迷い道
モテパニ作者ゆい「デリシャスマイル〜」
その日ゆいはいつものように拓海と過ごしていた。
そんな途中拓海が…
拓海「ゆい、少しいいか?」
ゆい「うん、なに?」
やけに真剣な表情で話しかけてくる。
拓海「じつはゆいに紹介したい相手がいるんだ」
ゆい「紹介したい相手?どんな人?」
拓海「俺の恋人だ」
ゆい「……………え!?」
突然のカミングアウトに驚きを隠せないゆい。
ゆい「え?え?い、いつから…?」
拓海「昨日からだ。とりあえず今日は確認取りたいだけだったから都合が合えば明日にも紹介するよ」
ゆい「そ、そうなんだ…(紹介したいって事はあたしの知らない子?ううん、付き合う事になったから改めての可能性も…)」
拓海「それからさ、俺たちがこうやって時間取るのもこれからやめとこうぜ」
ゆい「え……なんで…?」
拓海「今までならともかくこれからも定期的に二人になるのは恋人に悪いしさ。付き合ったばかりだしそろそろ帰るよ」
そう言って拓海は立ち上がる。
今までよりずっと早く。
ゆい「待って拓海!拓海ー!」
〜〜〜
ゆい「たくっ…!」
気がつくとゆいはベッドの上だった。
そう、さっきのは夢だ。
ゆい「なんであんな夢…」
すでに日付は過ぎておりふと今日の予定をおもいだしてみる。
今日は拓海と過ごす約束をしていた。
〜〜〜
拓海「今日はゼリーを作ってみたぞ」
ゆい「ありがとう拓海」
二人で過ごす時拓海はなにか食べるものを作ってくれる。
大抵はおむすびだが、今日は海を思わせるような青いゼリーだった。
そしてそれを二人で食べて行く。
今朝の夢で少し嫌な予感がしたが、拓海はいつも通りなのでただの杞憂だったのだろう。
すると拓海は…
拓海「あ、そうだ。ゆいちょっといいか?」
ゆい「!?」
と、夢を思い出すような事を言った。
ゆい「な、なにかな?」
拓海「紹介したい子がいるんだ」
しかも内容まで同じ。
これは…
ゆい「…いや」
拓海「ゆい?」
ゆい「やだーーー!!!」
拓海「ゆい!?」
ゆいは叫んで部屋の奥へ駆けていってしまった。
残された拓海は何が何だかわからず途方に暮れるのだった…
〜〜〜
拓海「…」ズーン
その後、拓海は自分の部屋で沈んでいた。
みなみ「あの、兄さんになにが?」
ダークドリーム「好きな子に避けられたみたい」
そんな拓海の様子をダークドリームとみなみに見られていた。
みなみ「へえ、兄さんには好きな相手が」
ダークドリーム「みなみはまだ会ってなかったわね。今度紹介するわ」
みなみ「それにしても兄さんこんなことになるのね…まだ会って数日だけど少し意外」
ダークドリーム「拓海はわりとこんなもんよ。へこみやすいっていうか、いろいろ気にする性質なのよ。まあ周りにはあんまりそういうとこ見せないみたいだけど」
拓海「なんでなんだぁ…ゆい…」
みなみ「ゆい?」
ダークドリーム「どうかした?」
みなみ「あ、いえ。友人と同じ名前だったので」
ダークドリーム「そう、そんな偶然もあるんだ」
みなみ「まあ、珍しい名前でもありませんから」
これは本当にただそれだけのこと。
しかしそれがまさかあんなことに繋がるとは…
それからしばらく拓海が落ち込んでいる姿を眺めていた二人。
それだけで拓海が立ち直るわけもなくダークドリームが動く。
ダークドリーム「仕方ないわね」
みなみ「ダークドリームさん?」
ダークドリーム「んん"っ、あーあー」
ダークドリームはなにやら喉の調子を整えていた。
はたしてなにをしようとしているのか。
ダークドリーム「拓海ー!元気ないよ?ほら笑顔笑顔」
みなみ「!?」
普段のダークドリームとは違う、おそらく誰かの真似であろう言動を放った。
