進路相談 part1
ヤコウ「そういえば五月雨ちゃんは、どうしてそんな若い内に探偵を目指そうと?」
五月雨「…やっぱりそれ気になりますか?」
ヤコウ「まあ…うん。オレは、丁度今のキミくらいの年齢の頃に探偵に憧れて、探偵を目指す決意を決めたから人のことは言えないんだけど、キミくらいの年頃の子ってまだ友達と遊んだりとか、部活動に打ち込んだりとかするのが大多数だろ?なのに探偵業をやってる五月雨ちゃんには『探偵を目指すきっかけ』でもあるのかと思ってさ?」
五月雨「…確かに同年代の人たちは、そうやって青春を謳歌する年頃かもしれません…。
でも…私はいいんです。探偵になって、やらなくちゃいけないことがあるから。」
ヤコウ「やらなくちゃいけないこと?」
五月雨「…繭を…妹を殺した犯人を見つけないといけないんです。」
ヤコウ「え…?」
五月雨「実は私、繭っていう名前の妹がいたんです。でも幼い頃、誘拐されて…そして…。
…私がもっとしっかりしてれば助けられたかもしれないんです。だって私が犯人に襲われて気を失った直後、妹の悲鳴が聞こえてきたから…。私がちゃんと犯人の顔の特徴だとかをちゃんと見ていれば、気を失わないで直ぐに警察に通報していれば、妹を助けられたかもしれない…。
その犯人、まだ捕まってないんです。当然ですよね…唯一事件の目撃者だった私が犯人に襲われて気を失ってたせいで、具体的な証言を何も言えなかったから…。」
ヤコウ「……。」
五月雨「そんな私にとって唯一の救いが事件を調査してくれた探偵たちだったんです。警察が捜査の規模を縮小させていくなか、彼らは根気強く事件を捜査してくれたから。結局犯人の特定までは至らなかったけど、それでも『正義の味方は居るんだな』って私に気づかせてくれたんです。
それで…探偵に憧れたんです。探偵になって、私のように悲しみの淵にいる人の支えになりたい、正義の味方でありたい、そして…妹を殺した犯人を、私の手で見つけ出したいって。」
ヤコウ「……そう…だったのか…。キミはそんな重い事情を抱えて探偵になる決意をしたんだな…。
なのにオレは…無神経に事情を聞いてしまって…すまなかったな…。」
五月雨「いえ、いいんです。私から話したし…。
それに私はこのことを話した上で、ヤコウさんに相談を聞いて貰いたいなって思ってたから、どう切り出そうかとずっと悩んでいたんです。むしろヤコウさんからその話題を振ってもらえて良かったっていうか…。
その…ズルい方法をとったせいで、責任を感じさせてしまって、こちらこそすみません…。」