逃亡②
鳥飼天竜人今日は水とくすねてきた食べ残しで空腹を凌ぐ。まるで奴隷だ。
こんなものをD.Dに食べさせるなんて、と思うが、飢えて死ぬよりは遥かにマシだ。
D.Dは痛みに顔を歪めながらそれらを咀嚼する。
私とD.Dの顔写真はとっくに出回っている事だろう。店で買い物などできるはずもない。
D.Dの容体は悪化している。
傷口から感染症に罹ってしまったのか、高い熱に苦しんでいる。
せめて海楼石さえ無ければと思うが、非常に頑丈で壊す事も出来ない。
D.Dの足先を切断する未来が頭をよぎり、思わず手先が震えた。
熱に浮かされながら苦しげに弟の名を呼ぶ様子を目の当たりにして、私は置き去りにしてしまったMC01746の事を後悔した。
MC01746はどうなるのだろう。
父上の元へと返されるのだろうか。
それとも、廃棄処分されてしまうのだろうか。
夜、異常行動が見られた。
D.Dは吐いてしまった残飯を必死の形相でかき集め、それを口にしようとする。
私が思わず止めると、見た事の無いような顔で此方を見つめる。まるで怯えた子供のようだった。
吐瀉物で汚れた手を綺麗にし、強制的に寝かせる。
私は一体何をしているのだろう。