その真似はその誰かを知らないみなみでさえ似ているのだろうと思わせる雰囲気があった。
しかし…
拓海「…違う」
ダークドリーム「はー?」
他の者ならともかく真似されているゆいの事も真似してるダークドリームの事もよく知る拓海から見れば小さな違いが明確な違和感になっていた。
ダークドリーム「だめだこりゃ、しばらくそっとしておきましょ」
みなみ「え、ええ…」
そうして二人は拓海の部屋を去るのだった。
〜〜〜
ゆい「____そんなことがあって、あたしどうすればいいのかな…?」
そして落ち込んでいるのは拓海だけではない。
拓海を避けたゆいもまた思い悩んでいた。
自分だけでは解決しないと頼れる相手に相談する。
れいか「あの…なぜその相談を私に…?」
そしてその相談相手はれいかであった。
ゆい「だってれいかちゃん生徒会長だから相談には慣れてるかなーって」
れいか「…あまねさんも元ですが生徒会長でしょう?」
ゆい「あまねちゃんには…その…」
れいかも自分で言っておいてなんだが気持ちはわかる。
あまねは確かに行動力があってコミュ力も高い頼れる人物だが、拓海の女性関係には関わらせたくなかった。
特にゆいが関わっているならなおさらだ。
ゆい「マナちゃんやいつきちゃんはあんまり話したことないし…なによりれいかちゃんはすぐ来てくれるし」
れいか「まあ…不思議図書館を使えば…」
あまねを除外すればゆいの生徒会長の知り合いは三人。
その中で一番親しく都合がつきやすいのが誰かと言われたられいかが選ばれるのは必然であった。
れいか「それでゆいさんの悩みは拓海さんに拒絶、とまではいかなくとも距離を置かれてしまうという不安でしたか」
ゆい「うん…夢だし気にし過ぎって言われるかもしれないけど、タイミングが合い過ぎて不安で仕方ないの。あたしこのままじゃ怖くて拓海と話せないよ…」
どうせ夢の話、そう切って捨てるには自分たちは超常を経験し過ぎている。
れいか「ゆいさん、人生とは道のようなものです。しかしそれは現代の舗装されたものではなく己で踏み固めねばならない時や、行き先が暗闇に隠れた先が見えない時もあります。ゆいさんは今拓海さんと歩む道を見失いかけているようですが、思い出してみてください。今まで辿ってきた道を」
ゆい「今まで辿ってきた道…?」
れいか「ええ、あなた方が歩んできた道はけっして脆いものではないはずです。道の先を恐れるのは恥ずかしい事ではありませんが、それでも先へ進みたい時歩んできた軌跡はあなたを裏切りません。拓海さんと歩んできた道は確かなもののはずです」
ゆい「!」
拓海とゆいの二人の絆が確かなものであるのは間違いない。
ならばれいかがするのは背中を押すだけでいい。
ゆい「ありがとうれいかちゃん!あたし拓海と話してみるよ!」
れいかの言葉で前を向くゆい。
さっそくゆいは拓海の元へと向かった。
れいか「…これでいいのです。これで…」
ゆいと拓海の仲は盤石であるはず。
だから少し揺れた程度ではどうにもならないはずだ。
例え相談を受けた立場ならば掻き回す事ができたとしてもしないことが正解だ。
れいかは例え一瞬でもそんな事を思いついてしまった己を恥じるのだった。
〜〜〜
それから少し時間が経ち、みなみは自室に戻り拓海はまだ落ち込んでいた。
そんな時拓海のデリシャストーンが光る。
これは通信の合図。
拓海「ッ!もしもし!?」
ダークドリーム「うわ、びっくりした」
このタイミングで通信はゆいに間違いないと大声で応答する拓海。
そのいきなりの大声に部屋にいたダークドリームは驚いてしまった。
ゆい『拓海…今いい?』
拓海「あ、ああ!もちろん!」
