逆行フレイ
すごいうろ覚えのまま書いたけど許してキラ、泣かないで。
あなたはもう泣かないで。
守るから…本当の私の思いが、あなたを守るから。
………
「フレイ!?大丈夫!?」
「具合悪いの?どこか休めるところに…」
フレイは激しい頭痛と息苦しさでしゃがみ込んでいた。
どうして頭が痛いのだろう。息が苦しいのだろう。
痛みも苦しみも感じる筈がない。だってフレイにはもう体がないのだから。
「なんで…」
フレイは死んだはずだった。
だけど頭が脈打つようなズキズキした痛みは感じるし、心臓はうるさいほどに鳴っているし、肺は酸素を取り込んで吐き出している。
それは人が生きているという証だった。
「ジェシカ、ミーシャ…あなたたちなの?」
フレイを心配する女の子たちの声が聞こえる。
聞き覚えのある懐かしい声だ。
見上げればジェシカとミーシャがフレイの顔を心配そうに覗き込んでいる。
はぐれたきりだった友達と平和なヘリオポリスがフレイの目の前にある。
一年も経っていないはずなのに随分と昔に別れたように感じて、フレイの目にじわりと涙が浮かんできた。
そうだ。ここはフローレンスのお店で、私は今友達と服を見ていて……それで、このあとは。
「ジェシカ、ミーシャ。来て!」
「えっ?ちょっとフレイ!具合は!?」
「突然どうしちゃったの!?」
「いいから走るのよ!」
フレイは頭痛をこらえて立ち上がった。
今のヘリオポリスは危険だ。
中立のヘリオポリスが外で起きていた戦争に巻き込まれるなんて説明している暇はないし、説明してもきっと信じてもらえないだろう。
今は全力で避難シェルターまで逃げないといけない。
そう思ったフレイは戸惑う二人の手を無理矢理引いて走り出した。
『ヘリオポリス全土にレベル8の避難命令が発令されました。住民は速やかに最寄りの退避シェルターに避難してください』
アナウンスの声が流れる頃にはどうにかジェシカとミーシャを連れて避難シェルターに逃げ込むことができ、フレイは気が抜けてへたり込んだ。
ジェシカとミーシャの二人もフレイと同じように息も絶え絶えといった様子で膝をついた。
よかった。今度はちゃんと二人と逃げることができた。
ジェシカとミーシャはまだ何が起きているのか分からないという顔をしている。
無理もないことだ。中立のはずのヘリオポリスがこうなるなんて誰も思わない。
フレイだってキラに助けてもらうまで何が起きているか分からなかった。
「何が、起きて…るの…?」
「わ、分からないけど…安全?ここはっ…シェルターだし…」
ここは前の人生でフレイが逃げ込んだシェルターだ。
もしかすると前の世界ではフレイとはぐれた二人は別のシェルターに逃げ込んで無事に生き延びることができたのかもしれない。
だけど確証がない以上は、このシェルターの救命ポッドに乗れば少なくともヘリオポリスからは生きて出られると知っていたフレイは、二人を連れて前と同じシェルターに逃げるしかないと判断した。
それにここのポッドに乗らなくては会えない人がいる。
どうしても会いたかった人。
ひとりぼっちで、戦って、守れなくて、いつも傷ついて、すぐ泣いた人。
「ねえ、フレイ…?」
「私たちどうなっちゃうのかな…」
「大丈夫よ。きっと…私もみんなで無事に生き残れるように考えるから」
不安そうなジェシカとミーシャの手を握った。
私は心に決めた。
ううん、戻ったと理解した瞬間にもう決めていた。
もう一度、この手にチャンスが与えられたのならもう間違えない。
キラ。
守るから…今度こそ、本当の私の思いであなたを守るから。