運動会〜父兄の部クラス対抗騎馬戦〜

運動会〜父兄の部クラス対抗騎馬戦〜



負けられない。負けてたまるか。

「パ…お兄ちゃーん!がんばれー!!」

僕の後ろには可愛い娘と、

「ヒカルーー!!行けー!」

息子が応援しているのだから!! 

『それでは保護者参加プログラム、父兄の部 クラス別チーム対抗騎馬戦始まります!』

この、騎馬戦のために僕も鍛えて来たのだから!

「みなさん、力を貸してください。む…弟と妹達に今日運動会に来れなかった彼女達の母親に良いところを見せたいので!」

「任せなさい!」「優しいお兄ちゃんのお願いだ、おじさん達も力を貸すさ!」「君が1番背もあるし大戦力だ。頼むよ!」

「妻と子どもに良いところ見せたいし、目的は同じだ。頑張ろう!!」

皆さん優しい…体裁は兄として運動会を見に来ている、という扱いなのもあるだろうけど。

「ありがとうございます!では、出陣です!!」

「「「「応!!!!」」」」

低学年の部 紫組 第一陣 出撃!!

『こちら本部です。いやー父兄の皆様、奮ってのご参加ありがとうございます!皆さんの頑張りは無事お子さん達のチームの得点になります!!頑張って、パパ!ありがとう!!の賛辞を受け取りましょう!』

「「「「「「オオーーー!!!!」」」」」

『熱気が凄い!皆さんガチですね!!それでは低学年の部、第一陣の皆様。レディィィ…ゴォォォ!!』

今父兄のプライドが賭けられた戦いが始まった。

「わー…みんな凄いね。赤組は緑組と文字通り団子状態で取り合いだし…アクア、青組の騎手は阿部くんのお父さんだよ。長身で引き締まったボディーから鋭いチョップが黄組の牟呂さんパパの頭を狙ってるよ」

「ルビー。アレはチョップじゃなくて貫手というんだ。頭叩くんじゃなくて突き刺しに行ってるからな…うわ、首の動きで避けた」

「へー…私達のパ…お兄ちゃんは…何か白組と睨み合ったまま動いてないよ?」

「というかカバディしてないか?ジリジリ互いに様子伺いながら動いてるあの独特な動きは」

我らが父親は器用に騎馬戦で相手とカバディしていた。

競技変わってないか?

「何で?」

「さあ?ヒカルだし、意図して持ち込んだのかもな」

とりあえずお茶を飲みながら兄妹仲良く観戦する。

我が父親は役者していたから体力あるだろうし、長身だから無双するだろう。正直あまり心配していない。

「むー…動きが無いからつまらない…お兄ちゃーん!!頑張れー!」

「あ、ヒカル動いた」

ルビーの言葉を受けたからか、膠着状態が崩れ一気に加速して肉薄する紫組。急に動いたため、白組は動揺隠せない。そしてその動揺が運命の分かれ目だった。

「な…!クロスチョップ⁈レギュレーション違反だろ⁉︎」

ヒカルはまさかのクロスチョップを決めて白組の鉢巻を奪い取っていた。

「いや、お兄ちゃん。アレは素早く手を交差させて相手の目を惑わし、一瞬の内に奪い取っただけだよ。傍目からは頭部を攻撃したように見えるけど、私じゃなきゃ勘違いしていたね」

ふむふむとキメ顔で何か言っている妹。動体視力良かったっけ?あと微妙に何処かで聞いたセリフだな?

「…まあ先生達が止めに入らないし、父兄同士揉めなかったら良いか」

…この騎馬戦撮影してアイや社長達に見せてやりたい。

✴︎

僕達の前に立ち塞がるは白組。騎馬を務める本田さん曰く、相手の騎手は警察官をされている方らしい。実際ガタイが良い。

「ヒカルくん、どう動く?いくら長身の君でもパワーが足りないぞ!」

「ウチの大将なら何とかできるって!まだ20代だし!!」「20代良いなぁ…」「ヒカルくん不摂生したりしないようにな?した例が俺らだから」

「「「一緒にするな」」」」

騎馬の方々から判断?を求められる。仕方ないここは…

「仕方ない…ここは」

「「「「おお⁉︎」」」」

「カバディ、で行きますか」

「「「「なんで?」」」」

疑問に思うかもしれないが、カバディとは相手の隙を付くスポーツ。膠着状態を打破するには打ってつけだ。

今騎馬戦している?関係無い。カバディだ。

「白組の方!こうなったらカバディで勝負で決めましょう!!」

「「「「なんで⁈」」」」

「面白い、乗った!!」

「「「「「「「何で⁈」」」」」」」

「ありがとうございます!!」

そして今、膠着状態。

「「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ」」

ジリジリと互いの隙を伺っているのだ。

「お兄ちゃんがんばれー!」

ルビーの声!

ルビーの声に釣られてこちらを見ていない。今だ!!

「紫組進軍!敵は気を逸らしました。今です!本田さん、冠城さん。GO!!」

「「お、応!!」」

「しまった!迎撃!!」

ーーーアイと2人で鍛えた技を見せる時。

「勝負あり、と言ったところです。」

「何…?ハッ⁈」

「敵将、討ち取ったり!!」

僕の手には白組の鉢巻が握られていた。

神木家奥義 サンダースプリットナントカ。

要は素早いクロスチョップ的な何かである。

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