ゆい『よかった。じゃあさっきのことで話したいからまたうちに来て…』
拓海「あ、ああ!」
それでゆいからの通信は切れてしまうが、とにかく話す機会はできた。
ダークドリーム「なんとかなりそう?」
拓海「ああ、なんとかな」
ダークドリーム「よかったじゃない。あ、お菓子食べる?」
拓海「………頂いとく」
拓海はダークドリームからの祝い代わりの食べかけのお菓子を一口もらうのだった。
〜〜〜
再びゆいの家の軒下へとやってきた拓海。
拓海「ごめん!」
その邂逅一番に拓海は謝罪した。
ゆい「なんで拓海が謝るの…?」
拓海「…ゆいがわけもなくあんな避け方するとは思えない。だったら俺がなにかしちまったんじゃないか?理由もわからず謝るのはいいかげんかもしれないけど謝っておきたいんだ」
ゆい「ううん、拓海は悪くないよ。あたしが勝手に避けちゃっただけだよ…だからあたしが悪いの…」
拓海「なにかあったのか…?」
ゆい「うん…じつは…」
ゆいは今朝の夢も含めて全て話した。
拓海「……そーいう事だったのか」
ゆい「うん…ごめんね」
拓海「いや、別に…(他に彼女作る気があるって思われてるかもしれないのはちょっとショックだけど)」
事情を知った拓海は気を持ち直し、ゆいを撫でた。
拓海「仮に、ほんと仮にだぞ!他に彼女ができたとしてもゆいのことを避けたりなんてしないよ」
ゆい「………うん!なんでだろ、拓海がそんなことしないってわかってるはずだったのに」
拓海「悪夢で不安になっちまったなら仕方ねえって」
ゆい「ありがと拓海。…そういえば拓海が紹介したい子って誰だったの?」
拓海「ああ、それは…」
〜〜〜
みなみ「初めまして、海道みなみです」
ゆい「は、初めまして!和実ゆいです!」
あの後改めてみなみを紹介するために拓海はみなみを呼び出した。
拓海「この子は少し前からうちのゲストハウスに住んでるんだけど、まだゆいと同い年ってことでうちでも面倒見てるんだ。いちおうゆいにも紹介しとこうと思ってな」
ゆい「え!?この人あたしと同い年なの!?」
みなみ「ふふっ、最近なんだかよく勘違いされます」
みなみが制服を着ている時ならともかく、今の私服が主な今の状態は勘違いを増やしていそうだ。
ゆい「(なんだ、ただ友達になれそうな子を紹介したかっただけなんだ)よろしくね!みなみちゃんって呼んでいい?」
みなみ「ええ、もちろん」
ゆい「じゃああたしのこともゆいって呼んで」
みなみ「あ、ごめんなさい。そっちは遠慮させてください」
ゆいはお互い仲良くなるために名前で呼び合う事を提案するも片方は断られる。
これは先程挙げた通り同名の友人がいるために己の中の整理のため、それしか理由は無い。
ゆいも普段ならそれほど気にしなかっただろう。
しかし今の心が弱ったゆいは疑念を持ってしまう。
ゆい「(な、馴れ馴れし過ぎたかな?それとももしかしたら警戒されてる…?)」
わずかな掛け違い、そこから生じる疑念はどんな結果を産むのか。
それは、まだ誰もわからない。
〜〜〜
れいか「……………」
なお「れいかがまた無言で道を書きまくってるよ…」
キャンディ「キャ、キャンディはちっとも怖くないクル…」
みゆき「あかねちゃんとやよいちゃんはよく一緒においし〜なタウンに行くんだよね?なにかわかる?」
あかね「いやあれほんまなんのきっかけもなく起こるからうちらもさっぱりわからへん」
やよい「なんとかした方がいいのかな…?」
ナルシストルー「放っておけ。俺様の経験上あの手の面倒な女はこちらがなんとかしようとしても暖簾に腕押しだ」
あかね「てかなんでナルさん普通におんねん!」
みゆき「暖簾に腕押しってなぁに?」
スマイルチームもいろいろ大変そうだった。