になってる世界に変えられるんじゃないかって…』
「ご家族が病気に…」
「譲れない願いを抱いているのは、どちらも同じ…なんだね」
かつて景和が就活生時代に景和を担当した面接官である平考人と再開、それを見たダイヤとクラウンは彼が実家の経歴の会社で働いていたことを思いだしなんとも言えない気持ちになったりした。身内同士の諍いみたいな形になっているとも言えるからだろうか。
『えっ…?何、祢音ちゃん、猫?』
「猫…ねこっ! うん、祢音ちゃんをよく表してる」
『狸?』
『えっ…?俺、狸?』
「た、たぬき…ふふっ、でもトレーナーさんらしいですっ♪」
景和はタヌキ、祢音は猫を模したライダーになったことに彼ららしさを感じる。愛嬌が高そうなのは間違いなさそうである
『トビオズグオエインビカカル!』
「新手の言語!エネミーっぽいけど気になるわね…」
クラウンとしてはジャマト語が気になってしまうようだった。マルチリンガルな彼女らしい反応であるというべきなのやもしれない。
『ARMED HUNMER』
『頼りにするよ。メリーおじさん』
『ARMED WATER
『任せといて。子猫ちゃん』
「なんだろう、この人どこかで見たような…」
森魚に怪しい既視感を感じるシュヴァル。現実で彼と知り合いなはずはないのだがである。
『ジャジャアッ!!』
『こんな…所で…脱落…する…わけには…』
『うわぁァッ⁉︎』
『ああ…!平さん!』
「「「「あっ…」」」」
『ここまでのようだ…。苦しんでいる息子を残して逝くなんて…愚かな父親だな…』
『戦うしか…なかったんですか…!?』
『息子を…救いたいんだ!』
『MISSION FAILED』
「「「「⁉︎」」」」
「そんな…ふぐェぅっ⁉︎」
「うっ…! おええええッ!!」
「ッ、これが、死…!」
「ンんぐゥっ⁉︎ ぇハアッはあっ…! ミッチーは、こんな経験を…何度も…」
──そして、ついに発生してしまったプレイヤーの死。しかもよりにもよって平だった。いい人間から消えていく。
何より、戦闘による死なんて未体験で当たり前の現象だったものだから、吐き気だって催したし、シュヴァルに至っては吐瀉物をぶちまけてしまう始末。キタサンやダイヤ、クラウンも耐えこそしたが、喉からまろび出る寸前だった。
…いろいろと、インパクトがありすぎたのだった。
『戦わなきゃ世界を変えられない…。だとしたら、戦う意外に選択肢はないだろう?』
『君は…何のために戦ってるんですか?』
『恵まれない世界中の子供のために。子供は未来の宝だろ?』
『君も世界平和を願ってるんですか?』
『さあな、いずれにせよ──世界を変えたければ、戦うしかない!』
(…強い、なぁ…トレーナーさん。でも…)
(あたしも、逃げちゃダメだ!)
「スゥー…トレーナーさん、わっしょーーーーーい!!」
「⁉︎ 元気だね、キタさん…ぅえっ」
そうして落ち込む彼らをというわけではないが英寿は景和を言葉巧みに励ますのだった。触発されキタサンも奮い立つ。今さら落ち込んでいても話にはならないとばかりに
その間も英寿はギーツアームドウォーターへ変身し、相変わらず水鉄砲を打撃武器として使う
おまけに川の水を吸い上げ、強烈な放水攻撃を放つ。地形を活かすことで本来なら低い出力を大幅に強化して扱ってみせる。戦闘巧者のそれだった。
『そいつを貸せ!』
『えっ…?』
『子どもの未来のためだ!』
『……ああ!』
「…浮世トレーナーってこんな夢掲げてたかしら…?」
『SET』
『DUAL ON』
『BOOST ARMED WATER』
そして、ブーストレイズバックルという一回のミッションにつき一度きり使用可能なレイズバックルを景和から手に入れ、吹き荒れる水の戦士ことギーツブーストアームドウォーターに変身する
「さあ──ここからがハイライトだ!」
「来たッ、トレーナーさんのハイライト!」
『REVOLVE ON』
反転して姿を変え、その姿は上下真逆に。
必殺技を出しますよという意思表示だろうか。
『盛大に打ち上げだ!』
『BOOST TIME』
『BOOST WATER GRAND VICTORY』
『──────ゼァッ!!』
『ジャジャァッッッ⁉︎⁉︎⁉︎』
「これで、平さんの無念が少しでも晴れてくれてたらいいな…」
続けてバックル操作により水を即座に巻き上げブーストライカーに吸水、前方に展開したマフラーから放水、その水の勢いとブーストパンチャーからの噴射を合わせた脅威的な威力のライダーパンチがジャマトを穿つ。
そこに立っていたのはただのスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズただ1人である。
キタサンもその姿に安堵し、同時に平の魂が安らかなることを祈ったのだった。
『へぇ~、ブーストバックルってすげえ…』
『狙い通り、化かされてくれてサンキュー!』
『…ん?化かされたって…?』
『お涙ちょうだいの話をすれば、ブーストバックルをよこしてくれると思ってたよ。トレセンにいる頃から思ってたけどお前、お人好しそうだったから』
「…は、はあっ⁉︎」
「うぷっ …まあ、予想通りではあるわね、あの状況だからしのごの言うより打破を選んだ、のかしらね。素人だからまるで分からないけれど…」
『じゃあ、恵まれない子供達にって話は?』
『狐は人を騙す動物だって、昔から相場が決まってんだろ?』
(なんか…嘘、ついてない?)
『えっ、嘘ってこと…?ちょ、俺のブーストバックル、返してよ!』
『うわやめ!…ってああ、行っちまった…』
『え⁉︎ どういうこと?』
『アイツを使えるのは一つのミッションにつき1度きりだからな』
ただ、どうも英寿に子供のためという理由はなく、あくまでブーストレイズバックルを融通してもらうための方便だったようである。
キタサンにはどうにもわざと強がっているだけに映ったのだが。
『皆様お疲れ様でした、次のミッションは数時間後に開催です』
そして時を同じくして第一ミッションの閉幕が告げられる。
「…一旦終わりみたいだね」
「いろいろと…未体験なことが多かったわ。何より私は…今まで凄くミッチーに守ってもらえてたんだなって」
「…負けたら、死ぬ…ッ! 祢音ちゃん…うぅ…」
「…あたしも、トレーナーさんの勇姿を見たからなんとか耐えられたけど、あれが無ければ危なかったな…」
「とりあえず休もう」
「ぅェっ!…ちょっと次のミッション写すまで風に当たってくるわ。さっきの衝撃がいまだに響いてる…」
「私が付き添うよクラちゃん」
プレイヤーもそうだが、見ていただけのキタサンたちも精神的に疲弊していた。
いろいろとキツい初体験が待ち構えていたからかもしれない。
