逆行/光
一生開眼しないだろう。
誰もが、そう言っていた。誰もが、そう思っていた。立香自身も、そう信じていた。
現代日本において、その眼が開かれる理由はない。よほどのことが、ない限り。そして、そのよほどのことは、立香の周辺では起きそうになかった。
これからも、そうであるように、誰もが望んだ。
その眼が閉じられているのは、平穏の証明であったから。
だが────
立香は鏡に写る自身の顔を見た。
赤い両目。その中の万華鏡。
ため息をついて、立香は赤色を仕舞った。まぶたを上げると、いつもの青い目が、立香を見返す。
あと何回、失えばいいんだろう。
あと何回、戦って、奪って、壊せばいいんだろう。
あと────
立香は思考を遮断した。
進むには、それらは邪魔になる。
シンプルに。クリアに。
もう、前にしか道はないのだから。
後ろにあるのは、帰り道じゃない。
血で、赤く染まった道があるだけだ。この目と同じように。
進み続けよう。これはきっと、そのための力だ。いつか光をなくしても、それでも立香は進むだろう。
彼はもう、目指すべき星(ゲームセット)を見つけている。