邂逅

邂逅


「ギャギャギャッ!」

一級呪霊とされる呪霊は腕をばたつかせた後に、胸から腹にかけてまで観音開きの扉のように開いて見せた。その中に人間がいることに全員が気付いたと同時に、低い棒読みの声が場違いに響く。


「た…たすけてー……捕まってしまったー……」


「……はっ?……」


沈黙が森を包み、脹相は羞恥心から死にたくなった。五条悟から「面白い呪霊を放つから、その中からなんと故人の脹相くん!!ってやりたいんだよね。囚われのヒロイン要素もつけてさ、バカウケ間違いなし!!」と言われてやった事だったが、大滑りである。何なら弟からの「は?」が一番堪えていた。誰の顔も見ることが出来ない。目の前に五条悟がいたらまだアイツのせいだと言えたのに、それすら出来ないのが苦痛でしかなかった。


「……え、……っと……」

「……。」

「…………。」


「…………」

(五条悟……殺そう……あいつを殺そう……。)


脹相は気を取り直し──実際には全く取り直せていないが自前の精神力で何とか平静を保って──呪霊の中から飛び出した。地に足が着くと同時に手を合わせ圧縮した血を呪霊へと放ち、その勢いで飛んだ札を手に取り畳んでから懐へとしまう。


「……というわけで、今回の討伐対象は俺だ。俺からこの札を奪った者を討伐者とする。ちなみにこれは訓練という判断で、俺からも攻撃をさせてもらうので気を抜かないように……」


「いやいやいや!?」

「無理無理無理!!なかったことには出来ないわよ!?」

「え!?っていうか、死んだんじゃなかったのか!?」


(脹相……完全にミスター五条の玩具にされたな…。)


「脹相くんが生きてるだけでびっくりなのにこっちの感情めちゃくちゃだよ!」

「っていうか、助けてー捕まってしまったーってなに?!」


「ぐぅっ……、……!」


四方八方から向かう言葉の刃が深く刺さるのを感じ、羞恥心を薙ぎ払うように手をパンッと合わせた。全員に緊張感がぴりりと走ったのを確認してから、脹相は血を圧縮した。


「血液の毒性に触れたら五条悟から貰っているバッグの中の血清を使え。……行くぞ!」


「だっ、ちょ、待っ……うぉあ!」


穿血を放ち横切らせた。全員が避けられる速度でやることは忘れない。空気をとにかく変えたかった。


「……好きなようにかかってこい。」

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